Archive

2023/11/29

メダカにおけるセントロメア関連反復配列の再配置

北野研究室・生態遺伝学研究室

比較ゲノム解析研究室

Repositioning of centromere-associated repeats during karyotype evolution in Oryzias fishes.

Ansai, S., Toyoda, A., Yoshida, K., and Kitano, J.

Molecular Ecology (2023) Nov 28. DOI:10.1111/mec.17222

核型、すなわち染色体の数と形の変化は、種分化を含む多くの進化過程で重要な役割を果たしています。染色体数の変化は、これまでは主にセントロメア部位での融合や分離によるものであると考えられ、染色体の腕数の変化は主にセントロメアを含む逆位によるものと考えられていました。京都大学の安齋賢博士と生態遺伝学研究室の北野潤教授は、同研究室の吉田恒太特任助教と比較ゲノム解析研究室の豊田敦特任教授とともに、比較ゲノムのアプローチを用いることで、メダカ科魚類の核型進化の過程では、セントロメアの再配置が重要な役割を果たしていることを示唆する結果を得て、Molecular Ecology誌に報告しました。

メダカ科は、大きく3つの系統に分かれますが、それぞれが核型において異なる特徴をもっています。日本に生息するOryzias latipesは他のグループよりも染色体の腕数が多く、多くの染色体がメタセントリック(セントロメアが真ん中あたりにある染色体)です。一方、海外に生息するO. javanicusの染色体数はO. latipesの染色体数とほぼ同じですが、腕数が少なく、多くの染色体がacrocentric(セントロメアが染色体の端の方にある染色体)です。また、O.celebensisの染色体数は他の2つの系統よりも少なく、染色体融合によって形成されたと思われる大きなメタセントリック染色体が複数あるという特徴を示します。これら3種のゲノムを比較した結果、セントロメア関連反復配列の再配置は、単純な逆位などよりも予想外に多そうだということがわかりました。この結果は、セントロメアの再配置が核型の進化において、これまで考えられていたよりも重要な役割を果たしている可能性を示唆するものであります。

本成果は、科研費やJST CRESTの支援を得て実施されました。

図:染色体の形(腕数)の変化は、セントロメアを含む逆位やセントロメアの再配置で生じる。染色体の数の変化は、セントロメアでの融合(ロバートソニアン融合)や直列融合で生じる。

2023/11/29

魚類の性決定システムの多様性と収斂性

北野研究室・生態遺伝学研究室

Diversity and Convergence of Sex Determination Mechanisms in Teleost Fish

Kitano, J., Ansai, S., Takehana, Y., and Yamamoto, Y.

Annual Review of Animal Biosciences (2024) 12. DOI:10.1146/annurev-animal-021122-113935

このたび、生態遺伝学研究室の北野潤教授は、京都大学の安齋賢博士、長浜バイオ大の竹花佑介博士、東京海洋大の山本洋嗣博士とともに、硬骨魚類の性決定システムについての総説を執筆し、Annual Review of Animal Biosciencesに発表しました。

人類を含む哺乳類では、性は基本的にXYシステムで決定されますが(オス化遺伝子のSRYが座乗するY染色体を持つとオスになる)、動物全体を見渡すと、性決定システムがこのように広い種間で保存されているのはむしろ例外的です。例えば魚類では、性決定システムはXYだけではなく、ZWで決まる種もあれば(W染色体にメス化遺伝子が座乗しており、Wを持つとメスになる)、環境で性が決まる種もあります。XYで性が決まる種でも、さまざまな遺伝子がオス化の機能を果たします。

本総説では、まず、これまでに解明されてきた硬骨魚類の性決定システムを概観しました。その結果、TGF-βシグナル伝達経路の遺伝子が、マスター性決定遺伝子として頻繁に用いられていること、マスター性決定遺伝子の出現はおもに(1)遺伝子重複と転位、あるいは(2)対立遺伝子の突然変異の2つのメカニズムで生じることがわかりました。また、多くの魚種において、温度が性決定に影響し、ほとんどの場合で、温度が高いほどオスへの分化が誘導されることを報告しました。最後に、このような性決定メカニズムの転換を誘導する要因に関する理論モデルを概観し、今後の研究に残されたクエスチョンについて考察しました。

本成果は、科研費やJST CRESTの支援を得て実施されました。

2023/11/27

環境温度は微生物群集をどのように規定するか
〜環境中の微生物が持つ遺伝情報と環境温度を繋ぐ数理法則を発見〜

Metagenomic Thermometer

Masaomi Kurokawa, Koichi Higashi, Keisuke Yoshida, Tomohiko Sato, Shigenori Maruyama, Hiroshi Mori, and Ken Kurokawa

DNA Research (2023) 30, dsad024 DOI:10.1093/dnares/dsad024

プレスリリース資料

自然環境において微生物は多様な種の組み合わせによる「微生物群集」として存在しています。微生物群集の構成は環境に依存しており、特に「環境温度」はその構成に重要な影響を与えます。しかしながら、環境温度と微生物群集の繋がりについて、具体的な法則や関係性はほとんど解明されていませんでした。

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 ゲノム進化研究室の黒川真臣特任研究員および黒川顕教授らのグループは、環境中に存在する微生物全体が持つ遺伝情報と環境温度の間に特有の数理法則が成り立つことを発見ました。そして、この法則を利用してメタゲノム配列より取得した遺伝情報から環境温度を予測する技術「Metagenomic Thermometer」を開発しました。

Metagenomic Thermometerを用いて、人工的に構築した多様な温度の温泉河川において、微生物群集のメタゲノム解析から環境温度を高精度に予測することに成功しました。さらに、公共データを利用して、温泉河川以外の環境、特にヒト腸内環境にもMetagenomic Thermometerが適用可能であることを示しました。

本成果は、微生物群集の構成についての理解を深めるとともに、ヒト深部体温の推定、体温に応じて定着しやすい生菌製剤やプロバイオティクスの設計への応用、さらには気候変動に伴う微生物群集の変化の予測などへの応用が期待できます。

本研究は、文部科学省科研費「新学術領域研究『研究領域提案型』」冥王代生命学の創成(26106001)、文部科学省科研費「新学術領域研究『学術研究支援基盤形成』」先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム(PAGS)(22H04925)、日本科学技術振興機構 バイオサイエンスデータベースセンター データベース統合化推進プログラムの支援を受けて行われました。

本研究成果は、国際科学雑誌「DNA Research」に2023年11月7日(日本時間)に掲載されました。

図: Metagenomic Thermometerの概念図
Metagenomic ThermometerはメタゲノムDNA配列を入力として受け取る。遺伝子予測ツールを用いて遺伝子領域を予測・翻訳することで、環境サンプル中の全DNAにコードされたアミノ酸を取得する。特定のアミノ酸の出現頻度を予測式に当てはめることで環境温度を予測できる。

2023/11/24

「遺伝学講座みしま」を開催 (ポスター発表一覧を公開)

日時: 1月13日(土)13:10~16:00

場所: 三島市民文化会館小ホール

内容:

講演1:木村 暁(国立遺伝学研究所 細胞建築研究室 教授)
   「見事な建築物である私達の細胞-AIを使って加速する細胞の理解-」
講演2:久保 郁(理化学研究所 脳神経科学研究センターチームリーダー、国立遺伝学研究所外来研究員)
   「透明な魚で解き明かす脳のふしぎ」

講演1と講演2の間14時15分~15時10分 ホワイエにて:
 一般公募者による自然科学・環境に関する調査・研究成果についてのポスター発表 を実施。

定員:350名(先着順)

申込先:

三島市教育委員会生涯学習課
直接生涯学習課または電子申請にて、1/5(金)までにお申込みください。
①氏名(フリガナ)②電話番号③メールアドレス
〒411-0035 三島市大宮町1-8-38三島市生涯学習センター4階
  電話:055-983-0881

三島市HP

電子申請:https://logoform.jp/form/pqff/395541

「遺伝学講座・みしま」ポスター発表一覧(PDF)

 

ポスター発表者募集(募集を締め切りました)

日時: 1月13日(土)14:15~15:10

場所: 三島市民文化会館小ホール ホワイエ

内容:

同日開催「遺伝学講座・みしま」講演の合間に、自然科学・環境に関する調査・研究成果についてポスター発表を行う。

応募資格:

三島市及び近隣の高校生・大学生・一般
*発表の採否につきましては、本会の趣旨に照らし審査の上、後日ご連絡いたします。

参加費: 無料

申込み・問い合わせ先:

12/13までに電子申請(電子申請できない方は以下までご連絡下さい)

公益財団法人遺伝学普及会
055-981-6857

電子申請:htps://forms.gle/Rg2afsR8KJgP5pYr9

三島市HP

2023/11/15

必須遺伝子が染色体に無くても生物は絶滅しない
――数億年前からプラスミドだけでリボソームRNA遺伝子を 維持するバクテリアの発見――

プレスリリース

Bacteria can maintain rRNA operons solely on plasmids for hundreds of millions of years.

Mizue Anda, Shun Yamanouchi, Salvatore Cosentino, Mitsuo Sakamoto, Moriya Ohkuma, Masako Takashima, Atsushi Toyoda, and Wataru Iwasaki

Nature Communications (2023) 14, 7232 DOI:10.1038/s41467-023-42681-w

プレスリリース資料

東京大学の按田瑞恵特任助教、山内駿大学院生、コセンティーノ サルヴァトーレ特任助教、岩崎渉教授と、理化学研究所の坂本光央専任研究員、大熊盛也室長、高島昌子ユニットリーダー(研究当時)、国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授の共同研究チームは、多様な環境に生息する2門2科4属5種のバクテリア(細菌)が、生物の基本構成要素の一つであるタンパク質の合成に必須なリボソームRNA(rRNA)遺伝子をプラスミドだけに持つことを発見しました。また、今回解析したバクテリアのうちPersicobacteraceae科に属するバクテリアは、染色体からrRNA遺伝子を失った状態でも数億年にわたって絶滅しなかったことを明らかにしました。

本研究の発見は、「生存に必須な遺伝子を長期間にわたって安定して子孫に伝えるためには染色体上で受け渡す必要がある」とする生物学における定説を否定するものです。今後、物質生産といった工業応用や薬剤耐性菌の出現などで重要な役割を果たすプラスミドの新たな基本的性質の解明や、プラスミドを安定的に維持する技術開発への貢献が期待されます。

本研究は、科研費「特別研究員奨励費(課題番号:18J00444)」、「新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム(課題番号:16H06279(PAGS))」、「新学術領域研究(研究領域提案型)(課題番号:19H05688)」、「学術変革領域研究(学術研究支援基盤形成)先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム(課題番号:22H04925(PAGS))」、科学技術振興機構(JST)「戦略的創造研究推進事業CREST(課題番号:JPMJCR19S2)」の支援により実施されました。

本研究成果は、2023年11月14日に英国科学誌「Nature Communications」に掲載されました。

図: 染色体からrRNA遺伝子が失われる前後でバクテリアに起こる変化のモデル図

2023/11/14

植物の「水の通り道」の形を制御するタンパク質を発見
~細胞壁形成のしくみ解明へ大きな前進~

Confined-microtubule assembly shapes three-dimensional cell wall structures in xylem

Takema Sasaki, Kei Saito, Daisuke Inoue, Henrik Serk, Yuki Sugiyama, Edouard Pesquet, Yuta Shimamoto, Yoshihisa Oda

Nature Communications (2023) 14, 6987 DOI:10.1038/s41467-023-42487-w

プレスリリース資料

国立大学法人 東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科の佐々木 武馬 助教、杉山 友希 特任助教、小田 祥久 教授の研究グループは、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 遺伝メカニズム研究系の斎藤 慧 助教、島本 勇太 准教授、国立大学法人 九州大学 大学院芸術工学研究院の井上 大介 助教、ストックホルム大学(スウェーデン王国)のヘンリック サーク 博士、エドワール ペスケ 教授との共同研究により陸上植物の水の通り道を形づくるタンパク質を発見しました。本研究グループは、道管における細胞壁の微小な孔(壁孔)に存在するMAP70-5タンパク質に着目し、このタンパク質が微小管と呼ばれる細胞内の繊維を曲がりやすくすることにより、道管における壁孔の立体構造を決定していることを明らかにしました。

植物の細胞を覆う細胞壁は、細胞の形の維持に加え、水分・養分などの輸送も担います。壁孔を含め、植物の細胞壁の立体構造を決定する仕組みはほとんど明らかになっていません。本研究は植物の細胞壁の立体構造が、微小管の物理的な性質を制御することにより決定されることを世界ではじめて明らかにしました。これは植物の細胞壁の形成機構を理解する上で数少ない重要な知見です。また、本研究から得られた知見を利用して植物の細胞壁構造を改変することにより、将来的な植物細胞の形態や機能、さらには植物個体の性質や形態を人為的に制御する技術、利用しやすい木質バイオマスの生産技術にも繋がる可能性が考えられます。

本研究は、文部科学省の科学研究費補助金『19H05670』、『19H05677』、日本学術振興会の科学研究費補助金『21H02514』、『20K21435』、『23K18126』、『JP20K15141』、『JP21H05886』、『21K15128』、『22H02590』、公益財団法人三菱財団自然科学研究助成の支援のもとで行われたものです。

本研究成果は2023年11月13日午後7時(日本時間)付イギリス科学誌「Nature Communications」誌でオンライン公開されました。

遺伝研の貢献
物理細胞生物学研究室が持つ高解像の蛍光イメージング技術を使って微小管の曲げ剛性や束化能を細胞外で解析できる系を構築し、MAP70の分子特性を決定しました。

図1: 壁孔周辺の微小管とMAP70-5の局在

図2: MAP70-5の壁孔形成の制御と微小管に対する効果

2023/11/13

細胞内で光合成を飼いならす
―何度やっても同じ危機対応―

宮城島研究室・共生細胞進化研究室

Taming the perils of photosynthesis by eukaryotes: constraints on endosymbiotic evolution in aquatic ecosystems

Shin-ya Miyagishima

Communications Biology (2023) 6, 1150 DOI:10.1038/s42003-023-05544-0

真核生物による葉緑体つまり光合成能の獲得は、真核細胞内へのシアノバクテリア(光合成バクテリア)の一次共生(紅藻、緑藻、植物の共通祖先)の他、それによって生じた真核藻類の二次またはさらに高次の共生により(珪藻、渦鞭毛藻、ミドリムシなどのそれぞれの祖先)様々な系統で独立に何度も起きたことが知られています。また、細胞内に取り込んだ単細胞藻類の葉緑体を消化せずに数週間から数ヶ月間細胞内に保持し利用する生物(盗葉緑体性生物)、藻類を長期にわたって任意共生させる単細胞生物が多くの系統で発見されています。これらは環境によっては光合成性バイオマスの大部分を占めることもあり、二次または高次の共生による葉緑体伝搬の中間段階と見なされています。

光合成は有害な活性酸素種(ROS)を生じ、その量は強光下で増加し、場合によっては細胞死に至ります。また光合成装置の反応中心は光強度依存的に障害を受けるため、絶えず障害を受けた部品の交換が行われています。強光下では、ROSがこの修復を遅らせ、光合成活性が低下するだけでなく、修復が遅れるとさらに高濃度のROSが発生し、負の連鎖が起こります。これらの問題に対処するために、藻類や植物は様々な危機対応策を進化させています。これには、(1)細胞が移動し、細胞内に光吸収物質を産生し、または葉緑体の位置や向きを変えて、葉緑体に当たる光を減少させる、(2)高濃度のROSを発生する重度に損傷を受けた葉緑体を消化して取り除く、(3)核ゲノムと葉緑体ゲノムが協調し、光合成装置の構成を光強度に対して最適化する(4)ROSと光を感知して、これらの機構を調節するなどが含まれます。これらの機構は、一次共生由来の葉緑体を有する生物だけでなく、それぞれ独立に生じた二次共生由来葉緑体を有する生物においても独自に進化しています。

これまでに研究室で進めてきた研究内容と他の研究グループによる様々な系統の生物の研究結果をまとめ、比較しました。その結果、多種多様な系統でそれぞれ独立に何度も生じた盗葉緑体や光共生を行う生物も、(1)、(2)、(4)の機構を進化させており、一部の生物は(3)の機構も発達させていることが明らかになりました。さらに、藻食性の単細胞生物も(2)と(4)に対応する機構を独立に進化させていることが示されました。

この結果から、細胞内で光合成を行う真核生物は何度も独立に発生しましたが、光合成の毒性に対処するために、どの系統の生物もほぼ同じ機構を進化させたことが明らかになりました。さらに、光合成生物を細胞内に共生させ、葉緑体として利用するための機構は、藻類を捕食する段階から一時的な藻類細胞または葉緑体の保持の段階を経て漸進的に進化したことも示唆されます。

本研究は、日本学術振興会 科研費(20H00477)、科学技術振興機構 未来社会創造事業(22682397)の支援を受けました。

図:シアノバクテリア共生体起源の1次葉緑体、真核藻類の共生体起源の二次葉緑体を持つ単細胞生物と藻食、光共生性、盗葉緑体性の単細胞生物の例。
写真提供、大沼さん(神戸大)、岡田さん(遺伝研)。

2023/11/13

種々のヘテロ接合度を考慮した実践的ゲノムアセンブル法の提案

中村研究室・大量遺伝情報研究室

A Practical Assembly Guideline for Genomes with Various Levels of Heterozygosity

Takako Mochizuki, Mika Sakamoto, Yasuhiro Tanizawa, Takuro Nakayama, Goro Tanifuji, Ryoma Kamikawa, Yasukazu Nakamura*
*Corresponding Author

Briefings in Bioinformatics (2023) 24, bbad337 DOI:10.1093/bib/bbad337

パシフィック・バイオサイエンシズ・オブ・カリフォルニア社のサブリードに代表されるロングリードシーケンシング技術の発展は、ゲノム配列の再構築に大きく貢献してきました。しかしながら、この技術は、ゲノム配列の再構築に役立つ長いリードを生成する一方で、高いシーケンスエラーを抱えています。このシーケンスエラーを克服し、長くて精度の高いコンティグセットの構築を目指す様々なde novo アセンブラが開発されてきました。

二倍体ゲノムのde novo アセンブリでは、ヘテロ接合度が増すにつれてより複雑になります。そのため、ヘテロ接合度はde novo アセンブリの完成度に影響を与える大きな要因の一つでありますが、ヘテロ接合度の異なる二倍対ゲノムに対するde novo アセンブラの体系的な評価は今まで行われていませんでした。

そこで、本研究では、ヘテロ接合度の異なるゲノムを用いて、ゲノムサイズやヘテロ接合度などのゲノム特性の推定、de novo アセンブリ、ポリッシング、アリルを含むコンティグの除去などの一連のプロセスを評価し、ヘテロ接合度の程度に応じたハプロタイプの代表セットを構築するための具体的なガイドラインを発表しました。

この研究は、JSPS科研費新学術領域研究 16H06279 (PAGS・先進ゲノム支援)、15H05606 、19H03274、20H03305、 17H03723 の助成を受けました。

本研究の一部は遺伝研スーパーコンピュータシステムを用いて遂行されました。

図:様々なヘテロ接合度のゲノムを用いたゲノムアセンブルの評価プロセス

2023/11/07

琉球列島から日本初記録のテナガエビ類を報告

北野研究室・生態遺伝学研究室

First record of Macrobrachium mammillodactylus (Thallwitz, 1891) (Crustacea, Decapoda, Palaemonidae) from Japan.

Yusuke Fuke, Tomoaki Maruyama.

Check List (2023) 19, 821-826 DOI:10.15560/19.6.821

淡水性の甲殻類であるテナガエビ属は熱帯を中心に繁栄しているグループで、これまでに270種以上が知られています。太平洋周辺の広域に分布する種の多くは両側回遊型の生活史を持ちます。すなわち、孵化後すぐに川を降り、海流に乗って分布を広げることができます。こうした分散力の高い種は、気候変動による生息環境の変化に対して、分布域のシフトという形で迅速に対応できると考えられています。そのため、詳細な分布域の情報を蓄積することは、両側回遊性の種が環境変化にどのように応答するのかを調べる上で重要です。

今回、国立遺伝学研究所の福家悠介 学振特別研究員PDとトレンドデザイン株式会社の丸山智朗氏は琉球列島・宮古島の河川から採集されたテナガエビ属の1種を遺伝解析と形態形質の検討に基づいてイボユビテナガエビ(新称)Macrobrachium mammillodactylus (Thallwitz, 1891)と同定しました。これは本種の日本の初記録であると同時に本種の分布の北限記録です。本種はこれまで、東南アジアを中心に、オーストラリアから台湾中部に分布していることが知られていました。今回得られた標本は成体であり、発見地で越冬したものと考えられます。これは、本種の分布域が琉球列島まで拡大したことを示唆します。

東南アジアから琉球列島や本州への分布拡大は、他の南方系の淡水エビ類でも知られています。分布域に関する基礎的なデータを蓄積することで、将来的に両側回遊性の生物の分布拡大の要因を特定や予測が可能になるかもしれません。

図:今回、日本での分布が初めて確認されたイボユビテナガエビ(新称)。和名は成体オスの第二胸脚のハサミの間に見られる顆粒にちなむ。丸山撮影。

2023/11/02

「寺deサイエンス」を開催:12月1日(金) 19:00-

画像クリックで PDFが開きます

日  時: 2023年12月1日(金) 19:00~21:00

収録場所: 君澤山 蓮馨寺(三島市広小路町1-39)

内  容:

 第1部:「ゲノムからみた日本人の起源」

  講演:斎藤成也(国立遺伝学研究所 特任教授)

 第2部:「古代人のゲノム解析から見た人類史」

  講演:神澤秀明(国立科学博物館 人類研究部 研究主幹)

対  象: サイエンスに関心のある一般の方 

定  員: 500人(Zoomでのライブ配信参加)、40人(現地での参加)
     11/30(木) 正午 申込〆切(先着順)

参 加 費 : 無料(Zoomでのライブ配信参加)、1000円(現地での参加))

お申込先 : 専用フォーム

特 設 HP: 遺伝学普及会ページ


【問い合わせ】
〒411-8540 三島市谷田1111
公益財団法人遺伝学普及会
TEL:055-981-6857、 FAX:055-981-6877
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