Archive

2014/06/24

染色体のセントロメア形成に関わる分子スイッチを発見

Press Release

分子遺伝研究部門・深川研究室

Histone H4 Lys 20 mono-methylation of the CENP-A nucleosome is essential for kinetochore assembly

Tetsuya Hori, Wei-Hao Shang, Atsushi Toyoda, Sadahiko Misu, Norikazu Monma, Kazuho Ikeo, Oscar Molina, Giulia Vargiu, Asao Fujiyama, Hiroshi Kimura, William C. Earnshaw, and Tatsuo Fukagawa Developmental Cell Volume 29, Issue 6, p740–749, 23 June 2014 doi:10.1016/j.devcel.2014.05.001

プレスリリース資料

 DNAを運ぶ染色体は、細胞分裂のたびに新たな細胞へと正確に分配されていきます。染色体分配に異常がおこると、細胞に様々な問題がおきます。がんを始めとする各種遺伝性疾患の多くは、染色体の分配不全が原因でおきています。したがって、染色体分配についての研究は、基礎生物学の知識探求としてだけでなく、医科学的にも重要な課題です。 この染色体分配に重要な働きを担うのがセントロメアです。セントロメアは染色体の中央部に存在し、染色体が引っ張られるための足場として働いています。正確な染色体分配がおこるためには、染色体のある一カ所にセントロメアが形成されなければなりません。しかしながら、セントロメアはどのように形成されるのかと言うメカニズムは不明であり、世界中の研究者が熱心に探究してきました。 これまでにわかっていたことは、長いひも状のDNAが巻き付くヒストンというタンパク質の特徴が、セントロメア形成に大きく関わっているということです。つまり、DNAは8個のヒストンに巻き付いていますが、そのうちの一部に「CENP-A」というヒストンが含まれていると、そこにセントロメアが形成されます。 しかし、単純にCENP-Aが存在するだけでは、セントロメアは形成できません。そこで、我々は、CENP-Aを活性化する分子スイッチが存在するのではないかと予想しました。 今回の実験で我々が明らかにしたのは、この分子スイッチです。我々は詳細な解析を行った結果、DNAが巻き付くヒストンとしてCENP-Aが取り込まれた後、残りのヒストンのうちのH4という種類のヒストンに特別な修飾が加わると、セントロメア形成が起こることを明らかにしました。この特別な修飾とは、ヒストンH4の20番目のリシン(Lys)残基がメチル化されることです。 セントロメア形成の分子スイッチを発見できたのは、高精度のゲノム解析や染色体工学を活用した技術開発によります。これらの実験により、この分子スイッチがセントロメア形成に必須であることを証明できました。 この分子スイッチを操作することによって、将来的にはがんをはじめとする染色体分配不全が原因でおこる各種遺伝性疾患の解明・治療も可能になると考えています。

Figure1

(左)セントロメア形成のモデル。
1.) CENP-AがHJURPという分子の介在でセントロメアへ取り込まれる。2) CENP-A近傍のH4の20番目のリシン残基がメチル化される (H4K20me1修飾: 分子スイッチON)。 3) 分子スイッチを引き金にセントロメア形成がおこる。

(右)今回の掲載誌の表紙。
画家がキャンバスにむけて竜の絵を書いている。目に最後の一筆をいれると竜がキャンバスからとびだす。このコンセプトは、H4K20me1による分子スイッチによりセントロメア形成が達成されるというコンセプトと類似している。

2014/06/19

神経軸索の正常な伸長と経路選択を助ける膜タンパク質

脳機能研究部門・平田研究室

Transcallosal Projections Require Glycoprotein M6-Dependent Neurite Growth and Guidance.

Sakura Mita, Patricia de Monasterio-Schrader, Ursula Fünfschilling, Takahiko Kawasaki, Hidenobu Mizuno, Takuji Iwasato, Klaus-Armin Nave, Hauke B. Werner, and Tatsumi Hirata. Cerebral Cortex  DOI: 10.1093/cercor/bhu129

4回膜貫通タンパク質M6aは軸索の先端に豊富に分布し、軸索伸長に関わる可能性が、古くから培養実験により示唆されてきました。しかし一見矛盾する報告もあり、実際の生理的機能については不明でした。今回我々は、M6a遺伝子とそのホモログであるM6b遺伝子を同時に破壊する事で、これらのタンパク質が実際に生理的に軸索伸長に働くことを明らかにしました。M6aとM6bを欠損したマウスでは、左右の大脳半球をつなぐ軸索束である脳梁が顕著に細くなり、多くの軸索が脳梁に到達する前に伸長を停止してしまいます。さらに一部の軸索は行き先を誤って、大脳皮質外に伸びていることもわかりました。以上の結果は、M6タンパク質が、生体脳において、正常な軸索伸長と経路選択を保障する重要な役割を担うことを示しています。

形質遺伝研究室が開発したSupernovaシステムを用いた共同研究による成果です。

Figure1

上:M6a/M6b 二重変異マウスの脳(右)では、左右大脳半球をつなぐ脳梁軸索(緑)の本数が著しく減少する(矢印)。下:Supernovaシステムによりトレースした軸索の形態。M6a/M6b 二重変異マウスの脳(右)では、軸索が短いだけでなく、走行方向が乱れ、間違った部位にも投射する(矢印)。

2014/06/13

違った性質の攻撃行動には異なる遺伝子が関与する

マウス開発研究室・小出研究室

Genetic mapping of escalated aggression in wild-derived mouse strain MSM/Ms: association with serotonin-related genes

Aki Takahashi, Toshihiko Shiroishi, Tsuyoshi Koide Frontiers in Neuroscience Front. Neurosci., 11 June 2014; doi:10.3389/fnins.2014.00156

野生由来マウス系統であるMSMのオスは過剰な攻撃性を示します。マウス開発研究室の高橋阿貴助教らは、その過剰な攻撃行動の調節にかかわる遺伝子が少なくとも2つの染色体に存在し、それぞれの遺伝子は異なった性質の攻撃行動に関与していることを明らかにしました。また、この高い攻撃性にはセロトニン神経系に変化が生じていることを示しました。

 マウスのオスは自らのなわばりを守るために、侵入者のオスに対して攻撃行動を示します。これは、相手を追い払うことが目的で、けがを負わせたり殺したりしてしまうことは、実験用マウスではほとんどありません。一方、日本の三島市で捕まえられた野生マウスを系統化したMSM系統のオスは、高い攻撃性を示し、離乳後にオス同士を一緒に飼育していると、性成熟後に激しいけんかが起こり、兄弟や、ときには交配相手であるメスを殺してしまうことがあります。このMSMの高い攻撃性に関わる遺伝子座を明らかにするために、哺乳動物遺伝研究室で作出されたコンソミックマウス系統群を用いて、順遺伝学的な手法を用いて解析を行いました。 コンソミックマウス系統とは、ほとんど全ての遺伝子は実験用マウスのC57BL/6J系統と同じなのですが、1種類の染色体(全部で21種類ある染色体のうちの1つ)のみMSM系統に由来するものを持っている系統です。コンソミック系統群の解析を行うことによって、私たちはMSMの高い攻撃性に関わる遺伝子が、4番染色体と15番染色体上に存在することを明らかにしました。また、それぞれの染色体が行動に及ぼす効果を調べることで、違った性質の攻撃行動にかかわっていることがわかりました。MSM型の4番染色体を持つコンソミック系統は攻撃をひとたび始めてしまうと、異常に高いかみつき行動や追いまわし行動を行い、交配相手のメスに傷を負わせるような個体も存在しました。一方、MSM型の15番染色体を持つコンソミック系統は、多くの個体が攻撃を開始しやすい傾向にあるのですが、攻撃を始めてもその頻度はそれほど高くないという特徴を持ちました。 攻撃行動には脳内のセロトニンが関与することが多くの研究から報告されています。今回、私たちはMSMとコンソミックマウス系統の脳内のセロトニン関連遺伝子の発現を調べ、MSMや高い攻撃行動を示すコンソミック系統において、セロトニンの合成酵素であるTph2遺伝子の発現が増加しており、セロトニン神経系に変化が生じていることも明らかにしました。 今回の研究は、攻撃行動の調節に関わる遺伝子がそれぞれ違った性質の攻撃性に関与しており、その遺伝的基盤の複雑さを示しています。今後、攻撃行動と遺伝子の関係をより深く理解する上で重要な情報をもたらしてくれると考えられます。

Figure1

コンソミックマウス系統を用いたMSMの過剰な攻撃行動に関わる遺伝子座の探索

2014/06/06

FTPサービスへの不正アクセスについて

平成26年 6月 6日

国立遺伝学研究所において、FTPサービスが不正アクセスにより5月28日(水)0時24分~9時26分の間、停止しました。 【原因】 ・正常アクセスを1つのサイトから多数接続されたため 【現在の状況】 ・現在は正常にサービスを行っております。 ・当該サービスにアクセスされた方への二次被害はありません。 ・個人情報や機密情報の流出は確認されていません。
2014/06/02

2014年度国立遺伝学研究所 特別共同利用研究員 募集は締め切りました


 

2014年度年度大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所特別共同利用研究員申請要領


 

1.受入人員

分子遺伝研究系
細胞遺伝研究系
個体遺伝研究系
集団遺伝研究系
総合遺伝研究系
新分野創造センター
系統生物研究センター
構造遺伝学研究センター
生命情報研究センター
実験圃場
先端ゲノミクス推進センター
かっこ  若干名

 

2.受入対象

大学院における博士課程又は修士課程に在籍し、遺伝学又はこれに関連する学問分野を専攻している者

 

3.研究系・各研究施設の担当教員及び研究の概要

別紙「2014年度研究系・各研究施設の担当教員及び研究の概要」を参照してください。 委託を希望する研究科所属の指導教員は、申請書作成・提出の前に本研究所の教員と事前に協議してください。

 

4.受入の期間

(第一次) 2014年 4月1日から2015年3月31日まで (第二次) 2014年10月1日から2015年9月30日まで 受入期間は、原則として1年以内ですが、期間延長が可能です。ただし、博士前期課程(修士課程)に在籍する者については、1年を超えることができません。 なお、上記期間以外での受入を希望する場合は、本研究所にお問い合わせください。

 

5.提出書類

○特別共同利用研究員申請書           1部   (様式1)
○履歴書 ( 指導を受ける大学院生が作成 )   1部   (様式2)

なお、申請要領、様式等は以下からダウンロードできます。 申請要領(PDF)指導題目・担当教員(PDF)申請書(ワード)


 

6.提出書類の締切

(第一次) 2014年2月21日(金) (第二次) 2014年8月22日(金)

 

7.受入の許可

提出された書類に基づき所内審査の上決定し、その結果を研究科長に通知します。


 

8.研究指導の終了

研究指導期間終了後、当該学生に研究修了証明書を交付するとともに、在籍大学院の研究科長に研究指導を終了した旨の通知を送付します。

 

9.災害補償

本研究所では、災害補償制度の加入手続きはしておりませんので、それぞれの大学において財団法人日本国際教育支援協会の学生教育研究災害障害保険制度に加入してください。
〔参考〕
財団法人日本国際教育支援協会担当部署連絡先
担当部署 郵便番号 所在地 電話
事業部保険・補償課 153-8503 目黒区駒場4-5-29 03(5454)5275

 

10.問い合わせ及び書類送付先

〒411-8540 静岡県三島市谷田1111
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 
管理部総務企画課研究推進チーム
電話:055-981-6728(ダイヤルイン) E-mail:kyodo-mail @nig.ac.jp


様式のダウンロード 申請要領(PDF)指導題目・担当教員(PDF)申請書(ワード)

  • X
  • facebook
  • youtube