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2016/07/11

「夏休み子ども遺伝学講座」を開催

やさしいアリ教室~アリの不思議・アリの知恵~と題して「夏休み子ども遺伝学講座」を開催いたします。身近なアリについて学び、一緒に観察してみましょう。

対象:

三島市内の小学校3年生~6年生 40名
申込者多数の場合は抽選となります。

日時:

平成28年7月27日(水)午前9時30分~午前11時40分(予定)
※広報みしま7月1日号に「7月26日開催」とありますが、正しくは7月27日(水)です。深くお詫び申し上げ訂正させていただきます。

場所:

国立遺伝学研究所(三島市谷田1111)

申込:

三島市政策企画課まで電話か電子メールでお申込みください。
申込時に ①氏名 ②学年 ③住所 ④電話番号 をお伝えください。
申込み締切は平成28年7月20日(水)です。

TEL:055-983-2616
E-mail: seisaku@city.mishima.shizuoka.jp
2016/07/11

染色体の凝縮を司るタンパク質因子のDNA結合特性

原核生物遺伝研究室・仁木研究室

In vitro topological loading of bacterial condensin MukB on DNA, preferentially single-stranded DNA rather than double-stranded DNA

Hironori Niki, and Koichi Yano

Scientific Reports 6, Article number: 29469 (2016) DOI:10.1038/srep29469

DNAは細胞の中にぎゅっと凝縮して格納されている。DNAの凝縮には様々な因子が関係している。その中の一つであるコンデンシン複合体は、バクテリアからヒトまで共通している根幹の凝縮因子である。コンデンシン複合体は染色体DNAの特定の位置に形成され、特にバクテリアでは複製の開始点付近に形成される。しかし、それがどのようにして決まるのかは不明である。また、コンデンシン複合体は環状構造をしており、その複合体の輪の中にDNAを閉じ込め結合する、いわゆるトポロジカル結合が可能な構造である。しかし、実際にトポロジカル結合するのかどうかはまだよくわかっていない。これらの問題を解くために、精製したバクテリアのコンデンシンタンパク質でトポロジカル結合の検出を試みたのが本研究である。

大腸菌のコンデンシンタンパク質であるMukBと、複合体の構成因子であるMukE、MukFをそれぞれ精製し、様々なDNAに対しての結合性を測定した。通常のDNA結合能は高塩濃度で阻害されるのであるが、MukBは高塩濃度でも安定なDNA結合性を見せた。この結合能は、基質となるDNAのトポロジーによって異なり直線状DNAでは観察されず環状DNAでのみ検出された。また、二本鎖環状DNAよりも一本鎖環状DNAでより顕著であった。したがって、MukBは一本鎖DNAに対してトポロジカル結合をするものと考えられる。

通常、細胞の内部では染色体DNAは二本鎖状態をとっており、限られた領域でしか一本鎖状態を取らない。そのような領域は転写の活性の高い部分であり、バクテリアではリボソームRNA(rRNA)遺伝子である。実際に、rRNA遺伝子は複製の開始点付近に複数の遺伝子が散在し、rRNA遺伝子のコピー数の低下は染色体の形に悪影響を及ぼすことが知られている。

このようなことから、私たちは、細胞内ではコンデンシンMukBは一本鎖DNAを取りやすいrRNA遺伝子にトポロジカル結合しやすのではないかと考えている。トポロジカル結合した後、MukE、MukFといった他の因子がMukBのこのトポロジカル結合を安定化させ、さらにこのMukBEF複合体同士が集まる。その結果、複製の開始点付近が束ねられるのであろう。今後は細胞内でのトポロジカル結合を調べていくことで、このモデルを検証しコンデンシンの作用の実態をさらに明らかにしていく。

Figure1

MukBタンパク質は二量体を作り、熱運動により開いたり閉じたりする。そして、染色体のDNAを挟みこみトポロジカルな結合をする。挟み込んだDNAが一本鎖DNAの時は、トポロジカルな結合が安定化する。さらにMukE, MukFが加わりさらに安定な一本鎖DNAとMukBEFタンパク質複合体が形成される。このDNAとMukBEFタンパク質複合体同士が次々と集まることにより、染色体DNAが折りたたまれるようになる。

2016/07/07

短時間でがん組織切片の染色体テロメア長を測定できる方法を開発

Press Release

Telomere Visualization in Tissue Sections using Pyrrole–Imidazole Polyamide Probes

Asuka Sasaki, Satoru Ide, Yusuke Kawamoto, Toshikazu Bando, Yukinori Murata, Mari Shimura, Kazuhiko Yamada, Akiyoshi Hirata, Kiyoshi Nokihara, Tatsumi Hirata, Hiroshi Sugiyama, Kazuhiro Maeshima

Scientific Reports 6: 29261 (2016) DOI:10.1038/srep29261

プレスリリース資料

国立遺伝学研究所の総研大大学院生 佐々木飛鳥、井手聖助教、前島一博教授、平田たつみ教授、京都大学の杉山弘教授らのグループ、(株)ハイペップ研究所 軒原清史代表らのグループ、国立国際医療センターの志村まり室長らのグループは、細胞老化・がん化に重要な役割を担う染色体テロメア配列を組織切片の細胞において簡便かつ迅速に標識する方法を開発しました。

染色体の末端はテロメアと呼ばれる繰り返し配列により保護されています。ある種のがん細胞では、テロメアの長さが短くなっていることから、テロメア長はがん診断の指標になると考えられています。これまでテロメアの検出にはFISH法が利用されてきましたが、実験に1日以上を要する上に、細胞内の構造を壊すおそれのある熱・有機溶媒処理も必要とすることが課題でした。研究グループらは、これらの問題点を克服する新化合物「ピロール・イミダゾール(PI)ポリアミド化合物」(図1)を開発してきました。本研究では、マウスやヒト凍結組織切片にこの標識法を応用することに成功しました。さらにPIポリアミドは抗体染色と併用できるため、がん組織切片においてがん細胞に焦点を当ててテロメア長を測定することに成功しました(図2)。

本研究の成果により、PIポリアミド化合物は、簡便かつ高精度な1細胞レベルでのテロメア長の測定法として、基礎研究のみならず臨床分野において広く用いられることが期待されます。また本技術は、細胞内の空間情報を保持したままテロメアを標識できるので、超解像顕微鏡技術と組み合わせることにより、細胞が持つテロメア構造の本来の姿を捉えることが期待されます。

本研究の遂行にあたり、JST・CREST 「統合1細胞解析のための革新的技術基盤」および遺伝研共同利用研究費(2015-B)の支援を受けました。

Figure1

図1. 二本鎖DNAに結合するPIポリアミド。

Figure1

図2. ヒト食道がん・非がん組織切片におけるテロメア標識。(A) がん・非がん組織切片を染色した画像。緑がテロメア(PIポリアミドで染色)、赤色が腫瘍マーカー陽性(抗Ki-67抗体染色)、青色がDNA(DAPI染色)を示す。 (B) がん・非がん組織切片におけるテロメアの蛍光強度を定量した結果。がん組織切片におけるテロメアの蛍光強度は、非がん組織切片よりも小さく、テロメアが短くなっていることが示唆される。

2016/07/01

7月1日付で助教が着任

2016年7月1日付けで遺伝研に助教が着任しました.

髙尾大輔:中心体生物学研究部門・北川研究室


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