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2017/10/12

遺伝子回路研究室 宮崎研究員が 日本味と匂学会第51回大会の優秀発表賞を受賞

宮崎研究員

遺伝子回路研究室の宮崎隆明研究員は、9月25~27に開催された「日本味と匂学会第51回大会」に於いてポスター発表を行い、「味覚部門」優秀発表賞を受賞しました。


受賞ポスタータイトル:

「Gustatory second-order neurons that have direct synaptic connections to the feeding/reward systems  (キイロショウジョウバエにおいて味覚二次神経は摂食/報酬系に直接シナプス接続する)」

日本味と匂学会ページ

遺伝子回路研究室 鈴木研究室

2017/10/12

歯の本数は、複数のエンハンサーによるShh遺伝子の発現調節によって決まる

哺乳動物遺伝研究室・城石研究室

SHH signaling directed by two oral epithelium-specific enhancers controls tooth and oral development

Tomoko Sagai, Takanori Amano, Akiteru Maeno, Hiroshi Kiyonari, Hyejin Seo, Sung-Won Cho and Toshihiko Shiroishi

Scientific Reports, 7, Article number: 13004 (2017) DOI:10.1038/s41598-017-12532-y

動物の種によって臼歯や切歯の数や並び方はさまざまです。このような形態の多様性を生み出す遺伝学的なメカニズムは、まだ明らかになっていませんでした。国立遺伝学研究所の嵯峨井知子博士研究員、天野孝紀助教、城石俊彦教授らのグループは、複数の遺伝子発現制御配列(エンハンサー)が協調的に機能して歯の形成を制御するメカニズムを発見しました。この研究成果は、韓国のヨンセ大学Sung-Won Cho博士、理研ライフサイエンス技術基盤研究センターの清成寛ユニットリーダーらのグループとの共同研究として、英国科学誌Scientific Reportsのオンライン版(10月11日)に掲載されました。

歯や舌など口腔内における器官形成に重要な遺伝子であるShhは、その発現がどのように制御され、形態にどのように寄与しているのか、ほとんど分かっていませんでした。本研究では、歯と舌の味蕾におけるShhの発現を制御する2つのエンハンサーに着目して、これらを遺伝子工学的に破壊したマウス(ノックアウトマウス)を作製しました。どちらか1つのエンハンサー配列を破壊しても、歯や舌などの口腔器官の形成に顕著な異常は見られず、2つのエンハンサーを同時に破壊した場合に、はじめて臼歯が過剰に形成されるという異常な表現型が見られました。

このエンハンサー同時破壊マウスでは、発生中の歯においてShh遺伝子の発現量が著しく低下するものの、発現量がゼロにならないことがわかりました。この結果から、本研究で破壊した2つのエンハンサー以外にもShh発現に寄与する制御配列の存在が推定され、3つ以上のエンハンサーによって発現量が段階的に制御されていることが示唆されました。すなわち、複数のエンハンサーがShhの発現を一定量以上に保つことによって、マウスの歯の本数が正確にコントロールされていることが明らかになりました。本研究は、文部科学省の科学研究費補助金(科研費番号24247002)の助成によっておこなわれました。

Figure1

Shhエンハンサーの同時ノックアウトマウスにおける過剰臼歯の形成。野生型マウス(A)とエンハンサー同時ノックアウトマウス(B)の胎仔の下顎のX線CT画像。エンハンサーが破壊された場合には、第一臼歯の前に過剰な歯が形成される。歯の形態形成におけるShhエンハンサーの作用モデル(C)。二つのエンハンサー(MFCS4とMRCS1)は、進化的に保存された三つのモチーフを持ち(C、矢頭)、両者の機能が重複していることをよく説明する。Shhの発現量は、未同定のエンハンサーを含む複数のエンハンサーによって加算的に制御され、Shh発現が一定量のしきい値を下回ることにより過剰歯が形成されると考えられる。二つのエンハンサーは、制御する発現領域が少し異なることから、部分的に機能分化しつつも協調して歯の形態形成に寄与していると考えられる。

※本研究成果にはマイクロCTスキャンの技術が貢献しています

2017/10/06

陸上植物の祖先の特徴をもつ苔類ゼニゴケの全ゲノム構造を解明

Press Release

Insights into land plant evolution garnered from the Marchantia polymorpha genome

John L. Bowman, Takayuki Kohchi, Katsuyuki T. Yamato, et al.

Cell Volume 171, Issue 2, p287–304.e15, 5 October 2017 DOI:/10.1016/j.cell.2017.09.

プレスリリース資料

京都大学の河内孝之 教授らの研究グループは、豪・モナシュ大学(ジョン L. ボウマン教授)、近畿大学(大和勝幸教授)、神戸大学(石崎公庸准教授)、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所(中村保一教授)、基礎生物学研究所(上田貴志教授)、東北大学(経塚淳子教授)をはじめとする国内外39の大学・研究機関と共同で、ゼニゴケの全ゲノム構造を解明しました。

イネやアブラナなどの被子植物からコケ植物まで、全ての陸上植物は藻類から進化し、約5億年前に水中から陸上へと進出しました。コケ植物の一種である苔類は、陸上進出後の最も早い時期に他の種から分かれて独自に進化した植物の系統の1つであり、陸上植物の祖先の特徴を保っています。このことから、苔類を用いた研究により、全ての陸上植物に共通する重要な分子メカニズムとその進化を解明することが可能になると期待されます。ゼニゴケは苔類の代表的な種の1つであり、15世紀以来、個体発生・生理・遺伝の様式について詳細な観察が行われてきました。近年、ゲノム編集技術 をはじめとする様々な遺伝子機能解析の手法が確立され、分子メカニズムの研究が容易な植物として改めて注目されるようになりました。

今回の研究でゼニゴケの全ゲノムの塩基配列が判明し、構造が明らかになりました。その結果、ゼニゴケは他の植物種に比べて、植物の発生過程・生理機能の制御に関わる遺伝子の重複 が非常に少ないこと、ゼニゴケが陸上植物の基本的な分子メカニズムの祖先型を持つことなどがわかりました。本研究により、ゼニゴケは、植物の基本的な分子メカニズムを研究するための新たな「モデル植物」として確立され、今後の研究により新しい育種技術などへの応用につながることが期待されます。

本研究成果は10月5日、Cellオンライン版に掲載されます。

遺伝研の貢献
大量遺伝情報研究室はコミュニティアノテーションシステムとゲノムデータベースを構築し運用することにより、ゲノムのアノテーションの質の向上に寄与しました。また、先端ゲノミクス推進センターおよび比較ゲノム解析研究室は完全長 cDNA 配列解析を実施することにより、ゲノムアノテーションの基盤情報提供と質の向上に貢献しました。

研究支援
本研究は科学研究費補助金 新学術領域研究「植物発生ロジックの多元的開拓」、新学術領域研究「先進ゲノム支援」、基盤研究(B)「陸上植物における光環境依存的な成長相転換機構の普遍性と多様性」等の支援を受けました。

Figure1

※著者所属:京都大学、近畿大学、神戸大学、国立遺伝学研究所、奈良先端科学技術大学院大学、東京大学、名古屋大学、岡山大学、基礎生物学研究所、東北大学、東京農業大学、かずさDNA研究所、理化学研究所、首都大学東京、熊本大学、埼玉大学、豪・モナシュ大学、米・エネルギー省Joint Genome Institute、オーストリア・グレゴールメンデル研究所、独・オスナブルック大学、墨・INBIOTECA、英・ケンブリッジ大学、墨・CINVESTAV-IPN、英・オックスフォード大学、新・The New Zealand Institute for Plant & Food Research、スウェーデン・ウプサラ大学、オーストリア・ウィーンバイオテクノロジーセンター、仏・モンペリエ大学、スイス・チューリッヒ大学、米・ケンタッキー大学、国立台湾大学、米・コールドスプリングハーバー研究所、西・Centro Nacional de Biotecnologia-CSIC、米・アリゾナ大学、米・ミネソタ大学、独・マックスプランク研究所、独・ウルム大学

  • ゼニゴケのゲノムデータベースをこちらでご利用いただけます
2017/10/05

染色体生化学研究室 村山准教授が 遺伝学会奨励賞を受賞

村山准教授

2017年7月1日着任の新分野創造センター 染色体生化学研究室 村山泰斗准教授は、9月14日、日本遺伝学会第89回大会(岡山開催)に於いて日本遺伝学会奨励賞を受賞しました。

日本遺伝学会奨励賞は、遺伝学の特定の分野ですぐれた研究を活発に行い将来の成果が期待される会員に授与されます。


受賞名:日本遺伝学会奨励賞

受賞テーマ:「コヒーシンによる姉妹染色体接着の制御機構に関する研究」

 「Molecular regulation of sister chromatid cohesion by the cohesin ring complex」

日本遺伝学会奨励賞ページ

染色体生化学研究室 村山研究室

新分野創造センター


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