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2019/10/31

卵子の前駆体形成に必須なRNA制御因子の発見

ELAVL2-directed RNA regulatory network drives the formation of quiescent primordial follicles

Yuzuru Kato, Tokuko Iwamori, Yoichirou Ninomiya, Takashi Kohda, Jyunko Miyashita, Mikiko Sato, and Yumiko Saga

EMBO reports e48251, 2019 DOI:10.15252/embr.201948251

ヒトを含む哺乳動物の卵子は原始卵胞と呼ばれる最も未成熟な卵胞の発達により産生されます。原始卵胞は出生前後の卵巣で形成され、その未成熟性を維持しつつ逐次的に卵子に成長することで、長期に渡る女性の生殖可能期間を支えています。この分子機構の破綻は早発閉経など女性不妊とも密接に関わることから、医学的にも重要な研究課題の一つです。

国立遺伝学研究所の加藤譲助教らのグループは九州大学、山梨大学との共同研究により、原始卵胞の形成に必須な2つのRNA結合タンパク質を同定しました。グループはまず、原始卵胞の形成に関わる遺伝子の探索からRNA結合タンパク質ELAVL2をコードする遺伝子Elavl2を同定しました。卵巣においてELAVL2は卵母細胞特異的に発現します。遺伝子ノックアウトによりElavl2遺伝子を破壊したところ、卵母細胞が原始卵胞形成直前に死滅することが明らかとなりました。続いて、ELAVL2に結合するメッセンジャーRNAを解析したところ、ELAVL2がP-bodyと呼ばれるRNAとタンパク質複合体から成る細胞質顆粒因子のメッセンジャーRNAと結合することを見出しました。さらに、ELAVL2の標的RNAの一つであり、P-body形成に必須のRNAヘリカーゼであるDDX6をノックアウトしたところ、P-body様の顆粒および原始卵胞の形成が著しく阻害されることを見出しました。すなわち、ELAVL2に始まる一連のRNA制御機構が原始卵胞の形成に重要であることが示されました。これらの知見は原始卵胞形成の分子機構の理解と生殖医療の発展に貢献することが期待されます。

本研究は以下の支援を受けて行われました。 日本学術振興会[(No.17K07422加藤譲)、(No.26251025相賀裕美子) 文部科学省新学術領域[(No.26114512, 16H01259, 19H05246加藤譲)、(No.26114506岩森督子)]

Figure1

図:マウスにおいて原始卵胞(Primordial follicle)は出生直後に形成される。原始卵胞の形成に先立ち卵母細胞(黄色)の細胞質にはP-body様の細胞質顆粒が形成される。RNA結合タンパク質ELAVL2とDDX6はこの顆粒の形成および原始卵胞の形成に必須である。

2019/10/28

トゲウオ特集号が米国誌より刊行

 生態遺伝学研究室の北野潤教授が中心となって編纂したトゲウオ特集号が米科学誌Evolutionary Ecology Researchより刊行されました。本特集号は、2018年7月4日から7日にかけて、生態遺伝学研究室が中心となって京都大学にてオーガナイズした国際トゲウオ会議(Stickleback2018)で発表された国内外の研究者の成果の一部を中心にまとめたものです。遺伝学、生態学、行動学、生理学など多岐にわたる分野の論文19報が収められています。
トゲウオ
 国際トゲウオ会議は、情報・システム研究機構国際ネットワーク形成、京都大学教育研究振興財団、福井県大野市、アメリカ遺伝学会の支援のもと、京都大学の吉田キャンパスにて、96名(海外から70名、国内から26名)が参加して実施されました。
2019/10/28

特別寄稿「国立遺伝学研究所の70年」が生物の科学「遺伝」2019年11月号に掲載されました

生物の科学「遺伝」最新号
 特別寄稿「国立遺伝学研究所の70年」が隔月刊誌・生物の科学「遺伝」の2019年11月号に掲載されました。
 戦中戦後の学術情報途絶を打開した「ゴールドシュミット文庫」、ゲノムという言葉を日本に定着させた木原均、遺伝研に残る木村資生の多数の資料などについて、詳しく掲載されています。
2019/10/25

前島教授が米国JCB誌の People & Ideas 欄で紹介されました

 ゲノムダイナミクス研究室 前島一博教授が米国Journal of Cell Biology誌 (Rockefeller University Press) のインタビューを受け、People & Ideas欄で詳しく紹介されました。


米国JCB誌 インタビューページ


 JCB People & Ideas欄は、個々の科学者が今までどのような道を辿ってきたかを伝えるためのインタビュー記事です。読者に科学的な側面だけでなく、科学者個人にも光を当てることを目的としており、科学者達のユニークな体験や興味・考えをハイライトしています。


ゲノムダイナミクス研究室 前島研究室


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