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2024/01/29

生態遺伝学研究室の北野潤教授の「生態遺伝学入門」が丸善出版より出版されました

北野潤教授執筆の「生態遺伝学入門」が丸善出版から出版されました。新型コロナ流行下で研究・教育活動が制限されていた中で、2020年と2022年に北野教授が大学の垣根をこえて遺伝研から発信した「Zoom生態遺伝学入門」の講義内容が下敷きとなり一冊の教科書になりました。

出版に際しての北野教授のコメントです。

本書は、新型コロナ流行下の2020年と2022年に、在宅学習している学生たちに何かできないだろうかという使命感で実施したZoom生態遺伝学入門が下敷きになっています。学生などからのコメントや質問が大きく役立ちました。コロナ下で多くの活動が制限されていた中で実施したオンライン活動がこういったポジティブな形に結実して感慨深いものがあります。また、2011年に新分野創造センターの特任准教授として国立遺伝学研究所に採用され、「生態遺伝学研究室」を開設し、多くのラボメンバーや国内外の共同研究者たちと一喜一憂しながら研究を進めてきました。本書では、遺伝研の先人たちが築いてきた古典的な集団遺伝学の基礎から始まり、自分たちのラボを含む国内外の研究者が現在ゲノム技術を駆使して取り組んでいる先端研究の知見までの学問体系について、できるだけ平易に説明するべくつとめまとめました。野生生物の多様性の進化研究を目指す研究者の一助となれば幸いです。

2024/01/25

分解して、組み立て直せばわかる
–姉妹染色分体間接着の形成機構–

Coordination of cohesin and DNA replication observed with purified proteins

Yasuto Murayama, Shizuko Endo, Yumiko Kurokawa, Ayako Kurita, Sanae Iwasaki, Hiroyuki Araki

Nature 2024 Jan 24 DOI:10.1038/s41586-023-07003-6

プレスリリース資料

ヒトを含む真核生物では、複製されたゲノムDNAが均等に母細胞から娘細胞へと分配されます。ゲノムDNAが正確に次世代の細胞へと受け継がれるためには、複製された2つのDNAコピー同士が物理的に密着する“姉妹染色分体間接着”という構造が不可欠です(図上段)。この接着に異常があると、ゲノムDNAの分配が正確に起こらず、娘細胞でDNAの断片化や異数化といった異常が引き起こされます。

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 村山泰斗准教授の研究グループは、姉妹染色分体間接着に必要なタンパク質を細胞から一つ一つ精製し、試験管の中で順序良く反応させることによって、“ 姉妹染色分体間接着”が作られる過程を人工的に再現することに成功しました。その結果、コヒーシンというリング状の形をしたタンパク質複合体が、最初にDNAを抱えるように結合し、その状態でDNA複製が起こることにより2つのDNAコピーが接着する、という分子的なしくみが明らかになりました(図下段)。

本研究の結果により、生命の設計図であるDNAが、どのように次世代の細胞に正確に継承され、維持されるのかという真核生物の細胞に普遍的な機構の理解が進むとともに、接着の異常と密接な関連が示唆されているガン、遺伝疾患、不妊などの発症メカニズムの理解につながることが期待されます。

本研究は、日本学術振興会 (JSPS) 科研費(22H02550、23H04295)、科学技術振興機構 (JST) 戦略的想像研究推進事業さきがけ (PRESTO) (JPMJPR19KB)、武田科学振興財団の支援を受けて行われました。

本研究成果は、国際科学雑誌「Nature」に2024年1月25日(日本時間)に掲載されました。

2024/01/25

ウンチの化石から明らかになった縄文人の腸内環境
~古代人糞石のメタゲノム解析~

Metagenomic analyses of 7000 to 5500 years old coprolites excavated from the Torihama shell-mound site in the Japanese archipelago

Luca Nishimura, Akio Tanino, Mayumi Ajimoto, Takafumi Katsumura, Motoyuki Ogawa, Kae Koganebuchi, Daisuke Waku, Masahiko Kumagai, Ryota Sugimoto, Hirofumi Nakaoka, Hiroki Oota, Ituro Inoue

PLOS ONE (2024) 19, e0295924 DOI:10.1371/journal.pone.0295924

プレスリリース資料

数千年前に日本列島に住んでいた縄文人の腸内環境がどのような特徴を持っていたのかはわかっていませんでした。

本研究では、縄文時代のウンチの化石(糞石)4検体から取得した古代DNAを用い、日本で初めてメタゲノム解析を実施しました。メタゲノム解析で得られた大規模なDNAデータの分析により、腸内に存在したと推定される細菌やウイルスに由来するゲノム配列が見出されました。この解析結果は縄文人の腸内環境の特徴を反映するものと考えられます。
今後、縄文人の他の糞石検体について同様の解析を行い、細菌やウイルスを特定することで、縄文時代から現代にかけての腸内細菌やウイルスの進化、および縄文人腸内環境の詳細な特徴を明らかにする予定です。

本研究は、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の西村瑠佳 (総合研究大学院大学遺伝学専攻大学院生) と井ノ上逸朗特任教授、東京大学大学院理学系研究科の太田博樹教授、福井県立若狭歴史博物館の鯵本眞友美文化財調査員らの共同研究グループによって実施されました。

本研究は、JSPS科学研究費22KJ1416特別研究員奨励費、22F22075特別研究員奨励費、21H05362学術変革領域、21K19289挑戦的研究(萌芽)、20H01370基盤研究(B)、20K21405挑戦的研究(萌芽)、17H03738基盤研究(B)、AMEDの課題番号JP23ek0109650h0001、ROIS未来投資型プロジェクトによって支援されました。

本研究成果は、国際科学雑誌「PLOS ONE」に2024年1月25日(日本時間)に掲載されます。

図: 縄文人糞石から検出されたウイルスゲノム配列の分類
円グラフで真核生物、アーキア(古細菌)、細菌に感染するウイルス(ファージ)の存在比を表している。大半が細菌に感染するウイルス(ファージ)であることが見て取れる。

2024/01/24

マウス開発研究室総研大生・Bhimさんが第46回日本分子生物学会年会でMBSJ2023 Best Science Pitch Awardを受賞

マウス開発研究室のBhim Bahadur Biswaさん(総研大遺伝学コースD5/SOKENDAI特別研究員)が、2023年12月6日-8日に神戸ポートアイランドで開催された第46回日本分子生物学会年会でポスター発表をおこない、MBSJ2023 Best Science Pitch Award を受賞しました。

Bhimさん
2024/01/24

分子細胞工学研究室総研大生・Moutushiさんが2023年度生命科学リトリートでポスター賞を受賞

分子細胞工学研究室のMoutushiさん(総研大遺伝学コースD4)が、2023年11月21日-22日に山梨で開催された2023年度生命科学リトリートでポスター発表をおこない、ポスター賞を受賞しました。

Moutushiさん
2024/01/23

分子細胞工学研究室総研大生・Moutushiさんが第46回日本分子生物学会年会でMBSJ2023 Award for EMBO Poster Clinicを受賞

分子細胞工学研究室のMoutushiさん(総研大遺伝学コースD4)が、2023年12月6日-8日に神戸ポートアイランドで開催された第46回日本分子生物学会年会でポスター発表をおこない、MBSJ2023 Award for EMBO Poster Clinic を受賞しました。

Moutushiさん
2024/01/22

2023年度 PAGS・DDBJ合同 中級者情報解析講習会 申込締切:2月2日(金)

■日 時:
   1日目:2024年2月13日(火)12:10 ~ 18:00
   2日目:2024年2月14日(水)  9:20 〜 18:00

■会 場:Zoomウェビナー ※現地開催はございません。

■想定スキルレベル:情報解析中級者

■定員:200名

■参加費用:無料

■申し込み〆切:2024年2月2日(金)

申込方法・スケジュール等、詳細につきましては以下のURLをご覧ください。

2024/01/18

ゼブラフィッシュの視覚に関する脳神経回路は網膜からの入力なしに発生する

川上研究室・発生遺伝学研究室

Retina-derived signals control pace of neurogenesis in visual brain areas but not circuit assembly

Sherman, S., Arnold-Ammer, I., Schneider, M.W., Kawakami, K., and Baier, H.

Nature Communications (2023) 14, 6020 DOI:10.1038/s41467-023-40749-1

脳の発生は、先天的なメカニズムと経験に依存するメカニズムの両方によって組み立てられるが、それらの寄与を区別するのは難しい。本研究で我々は、脊椎動物の発生過程において、網膜からのあらゆる視覚刺激を欠如させた場合脳の視覚刺激受容野がどのように発生するか?の問いに答えた。ゼブラフィッシュlakritz変異体を用いて、網膜からの全ての神経接続を欠損させ、仔魚期の脳の視覚刺激受容部位のニューロンの転写プロファイリングを行ったところ、個々の遺伝子発現制御に変化がみられたが、77の異なるニューロンタイプのセットは、見かけ上正常な割合、正常な位置、および正常な分化経路に沿って発生した。明らかになったのは、これらの領域の増殖中の神経系前駆細胞の細胞周期終了が遅れ、未分化な分裂後初期前駆細胞の割合および前グリア細胞に運命転換する割合が増加していたことである。通常視覚情報処理に関与するニューロン群を対象にして光遺伝学的な刺激を施したところ、野生型と区別できない行動を引き起こした。結論として、網膜からの入力は視覚に関する脳領域の神経発生の速度に影響を与えるが、その結果生じるニューロンの発生や回路形成への影響は検出されないことを示した。

本研究は、ドイツMax Planck Institute のBaier研究室と川上研究室の共同研究として行われました。

図:(A)視覚刺激受容部位のニューロンでGFPを発現するトランスジェニックゼブラフィッシュ(HGn12C)。
(B) HGn12Cにlakritz変異を導入し(中央)、GFP陽性神経細胞の転写プロファイリング解析を行った。

2024/01/09

運動のスピードに重要な運動ニューロンの機能的サブタイプを決定する転写因子

川上研究室・発生遺伝学研究室

Determinants of motor neuron functional subtypes important for locomotor speed

Kristen P. D’Elia, Hanna Hameedy, Dena Goldblatt, Paul Frazel, Mercer Kriese, Yunlu Zhu, Kyla R. Hamling, Koichi Kawakami, Shane A. Liddelow, David Schoppik, and Jeremy S. Dasen

Cell Reports (2023) 42, 113049. DOI:10.1016/j.celrep.2023.113049

運動は筋収縮の強度と速度を正確に制御する必要があり、これは機能的に異なる運動ニューロン(MNs)のサブタイプを使用することによって達成されます。MNsは運動に不可欠であり、疾患に対しては異なる感受性を持っていますが、発生中にMNsがどのようにして機能的なサブタイプに固有の性質を獲得するかについてはほとんどわかっていません。私たちは、胚および仔魚期のゼブラフィッシュでのシングルセルRNAプロファイリングを行うことにより、MNsの機能的なサブタイプの新しい、および保存された分子的な特徴を明らかにし、初期のおよび成熟したMNsの両方で発現する遺伝子を特定しました。さらに変異体でのMNsの発生を解析することにより、MNsの機能的なサブタイプの分化に必要な分子プログラムを解析し、Prdm16とMecomという2つの進化的に保存された転写因子が、速いMNsの分化にとって不可欠な決定因子であり、prdm16またはmecomの欠損により、速いMNsは遅いMNsと似た転写プロファイルと神経支配を示しました。これらの結果は脊椎動物のMNsの分子的多様性を明らかにし、機能的なサブタイプが内在的な転写因子コードを介して形成されることを示しています。

本研究は、ニューヨーク大学David Schoppik博士らとの共同研究として行われました。

図1:ゼブラフィッシュの運動ニューロンの多様性。転写因子prdm16とmecomの発現が速い運動ニューロンを規定し、これら転写因子の欠損により速い運動ニューロンが遅い運動ニューロンの特徴を示すことを表している。

図2:トランスジェニックフィッシュを用いたprdm16とmecom発現運動ニューロンのオーバーラップ。

2024/01/09

ゲノムダイナミクス研究室 総研大生・飯田さんが第61回日本生物物理学会年会にて「若手招待講演賞」および「IUPAB student award」を受賞

ゲノムダイナミクス研究室の飯田史織さん(総研大遺伝学コースD4・学振特別研究員DC2)が、2023年11月14日-16日に名古屋で開催された第61回日本生物物理学会年会において、若手招待講演シンポジウムにて口頭発表をおこない、「若手招待講演賞」および「IUPAB student award」を受賞しました。「IUPAB student award」は、日本生物物理学会若手奨励賞/若手招待講演賞へ応募した学生の中で特に優秀な発表者のうち最大3名まで授与され、受賞者には賞状および賞金が贈られます。

(左)賞状を手にする飯田さん
(右)日本生物物理学会 高橋会長より賞状を授与される飯田さん

2024/01/04

ゲノムダイナミクス研究室 総研大生・島添さんが第61回日本生物物理学会年会で「学生発表賞」を受賞

ゲノムダイナミクス研究室の島添將誠さん(総研大遺伝学コースD2)が、2023年11月14日-16日に名古屋で開催された第61回日本生物物理学会年会で口頭発表をおこない、「学生発表賞」を受賞しました。

2024/01/04

ゲノムダイナミクス研究室総研大生・島添さんが2023年度生命科学リトリートでポスター賞を受賞

ゲノムダイナミクス研究室の島添將誠さん(総研大遺伝学コースD2)が、2023年11月21日-22日に山梨で開催された2023年度生命科学リトリートでポスター発表をおこない、ポスター賞を受賞しました。

島添將誠さん

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