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2020/02/27

桜の新種「クマノザクラ」を植樹しました

「クマノザクラ」は紀伊半島南部の奈良・三重・和歌山に分布する野生種です。2018年に勝木俊雄博士(森林総合研究所)により新種として発表されました。和歌山県古座川町のタイプ木から挿木増殖した苗木を遺伝研創立70周年の記念として森林総合研究所より寄贈を受け、2月25日に植樹祭が執り行われました。


   2018年に新種と判断された クマノザクラ

 2018年に新種と判断された紀伊半島南部原産の「クマノザクラ」。
  その植樹祭が2月25日に執り行われました。


   野生種の新種としては大正以来、約100年ぶりの発見でした。

 野生種の新種としては大正以来、約100年ぶりの発見でした。


   クマノザクラを囲んで

 花弁のピンクが鮮やかと言われる「クマノザクラ」。
  数年先とのことですが、花芽に出会える日を楽しみに待ちたいと思います。

2020/02/25

ダイズ根圏に殺虫活性物質オカラミンを発見
―土の中の遺産「根圏ケミカル」をメタボローム解析で明らかに―

Press release

Metabolome analysis identified okaramines in the soybean rhizosphere as a legacy of hairy vetch

Nozomu Sakurai, Hossein Mardani Korrani, Masaru Nakayasu, Kazuhiko Matsuda, Kumiko Ochiai, Masaru Kobayashi, Yusuke Tahara, Takeshi Onodera, Yuichi Aoki, Takashi Motobayashi, Masakazu Komatsuzaki, Makoto Ihara, Daisuke Shibata, Yoshiharu Fujii, Akifumi Sugiyama

Frontiers in Genetics 11, 114 (2020) DOI:10.3389/fgene.2020.00114

プレスリリース資料

根圏は植物の生育や作物生産に極めて重要な土壌領域であり、根圏の微生物叢と植物生育のかかわりについて世界的に研究が盛んです。しかし、根圏での植物と微生物の相互作用に重要な役割を担う「根圏ケミカル(代謝物)」は、土壌での安定性・含量が低いことなどにより、十分理解が進んでいません。京都大学生存圏研究所 杉山暁史 准教授、中安大 同特任助教、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 櫻井望 特任准教授(前所属:かずさDNA研究所 メタボロミクスチーム長)、東京農工大学大学院農学研究院 藤井義晴 教授、Hossein Mardani Korrani同研究員、近畿大学農学部 松田一彦 教授らの研究グループは、微量なサンプルを用いて網羅的に代謝物を解析できるメタボローム解析を行った結果、マメ科植物のヘアリーベッチ栽培後の土壌に、ペニシリウム属のカビ(Penicillium simplicissimum)をオカラ上で培養したときに得られるオカラミンという殺虫活性物質の一群を見出しました。自然界でオカラミン類が発見されたのはこれが初めてです。さらに、ヘアリーベッチとダイズを11年間輪作で育てている圃場においても、ダイズ根圏でオカラミンが殺虫活性を有する濃度で検出されました。これは、ヘアリーベッチが土壌に残したオカラミンやオカラミン生合成微生物が、「遺産」としてダイズに受け渡され、ダイズの生育に有利な環境を作っている可能性が考えられます。今後、オカラミンをダイズなどの作物生産へ活用することが期待されます。

本研究成果は、2020年2月24日に国際学術誌「Frontiers in Genetics」にオンライン掲載されました。

本研究は、JST CREST 研究領域「環境変動に対する植物の頑健性の解明と応用に向けた基盤技術の創出」の支援を受けて行われました。

国立遺伝学研究所 櫻井望特任准教授(前職:かずさDNA研究所)の貢献
代謝成分を網羅的に解析する「メタボローム解析」を実施し、数百の候補成分の中から、注目する成分としてオ カラミンを選抜しました。
メタボローム解析では、存在は確認できるもののその正体がすぐにはわからない「未知の成分」が多数検出され ます。未知成分の正体を明らかにする(同定する)ためには、その成分を高度に精製した純品を準備する必要が あり、大きなコストと時間がかかります。このため、どの候補成分に着目するかを見極めることが研究の成否を 分けるたいへん重要なポイントであり、メタボローム解析の最大の律速となっています。本研究では、分析装置 から出力されたデータを、独自に開発した高精度なデータ解析プログラムやデータベースを駆使して解析し、オ カラミンに狙いを定めました。国内に純品を所持している研究者が見つかったこともあり、分析データの取得か らわずか6か月でオカラミンの同定に成功しました。このメタボロームデータ解析技術を用いることで、今後、他 の有用な未知成分の同定や利活用が進むと期待されます。

▶本成果におけるメタボローム解析の基盤となった解析ツールやデータベースは下記のサイトから入手できます。
KOMICS(The Kazusa Metabolomics Portal)
食品メタボロームレポジトリ(Food Metabolome Repository)

Figure1

図: ヘアリーベッチが土壌に残したオカラミンやオカラミン生合成微生物が、 「遺産」としてダイズに受け渡され、ダイズの生育に有利な環境を作っている可能性が示唆された

2020/02/25

難病ALS、光操作で再現
〜発病メカニズムの解明と創薬に期待〜

Press release

Optogenetic modulation of TDP-43 oligomerization accelerates ALS-related pathologies in the spinal motor neurons

Kazuhide Asakawa, Hiroshi Handa, Koichi Kawakami

Nature Communications 11, 1004 (2020) DOI:10.1038/s41467-020-14815-x

プレスリリース資料

意識や五感が保たれたまま、体を全く動かすことができなくなる難病、筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう、Amyotrophic lateral sclerosis、以下、ALS(エーエルエス)と略す)は、根本的な治療法がない最も過酷な病の一つといわれています。ALSで障害をうける神経細胞「運動ニューロン」が、いつ、どのように機能を失い始めるのかについては明らかになっておらず、そのことが治療法の開発を妨げています。

 この問題を解決するために、本研究グループは、光を使ってTDP-43(ティーディーピー 43)というタンパク質を操作する技術を開発し、ALSにみられる様々な運動ニューロンの異常を光照射によって再現することに世界で初めて成功しました。 

 浅川和秀准教授らは、ALSの運動ニューロンで塊を形成することが知られているTDP-43に、青い光を吸収すると塊を形成するように改変を加え、塊の形成を光照射によって自在に調節する技術を開発しました。光の照射を開始した後、TDP-43の塊が形成される前に照射を停止しても、運動ニューロンに異常が現れることが明らかになり、これまで予想されていたよりも早い段階で、TDP-43が運動ニューロンに障害を及ぼしていることがわかりました。塊の形成に先立つTDP-43の集合を防ぐことが、有効なALSの治療法になると期待されます。

 本研究の成果は、英国科学雑誌「Nature Communications」に2020年2月21日19時(日本時間)に掲載されます。本研究は、東京医科大学ケミカルバイオロジー講座の浅川和秀准教授、半田宏特任教授、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の川上浩一教授による共同研究グループによって実施されました。

 また、本研究は、せりか基金、「生命の彩」ALS研究助成基金、加藤記念難病研究助成基金、第一三共生命科学研究振興財団、武田科学振興財団、文部科学省の科学研究費補助金(JP16K07045、JP19K06933、JP15H02370)、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP[AMED])の支援を受けて実施されました。

動画: 青い光の照射によるTDP-43の操作で、体を動かしにくくなったゼブラフィッシュ稚魚(右)


Figure1

図: TDP-43の細胞質への移行によって、運動ニューロンは障害を受け、筋肉との結合が弱まる。

2020/02/17

【開催中止】ミニシンポジウム「遺伝研70年の歴史を振り返る」を午前開催

2020年3月9日に開催予定のミニシンポジウム「遺伝研70年の歴史を振り返る」は、新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から開催の中止を決定いたしました。
楽しみにされていた皆様におかれましては大変申し訳ありませんが、何卒ご理解をいただきたく宜しくお願い申し上げます。

 

国立遺伝学研究所には科学史的にも貴重な資料があり、これら貴重な資料の保存に向けて国立科学博物館研究員らが活動されてきました。この活動について、リサーチ・アドミニストレーター室では支援を行っています。今回、本活動の報告をミニシンポジウムの形式で実施します。


ミニシンポジウム「遺伝研70年の歴史を振り返る」

日時: 2020年 3月 9日(月)10:30-12:00

会場: 国立遺伝学研究所 講堂

言語: 日本語

プログラム:

 10:30-10:40 趣旨説明
 10:40-10:50 遺伝研に残る歴史的資料 有賀暢迪(国立科学博物館)
 10:50-11:10 木原均と遺伝研の草創期 飯田香穂里(総合研究大学院大学)
 11:10-11:50 [特別講演]集団遺伝学からみた遺伝学と遺伝研の変遷 高畑尚之(総合研究大学院大学元学長)
 11:50-12:00 全体質疑応答

司会: 来栖光彦(国立遺伝学研究所)


主催: 国立科学博物館総合研究「我が国における科学技術史資料の保存体制構築に向けた基礎研究」総括班

後援: 国立遺伝学研究所

2020/02/07

イチジク近縁種イヌビワのゲノム配列を解読しました
〜病害に強いイチジクへの品種改良に期待〜

Press release

The Ficus erecta genome towards Ceratocystis canker resistance breeding in common fig (F. carica).

Shirasawa K, Yakushiji H, Nishimura R, Morita T, Jikumaru S, Ikegami H, Toyoda A, Hirakawa H and Isobe S.

The Plant Journal first published 24 January, 2020 DOI:10.1111/tpj.14703

プレスリリース資料

かずさDNA研究所、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)果樹茶業研究部門、国立遺伝学研究所、広島県立総合技術研究所、福岡県農林業総合試験場は共同で、イチジク (Ficus carica)の近縁野生種であるイヌビワ(F. erecta)のゲノムを解読しました。

イヌビワは、イチジクの生産に大きな被害を及ぼす「株枯(かぶがれ)病」に強い抵抗性(真性抵抗性)をもつことから、この抵抗性遺伝子のイチジク栽培種への導入が試みられています。しかし、耐病性の判定に時間と労力がかかるので、ゲノム情報を利用した育種法が求められていました。

近年実用化されたPacBioロングリード技術などの新しい技術を用いて、比較的長いDNA配列を連続して読むことにより、効率よくゲノムを解読しました。イチジクとの交雑子孫の比較解析により、株枯病に強い抵抗性を示す候補遺伝子を同定し、遺伝子型の判定に用いることができるDNAマーカーを開発しました。

この研究は、文部科学省科学研究費助成事業(科研費)の基盤研究(B)(課題番号16H04878)および先進ゲノム支援(課題番号16H06279)の助成によって行われました。

本研究成果は、国際科学雑誌The Plant Journalに1月24日にオンライン公開されました。

遺伝研の貢献
2017年度の先進ゲノム支援の支援課題として、Pacific Biosciences社のロングリードを出力するSequelシステムを用いて、ゲノム解読における基盤情報を提供しました。

Figure1

図: イヌビワ(写真提供:農研機構)

2020/02/06

細胞制御研究室の杉山友希博士が井上研究奨励賞を受賞

杉山友希さん

 細胞制御研究室の杉山友希博士(日本学術振興会特別研究員PD)が第36回(2019年度)井上研究奨励賞を受賞しました。

 この賞は 理学、医学、薬学、工学、農学等の分野で過去3年の間に博士の学位を取得した37歳未満の、優れた博士論文を提出した若手研究者に対して贈られるものです。

受賞日:令和2年 2月 4日

演題:細胞骨格付随タンパク質による

    二次細胞壁パターン制御の研究

第36回(2019年度)井上研究奨励賞

細胞制御研究室


杉山博士より受賞のコメントが届いておりますのでご紹介します。

この度は井上研究奨励賞を受賞し、大変光栄に思っております。
このような賞をいただけたのは特別共同利用研究員制度等による支援の下、遺伝研の恵まれた環境で研究を続けることができたおかげです。
本研究の遂行にあたりお世話になったすべての方々に厚く御礼申し上げます。

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