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2020/05/27

生態遺伝学研究室 石川助教が 令和2年度文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞

生態遺伝学研究室 石川麻乃助教が令和2年度文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞しました。

本賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者に授与されるものです。


授 賞 式:残念ながら今年は授賞式は見送られました

受 賞 名:令和2年度文部科学大臣表彰 若手科学者賞

受賞テーマ:生活史の適応進化を担う分子遺伝機構の研究


令和2年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者等の決定について (MEXT)


北野研究室・生態遺伝学研究室


[追記]
2020 5/27 後日撮影された喜びの様子

石川助教    石川助教
 石川麻乃助教(遺伝研正面玄関)     北野研の皆様と (ともに若手科学者賞の賞状を手にした石川助教と北野教授)

 2011年 4月 北野教授 若手科学者賞 受賞記事

2020/05/22

イエネコ(アメリカンショートヘア種)の高精度な全ゲノム解読に成功 〜ゲノム獣医療への応用を目指して〜

Press release

AnAms1.0: A high-quality chromosome-scale assembly of a domestic cat Felis catus of American Shorthair breed

Sachiko Isobe, Yuki Matsumoto, Claire Chung, Mika Sakamoto, Ting-Fung Chan, Hideki Hirakawa, Genki Ishihara, Hon-Ming Lam, Shinobu Nakayama, Shigemi Sasamoto, Yasuhiro Tanizawa, Akiko Watanabe, Kei Watanabe, Masaru Yagura, Yasukazu Nakamura

BioRχiv Posted May 19, 2020. DOI:10.1101/2020.05.19.103788

プレスリリース資料

※このプレスリリースは査読を経ていないプレプリント段階でのプレスリリースであり、今後、内容が修正される可能性があります(2020/06/08)

アニコム先進医療研究所株式会社、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所、公益財団法人・かずさDNA研究所および香港中文大学(香港)は共同で、アメリカンショートヘア種のイエネコの全ゲノム解析を、19本の染色体レベルでほぼ全長、高精度で行うとともに、既存のアビシニアン種のゲノム構造との比較を行いました。

アメリカンショートヘア種は国内だけでなく、世界的にも人気のある猫種の一つです。これまでイエネコのゲノム配列は、遺伝的に均一なアビシニアン種でのみ調べられており、また、未解明のゲノム構造もあることから、利用できる塩基配列情報が限られていました。

今回の研究で、アメリカンショートヘア種の全ゲノム配列が染色体レベルで明らかになったことで、アメリカンショートヘア種に特徴的な疾患や形質に関わる遺伝子の研究だけでなく、ネコの健康を守るためのゲノム獣医療に繋がる研究を一層進めることができます。

本研究成果は、BioRχivにおいて5月20日(水)にオンライン公開されました。

遺伝研の貢献
国立遺伝学研究所のグループは伴侶動物の個別化医療ならびに予防医療の確立を目的とした、最高精度の本イエネコゲノム塩基配列決定プロジェクトの全体像の提案と、決定されたゲノム塩基配列と転写配列を組み合わせた遺伝研スーパーコンピュータを活用した網羅的な遺伝子発見ならびにゲノムデータベースCats-I の構築に貢献しました。

Figure1

図: 従来型の獣医療では、どの個体にも同じ治療を行っており、治療法によって効果がでないネコも存在していました。ゲノム獣医療では、ゲノム情報に基づいて個体の体質に適した治療を行うことで、より効果的、効率的に獣医療を進めることが可能になります。

2020/05/19

色素を欠損したアルビノウニの系統作製に成功
〜ウニ研究へ分子遺伝学導入の試み〜

Press release

Establishment of homozygous knock-out sea urchins

Shunsuke Yaguchi, Junko Yaguchi, Haruka Suzuki, Sonoko Kinjo, Masato Kiyomoto, Kazuho Ikeo, Takashi Yamamoto

Current Biology Volume 30, 2020, Pages 427-429 DOI:10.1016/j.cub.2020.03.057

プレスリリース資料

筑波大学生命環境系(下田臨海実験センター)の谷口俊介准教授、谷口順子研究員、大学院生命環境科学研究科博士課程後期2年鈴木智佳(日本学術振興会特別研究員)は、国立遺伝学研究所遺伝情報分析研究室の池尾一穂准教授、金城その子研究員、お茶の水女子大学基幹研究院の清本正人教授、広島大学大学院統合生命科学研究科の山本卓教授との共同研究により、ハリサンショウウニ(Temnopleurus reevesii)を用いて、ノックアウトウニの系統作製に成功しました。

ウニは採集しやすく、卵や精子といった配偶子も取得が容易なので、発生生物学や細胞生物学、進化学の優れた研究材料として長く生命科学の現場で使われてきました。しかし、世代交代周期が1〜2年と長いため、遺伝子変異系統などを利用して正確な遺伝子機能の解析を試みる遺伝学の導入が見送られていました。本研究では、ウニ研究に導入可能な遺伝学的手法を模索する過程で、ハリサンショウウニが約半年という比較的短い期間で世代を回せることを発見し、その性質を利用してノックアウトウニを作製しました。

具体的には、ゲノム編集技術のCRISPR-Cas9システム(注2)を用い、体の色素合成に必要なポリケチド合成酵素(Polyketide Synthase; Pks1)の遺伝子領域に欠損を誘導し、色素を失ったハリサンショウウニのアルビノ個体を作製しました。さらに、それらの子孫を掛け合わせることで、ホモ接合型(注3)ノックアウトウニを作製することに成功しました。これにより、ウニを用いた研究に、分子遺伝学の手法を導入することが可能であることが証明されました。今後、より正確な遺伝子の機能解析や発現調節解析等が進むことが期待されます。

本研究の成果は、2020年5月18日(日本時間19日午前1時)付で米国の学術誌「Current Biology」で公開されました。

本研究はJSTさきがけ(多細胞)、日本学術振興会科学研究費若手研究(2019-21)と特別研究員奨励費(17-19及び19-21年度)、AMED創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム (2017)、東レ科学技術研究助成金(2018)、武田科学振興財団ライフサイエンス研究奨励(2015)によって実施されました。

遺伝研の貢献
国立遺伝学研究所のグループは、ハリサンショウウニのゲノムアセンブリおよびアノテーション(遺伝子領域予測および機能推定)を行うことで、今回ゲノム編集の対象となったポリケチド合成酵素の遺伝子領域予測およびオフターゲット領域の選定に貢献しました。

Figure1

図: F2世代の正常型(左)とPks1ホモ接合型変異体(右)

2020/05/15

【事業を終了しました】遺伝研緊急支援事業 〜マウス胚及び精子凍結保存〜

皆様

国立遺伝学研究所生物遺伝資源センターでは、コロナウイルスの感染拡大に伴いマウスの飼育が困難な事態に直面している研究者に対して、マウス胚及び精子凍結保存の緊急支援を2020年4月10日により実施していました。国内における新型コロナ感染の発生から1年が経過し、緊急支援としての役目を終えたと考えられますので、2021年1月15日をもちまして本事業を終了しました。


担当者:相賀裕美子、小出剛


遺伝研「マウス胚及び精子凍結保存事業」再開のお知らせ

新型コロナウイルスによる緊急事態対応事業として、国立遺伝学研究所生物遺伝資源センターでは、コロナウイルスの感染拡大に伴いマウスの飼育が困難な事態に直面している研究者に対してマウス胚及び精子凍結保存の緊急支援を2020年4月10日により開始しました。静岡県も緊急事態宣言が発令したため、4月17日を最後に新規の受け付けを停止しておりましたが、静岡県の緊急事態宣言が解除されたため、本日(5月15日)より受付を再開いたします。

担当者:相賀裕美子、小出剛



国立遺伝学研究所では生物遺伝資源センターのマウス事業として、マウス胚及び精子凍結保存の緊急支援を行います。今回の新型コロナウイルスの拡大防止の措置の影響で研究室でのマウス系統の維持が困難になっている研究者に対して、マウス胚及び精子凍結保存の作業を無償で支援するものです。

支援を必要とする研究者は、本緊急マウス保存事業の要項を確認ののち下記の担当部署にご連絡ください。

本緊急マウス保存事業の要項 (pdf)

支援の概要

  • 1.凍結胚の作製と保存 C57BL/6J未授精卵とIVFによりヘテロで保存
  • 2.凍結精子の作製と保存 ストローで凍結し保存

受け入れ可能の上限(凍結胚は20系統、凍結精子は100系統)に達した場合は、その後の受け入れはお断りします。1件あたり最大でも5系統とします。

緊急支援として無料。


連絡先
E-mail: nigmouse@nig.ac.jp
担当者:相賀裕美子、小出剛
国立遺伝学研究所 動物飼育実験施設
〒411-8540 静岡県三島市谷田1111
TEL: 055-981-6829(相賀)、055-981-5843(小出)

2020/05/01

「がん遺伝子」として働くのか?
組換え酵素Rad52が染色体異常を引き起こすことを発見

Press release

DNA replication machinery prevents Rad52-dependent single-strand annealing that leads to gross chromosomal rearrangements at centromeres

Onaka AT, Su J, Katahira Y, Tang C, Zafar F, Aoki K, Kagawa W, Niki H, Iwasaki H, & Nakagawa T.

Communications Biology (2020) 3:202 DOI:10.1038/s42003-020-0934-0

プレスリリース資料

大阪大学大学院理学研究科の中川拓郎准教授らの研究グループは、東京工業大学科学技術創成研究院の岩崎博史教授、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所の仁木宏典教授、明星大学理工学部の香川亘教授との共同研究により、組換え酵素Rad52が反復配列を介した染色体異常を引き起こすことを明らかにしました

これまで、ヒトなどでは相同組換え因子BRCA2やRad51が正常に機能しないと、染色体異常が起こり、細胞がガン化することが知られていた(図)。また、本研究で使用する分裂酵母※7においても、Rad51遺伝子を破壊すると反復配列を「のりしろ」にした染色体異常が高頻度に起ることが知られていた。しかし、実際に、染色体異常が起きる分子メカニズムについては解明されていませんでした。

今回、中川拓郎准教授らの研究グループは、DNAアニーリング活性が低下した変異型酵素を用いることで、組換え酵素Rad52が染色体異常を引き起こすことを明らかにしました(図)。染色体異常の誘導因子を同定したことで、今後、BRCA2などの遺伝子変異により生じる遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)※8の治療薬の開発がより一層進むことが期待されます。

本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金の基盤研究の一環として行われました。

本研究成果は、Springer Nature社のオープンアクセス・ジャーナル「Communications Biology」に4月30日(木)18時(日本時間)に公開されました。

遺伝研の貢献
国立遺伝学研究所のグループでは、変異体のゲノム解析を担当しDNAポリメラーゼαの活性部位に変異が生じて いることを特定しました。これによりRad52タンパク質が複製装置と関連して働いていることが明らかになりました。

Figure1

図: Rad51によるDNA鎖交換を介したDNAの正確な修復(左)とRad52によるDNAアニーリングを介した染色体異常(右)


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