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2023/09/29

茎の節間は最後に生まれてくる-茎の発生学への挑戦-

プレスリリース

野々村研究室・植物細胞遺伝研究室
技術課 / 細胞建築研究室

Heat-shock inducible clonal analysis reveals the stepwise establishment of cell fates in the rice stem

Katsutoshi Tsuda, Akiteru Maeno, and Ken-Ichi Nonomura

Plant Cell 2023 Sep 27 DOI:10.1093/plcell/koad241

プレスリリース資料

節と節間からなる「茎」は、種子植物一般に見られる地上部の軸構造で、隣接する葉と腋芽と共に茎頂分裂組織から生み出されます。茎は育種において草丈調節の最重要ターゲットになっているにもかかわらず、茎の発生過程の理解は、葉・根・花などの他の主要器官と比べて大きく遅れていました。

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の津田勝利 助教、前野哲輝 技術専門職員、野々村賢一 准教授らは、多角的な解析手法を用いてイネの茎の構造と発生過程を詳細に調べました。さらに、遺伝子工学の手法を用いて、葉・茎・腋芽を一単位とするファイトマーを構成する細胞の各器官への運命決定がどのように起こるのかを解析しました。その結果、「発生に先立つファイトマーの確立」→「節になる細胞の出現とそれに伴う葉と茎の運命分岐」→「腋芽の運命確立」→「最後に節間への運命決定がごく少数の細胞で起こる」という、段階的なステップを経て茎の発生が進むことがわかりました。

本研究は、長らく不明であった茎の発生において鍵となるイベントとその時系列を明らかにしました。今後、本成果が茎の発生を分子レベルで理解するための基盤となり、将来的には理想的な草型設計に向けた茎形質の改良につながることが期待されます。

この研究は、新学術領域研究「植物多能性幹細胞」(18H04845・20H04891)、学術変革領域(A)「挑戦的両性花原理」(23H04754)、および科研費(22H02319・21H04729)の支援を受けておこなわれました。

本研究成果は、国際科学雑誌「Plant Cell」に2023年9月28日(日本時間)に掲載されました。

図: イネの止葉ファイトマーにおける各器官の細胞運命決定の時系列
止葉ファイトマーの運命はその発生開始の10-5日前に決定される。非伸長部(茎足や節・葉枕など)の運命決定は伸長部(葉鞘・節間)のそれよりも早期に開始する。腋芽の運命は止葉形成初期に確立する。節間になることが定まった細胞は、最も遅れて出現し始める。節間への運命決定はごく少数の細胞で始まる(右下部)。左下部黒線の左端は、運命が決定した細胞が現れ始めるタイミング、右端(黒丸)は、ある器官を構成する全ての細胞の運命が定まるタイミングを示す。

  • micro CTが本研究の基盤の一つになっています
2023/09/28

ゲノムダイナミクス研究室 総研大生・島添さんが第63回生物物理若手の会で優秀発表賞を受賞

島添將誠さん
島添將誠さん

 ゲノムダイナミクス研究室の島添將誠さん (総研大遺伝学コースD2) が、2023年9月4日〜9月7日に滋賀で開催された、第63回生物物理若手の会・夏の学校でポスター発表をおこない、優秀発表賞を受賞しました。

2023/09/28

分子細胞工学研究室 鐘巻将人教授が第23回山崎貞一賞を受賞

Harsha Somashekarさん

 分子細胞工学研究室 鐘巻将人教授は、第23回山崎貞一賞の受賞が決定しました。 
 この賞は、一般財団法人材料科学技術振興財団が科学技術水準の向上とその普及啓発に寄与することを目的として平成13年に創設されたものです。財団は論文の発表、特許の取得、方法・技術の開発等を通じて、実用化につながる優れた創造的業績をあげている人を対象に、「材料」、「半導体及びシステム・情報・エレクトロニクス」、「計測評価」、「バイオ・医科学」の4分野について、毎年、交互に2分野ごと授賞しています。 今年は、「計測評価」、「バイオ・医科学」分野を表彰する年となっていますが、鐘巻教授はこのうち「バイオ・医科学分野」を受賞することとなりました。

 贈呈式は2月に行われます。

2023/09/25

静岡大学-遺伝研合同シンポジウムのご案内(10/19開催)

遺伝研と静岡大学は、相互の学術研究や教育の進行を推進するために包括連携協定を2014年に結び、様々な取り組みを行ってきました。この度、静岡大学と遺伝研の最新の研究を紹介する静大-遺伝研合同シンポジウムを開催いたします。

日時: 2023年10月19日(木) 13:30-17:00

会場: 静岡大学/静岡キャンパス理学部B棟202室
   交通アクセス

対象: 研究者、大学院生/大学生、一般

参加申込: 必要ありません。会場に直接お越しください。

講演

 深層学習によるSAR-光学画像変換
 薗部礼(静岡大学農学部・生物資源科学科)

 NGSで加速する作物ゲノム情報の育種活用とその限界
 山下寛人(静岡大学農学部・応用生命科学科)

 ゲノム多倍数化は進化にとって有利なのか? ~複製、遺伝様式から考える~
 大林龍胆(静岡大学理学部・生物科学科)

 疾患に関わる非ワトソン・クリック型核酸構造
 大吉崇文(静岡大学理学部・化学科)

 脊椎動物の進化における遺伝子レパートリの変遷
 工樂樹洋(国立遺伝学研究所・ゲノム・進化研究系)

 DNA量変化を伴うゲノム変化のメカニズムとインパクト ~環状DNAの未知なるポテンシャルの解明を目指して~
 佐々木真理子(国立遺伝学研究所・新分野創造センター)


備考:遺伝研研究者は送迎バスが利用できるので後ほど案内されます。

2023/09/19

花の構造色の発色に関与する因子の絞り込みに成功

有田研究室・生命ネットワーク研究室

Genome and transcriptome analyses reveal genes involved in the formation of fine ridges on petal epidermal cells in Hibiscus trionum

Shizuka Koshimizu*, Sachiko Masuda, Arisa Shibata, Takayoshi Ishii, Ken Shirasu, Atsushi Hoshino, Masanori Arita 
* 責任著者

DNA Research 2023 Sep 11 DOI:10.1093/dnares/dsad019

構造色とは物質表面の微細な構造により発色する色を言い、昆虫や鳥類など様々な生物で観察されています。構造色は植物の花弁にも見られ、昆虫の誘引に寄与すると言われています(Moyroud et al., 2017)。

ギンセンカ(Hibiscus trionum)は、花弁に構造色を持つ植物の1つです。ギンセンカの花は、中心部が紫色、外側が薄い黄色を示します。紫色はアントシアニンの色素由来ですが、紫色を示す花弁の表皮細胞には微細な凹凸構造が存在するため、構造色も発色しています。写真では分かりづらいですが、角度を変えると色が変化して見えます。

本研究では、ギンセンカのゲノム解析やトランスクリプトーム解析を行い、構造色の発色に必要な微細構造の形成に関わる因子の絞り込みに成功しました。

絞り込んだ主な因子
SHINE1:植物のクチクラ形成に関わる転写因子。
CUTIN SYNTHASE 2:クチクラ成分の1つであるクチンの合成因子。
・CYP77Aファミリー遺伝子:同じくクチンの合成に関わる因子。

これらの因子は、モデル植物シロイヌナズナの花弁に存在する微細構造の形成に関わることが知られているため、ギンセンカ花弁の微細構造形成にも関与する可能性が高いと考えられます。

今後、絞り込んだ候補因子を皮切りに微細構造形成のメカニズムやその進化の解明を目指します。

本研究は、国立遺伝学研究所(越水静助教、有田正規教授)、理化学研究所(増田幸子研究員、柴田ありさテクニカルスタッフ、白須賢グループディレクター)、鳥取大学乾燥地研究センター(石井孝佳准教授)、基礎生物学研究所(星野敦助教)による共同研究グループによって実施されました。

また本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 ACT-X(JPMJAX21B6)、日本学術振興会(JSPS) 科研費(20H05909)、サッポロ生物科学振興財団、基礎生物学研究所・共同利用研究(20-341、21-223、22NIBB308、23NIBB314)の支援を受けて実施されました。

図:ギンセンカの花弁と表面構造の比較

2023/09/14

Cold Spring Harbor Perspectives in Biologyの種分化特集号に総説を発表

北野研究室・生態遺伝学研究室

Mechanisms of intrinsic postzygotic isolation: from traditional genic and chromosomal views to genomic and epigenetic perspectives.

Reifová, R., Ament-Velásquez, S. L., Bourgeois, Y., Coughlan, J., Kulmuni, J., Lipinska, A. P., Okude, G., Stevison, L., Yoshida, K., and Kitano, J.

Cold Spring Harbor Perspectives in Biology 2023 Sep 11 DOI:10.1101/cshperspect.a041607

このたび、生態遺伝学研究室の北野潤教授、吉田恒太特任助教、奥出絃太学振PDらは、Cold Spring Harbor Perspectives in Biologyの種分化の特集号に、内因性雑種異常に関する総説を発表しました。北野教授は、本総説の共責任著者をつとめるとともに、種分化特集号の遺伝メカニズムのセクション全体の取りまとめ責任者をつとめました。

内因性雑種異常は、種と種を隔てる重要な生殖隔離機構の一つです。かつては、2つの遺伝子の変異によって雑種異常が生じるとするドブジャンスキー・マラーモデルおよび接合異常や異常な配偶子を産生する染色体構造変化が主要なメカニズムとされてきました。近年、DNAの塩基配列がある程度分化すると接合異常が起こって減数分裂がストップなど別のメカニズムも明らかになりつつあります。本総説では提唱されている様々なメカニズムについて概観しました。

2023/09/14

植物細胞遺伝研究室Harsha Somashekar さんが「森島奨励賞」を受賞

Harsha Somashekarさん
Harsha Somashekarさん

総合研究大学院大学 遺伝学コースが独自に行っている「森島奨励賞」の選考が、2023年度前期の学位出願者に対して行われ、植物細胞遺伝研究室 野々村研究室に所属するHarsha Somashekarさんが受賞しました。

・Harsha Somashekar(植物細胞遺伝研究室 野々村研究室)
 「GLUCAN SYNTHASE-LIKE5 promotes anther callose deposition to maintain timely initiation and progression of meiosis in rice (Oryza sativa L.)」

 授与式が2023年9月12日に行われ、花岡所長から賞状と研究奨励金が贈られました。

森島奨励賞とは

 総研大遺伝学専攻で優秀な研究成果を発表して学位を取得した学生に、その研究内容を称えるとともに今後のさらなる発展を促す目的で贈られます。

遺伝学の先達

 森島啓子名誉教授

2023/09/12

2023年度 PAGS・DDBJ合同 初級者情報解析講習会 申込締切:10月2日(月)

 「先進ゲノム支援」(先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム)は、文部科学省科学研究費助成事業の学術変革領域研究『学術研究支援基盤形成』において、最先端のゲノム解析及び情報解析技術を提供することで我が国のゲノム科学ひいては生命科学のピーク作りとすそ野拡大を進めることを使命としています。 「先進ゲノム支援」では支援活動の一環として情報解析講習会を開催しています。今年度第1回目は、初級者向けの講習会として、遺伝研スパコンの概要を解説するとともに、Linuxの基礎から遺伝研スパコンの使い方、さらにはRNA-seq解析などの実践例題も扱う、情報解析講習会を以下の要領で開催いたします。 本講習会は、先進ゲノム支援(PAGS)、生命情報・DDBJセンター(DDBJ)が合同で開催いたします。

会場: ハイブリッド開催(Onsite & Online Hybrid) Zoom使用 現地会場:国立遺伝学研究所(DDBJ)静岡県三島市谷田1111

想定スキルレベル: 情報解析初級者(UNIX初心者)

募集人員: 現地会場: 20 名程度、オンライン参加:100名程度 ・応募者多数の場合は、先進ゲノム支援における支援依頼者及び申請者を優先します。さらに多数の場合は抽選等で参加者を決定いたします。 ・各自のPCを持参ください(Windows、Macいずれも可) ・講習内容をご自身のPCで行うには遺伝研スパコンのログインユーザアカウントが必要となります。お持ちでない方で現地参加の方、およびオンライン参加でご希望の方は当選確定後直ちに取得していただく必要があります。なお、オンライン参加の方は、遺伝研スパコンのアカウント取得は必須ではありません。 ・抽選に外れた方およびオンラインでの参加希望者にはweb配信でご参加頂けます(講習内容についてのオンライン参加者からの質問には、参加者のマシン環境依存の問題もあるため、回答困難な場合もあることをご承知おきください)。

参加費用: 無料(旅費は参加者でご負担ください。)

申込締切: 2023年10月2日(月)

※ 申込方法・講習スケジュール等、詳細につきましては以下のURLをご覧ください。 https://www.genome-sci.jp/bioinformatic#1

2023/09/08

第31回木原記念財団学術賞講演会のご案内(8/30・オンライン)

第31回木原記念財団学術賞を本研究所の宮城島進也教授(共生細胞進化研究室)が受賞しました。木原記念財団より記念講演会がオンラインで開催されます。お申し込みによりどなたでもご聴講いただけます。

日時: 2023年8月30日(水) 14:00-16:15
 14:20~15:20 第31回受賞者 国立遺伝学研究所 宮城島進也博士
 「微細藻類の研究系ー細胞内共生による生命進化の研究と社会実装ー」
 15:20~16:05 祝賀講演 国立遺伝学研究所 所長 花岡文雄博士
 「国立遺伝学研究所の歩み」

会場: オンライン開催(ZOOM)

申し込み木原記念財団ウェブサイトよりお申し込み頂けます。

参加無料・定員500名



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