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2017/04/21

単子葉植物の茎に特徴的な形態形成を制御するメカニズム

実験圃場・野々村研究室
哺乳動物遺伝研究室・城石研究室

KNOTTED1 Cofactors, BLH12 and BLH14, Regulate Internode Patterning and Vein Anastomosis in Maize

Katsutoshi Tsuda, Maria-Jazmin Abraham-Juarez, Akiteru Maeno, Zhaobin Dong, Dale Aromdee, Robert Meeley, Toshihiko Shiroishi, Ken-ichi Nonomura and Sarah Hake.

The Plant Cell. published online April 5, 2017 DOI:10.1105/tpc.16.00967

単子葉植物の茎は、維管束がリング状に並んだ双子葉植物と異なり、茎全体に散らばった散在型維管束を持ちます。また、タケにみられるように明確な節と節間の繰り返し構造からなる茎も単子葉類の特徴です。これらは理科の教科書などに出てくる良く知られた性質であり、脆弱な茎は農作物の倒伏による収量のロスをまねくため育種上重要なターゲットとされてきたのにも関わらず、その発生過程を制御する分子メカニズムはほとんど不明でした。わたしたちは、トウモロコシのBELL1-like Homeobox (BLH)転写因子がこれらの単子葉類に特徴的な茎の形態形成に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。まず、植物の地上部全体の源である茎頂分裂組織(メリステム)の維持に不可欠なKnotted1-like Homeobox (KNOX)転写因子のコファクターとしてBLH12 およびBLH14を同定しました。blh12/14 二重変異体では、腋芽や花序のメリステムが正常に維持されないのに加え、茎が短くなる矮性を示し、その内部の維管束数は大きく減少していました。タンパク質の発現パターンの解析やマイクロCTによる茎の内部構造の詳細な観察により、BLH12/14が(1)節間基部にある介在分裂組織に蓄積し分裂活性を維持することで節間細胞の持続的な供給および十分な茎の成長を可能にしていること、(2)未熟な茎の内部で維管束同士の早期融合を抑制することで、多数の独立した維管束の形成を可能にしていることが示唆されました。本研究は国立遺伝学研究所・実験圃場の津田勝利助教とカリフォルニア大学バークレー校Sarah Hake教授を中心としたグループの共同研究の成果であり、科研費若手(B)(JP16K18637) の支援を受けて行われました。また、哺乳動物遺伝研究室の前野哲輝技術員によるマイクロCT観察がこれまで観察が困難であった維管束ネットワークの可視化において大きく貢献しました。

Figure1
  • (A) 野生型トウモロコシ(左)とblh12/14二重変異体(右)。
  • (B) BLH12/14は介在分裂組織(Intercalary Meristems)の維持に不可欠な役割を果たす。blh12/14二重変異体では介在分裂組織が維持されず、茎の成長が制限されるため矮性となる。
  • (C) 野生型およびblh12/14の茎の断面写真。blh12/14では維管束数が大幅に減少する。
  • (D) マイクロCTデータから抽出した野生型トウモロコシの茎の維管束ネットワーク。互いに交わることなく独立した維管束を形成する。
  • (E) blh12/14 二重変異体の茎の維管束ネットワーク。維管束同士の融合(マジェンタ)が頻繁に見られる。
2017/04/21

見たらつい食べたくなるのは本能だった~視覚情報を摂食行動に結びつける神経回路の発見~

Press Release

Activation of the hypothalamic feeding centre upon visual prey detection

Akira Muto, Pradeep Lal, Deepak Ailani, Gembu Abe, Mari Itoh, Koichi Kawakami

Nature Communications 8, Article number: 15029 (2017) DOI:10.1038/ncomms15029

プレスリリース資料

情報・システム研究機構国立遺伝学研究所の武藤彩助教、川上浩一教授らの研究チームは、モデル生物のゼブラフィッシュをもちいて、獲物を視覚的に認識したときに摂食行動を引き起こす脳の仕組みについて明らかにしました。

食べものを見ただけで反射的に食べたくなるということは誰しもあることです。すなわち、摂食行動は、個体の栄養状態だけでなく、身近に食料が存在するかどうかによって引き起こされるのですが、その摂食行動が過去の摂食経験から学んだ結果なのか、生まれたときから備わっているものなのかはわかっていませんでした。

本研究では、モデル生物であるゼブラフィッシュの稚魚を用いた実験から、摂食経験が全くない稚魚であっても、餌により視覚が刺激されたときに、脳の「獲物検出器」と呼ぶべき神経細胞集団を介して、視床下部の摂食中枢が活動することを、カルシウムイメージングの手法を用いて示しました。

本研究により、餌を見たときに、その情報を食欲へ変換する神経回路が生まれながらに脳内に存在し、その神経回路の活動によって摂食行動が引き起こされることが明らかになりました。

本研究成果は、平成29年4月20日10時(英国時間)に英国オンライン・ジャーナル Nature Communications に掲載されました。

本研究は科学研究費(課題番号 JP25290009、 JP25650120、JP15H02370、JP16H01651)、および、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)、総合研究大学院大学学融合推進センター(CPIS)の支援を受けました。

Figure1

獲物となるゾウリムシを見つけたゼブラフィッシュ稚魚の行動と視床下部下葉の神経活動
カルシウム蛍光指示タンパク質GCaMPを視床下部下葉に発現させた稚魚を用いて、捕獲行動の様子を蛍光カメラで経時的に記録した。ゾウリムシが目の前に来たときに視床下部の神経が興奮し始める様子がわかる。

カルシウムイメージングの詳細はこちらでご覧になれます

2017/04/21

DNAは細胞のバネとしても働いている

 

「DNAの新たな役割」を提唱

Press Release

Nucleosome−nucleosome interactions via histone tails and linker DNA regulate nuclear rigidity

Yuta Shimamoto, Sachiko Tamura, Hiroshi Masumoto, and Kazuhiro Maeshima

Molecular Biology of the Cell April 20, 2017 DOI:10.1091/mbc.E16-11-0783

プレスリリース資料

情報・システム研究機構国立遺伝学研究所の島本勇太准教授と前島一博教授らのグループは、細胞の核の「強さ」が産み出される仕組みを、物理の先端技術と生化学の研究手法をもちいて明らかにしました。この成果は、米国細胞生物学会誌であるMolecular Biology of the Cell誌に重要論文であることを示す「ハイライト」として掲載されました。

私たちの体を形成する細胞の核のなかには生命の設計図であるDNAが収められています。細胞および核は押されたり引っ張られたりして、絶えず物理的な力にさらされています。この力によりDNAが切れたりすると、細胞にさまざまな問題が生じます(図1)。これまで、細胞の核はその硬い殻の構造によって内部のDNAを守っていると考えられてきました。

本研究では、直径が髪の毛の百分の一ほど( 〜1ミクロン)の細いガラス針を使ってヒト細胞の核を直接触り(図2A)、力を掛けたときの核のゆがみを観察することで、核の「強さ」を計測しました(図2B)。その結果、核は力に対抗するための「硬さ」と「弾性」を合わせ持っていることがわかりました。さらに、この弾性力は、これまで考えられてきた核の殻の構造だけでなく、収納されたDNA自体によっても生み出されていることがわかりました(図3)。これまで遺伝情報のメモリデバイスとみなされてきたDNAが、核の弾性を支えるバネの役割を演じているのです。

力が加わることによって核に生じるゆがみとそれに伴うDNAの損傷は、細胞に「死」や「がん化」など、様々な異常をもたらすと考えられています。今回の発見は、このような細胞の異常が起こるしくみの解明につながることが期待されます。

本研究は、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所・島本勇太准教授、田村佐知子テクニカルスタッフ、前島一博教授と、長崎大学・増本博司講師との共同研究です。本研究の遂行にあたり、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)革新的先端研究開発支援事業(PRIME)「メカノバイオロジー機構の解明による革新的医療機器及び医療技術の創出」研究開発領域(研究開発総括:名古屋大学大学院 曽我部正博特任教授)(課題名「細胞核のマイクロメカニクスと機械受容メカニズムの解明」、研究代表者:島本勇太)、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST) 「統合1細胞解析のための革新的技術基盤」(研究総括:東京大学大学院 菅野純夫教授)(研究課題名「超解像3次元ライブイメージングによるゲノムDNAの構造、エピゲノム状態、転写因子動態の経時的計測と操作」(JPMJCR15G2)、研究代表者:岡田 康志)、JSTテニュアトラック普及・定着事業、および科研費(15K14515、16H04746)の支援を受けました。

Figure1

図1 細胞には絶えず力がかかっており、バネ弾性がないとつぶれてしまい(右)、細胞の機能が損なわれて異常が起きてしまう。

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図2 (A) 核に2本の細いガラス針を刺し、引っ張る。(B) 核の変形とガラス針のたわみを顕微鏡で同時に観察して弾性を測定できる。

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図3 DNAが凝縮し塊を作ることによって、バネ弾性が産み出される(左)。DNAが引き延ばされたり(中央)、切れたりすると(右)、バネが弱くなる。核の中ではDNAは糸巻きであるヒストンたんぱく質に巻かれて、ヌクレオソームと呼ばれる構造をつくっている。

2017/04/19

遺伝情報分析研究室の飯塚朋代さんが総研大未来科学者賞を受賞

飯塚朋代さん

 総研大は平成26年度から、科学者として活躍している修了生の研究を顕彰することを目的とした「総研大科学者賞」と、科学者を志す在学生の研究の奨励を目的とした「総研大未来科学者賞」を新設しました。
遺伝情報分析研究室 池尾研究室所属の飯塚朋代さん(総研大遺伝学専攻D3)がそのうちの「総研大未来科学者賞」を受賞しました。


研究テーマ

比較ゲノム解析による平行進化機構の解明 ~担子菌類を例として~

2017/04/07

4月1日付で教員3名が遺伝研に着任しました

2017年4月1日付で教員3名が遺伝研に着任しました.

 教授

准教授

齋藤 都暁:無脊椎動物遺伝研究室

川本 祥子:系統情報研究室

齋藤 都暁 教授
川本 祥子 准教授

 助教

鈴木 俊哉:植物遺伝研究室・佐藤研究室


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