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2019/09/30

不具合を解決:セミナー情報が正しく表示されないエラーについて

いつもご利用いただきありがとうございます。

一部のブラウザのバージョンにおいてセミナー情報が正しく表示されない不具合が発生していましたが解決しました。
引き続きセミナー情報をご利用いただけます。

2019/09/19

生きたヒト細胞のDNAの流動的な動きを捉えた

Press release

Organization of fast and slow chromatin revealed by single-nucleosome dynamics

S. S. Ashwin, Tadasu Nozaki, Kazuhiro Maeshima, and Masaki Sasai

PNAS first published September 16, 2019 DOI:10.1073/pnas.1907342116

プレスリリース資料

名古屋大学大学院工学研究科の S.S. Ashwin 特任助教、笹井 理生 教授のグループは、国立遺伝学研究所の 野崎 慎 日本学術振興会特別研究員 (現ハーバード大研究員)、前島 一博 教授のグループとの共同研究により、ヒト細胞核の中でゲノムDNAが多様で流動的な動きを示すことを明らかにしました。共同研究グループは超解像蛍光顕微鏡を駆使して、生きた細胞内のゲノムDNAを観測し、その動きを統計的に分析しました。その結果、ゲノムDNAの中で速く動く部分と遅く動く部分があり、それぞれ特徴的な塊を形成して、細胞の状態に応じてその比率が大きく変わることを発見しました。遅い部分は、細胞核膜周辺のラミンや核の中のコヒーシンと呼ばれるタンパク質などによって、ゲノムDNAの動きが束縛されて産み出されていると思われます。本研究によって、DNAは生きた細胞の中で大きく揺らいでいて、その動きと細胞の性質に密接な関連があることが明らかになりました。この成果は、DNAの変化に伴って生じる細胞の異常や関連する疾患の理解につながることが期待されます。 

本研究は、科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(CREST) (JPMJCR15G2)、科研費新学術領域研究「クロマチン潜在能」(JP19H05258、JP19H05273) 科研費新学術領域研究「先進ゲノム支援」(JP16H0627)、科研費基盤研究B(JP19H01860、JP16H04746)、武田科学振興財団、RIKEN Pioneering Project、遺伝研共同研究(2016-A2(6))の支援を受けました。

Figure1

図: A)少数のヌクレオソーム(DNAがヒストンと呼ばれるタンパク質に巻かれたもの)を蛍光標識する(赤)ことにより、ヌクレオソーム1個1個の動きを調べることができる。(B)超解像蛍光顕微鏡による核内のヌクレオソーム画像。1個1個のドットが1個1個のヌクレオソームを示している。Nozaki et al. (2017) より転載。(C) 個々のヌクレオソームの動きを1コマ50ミリ秒で追跡した軌跡。(D) 観測された個々のヌクレオソームの動きの大きさを平均二乗変位で測ると、ヌクレオソームの個数分布はふた山にわかれ、速いヌクレオソーム(クロマチン)と遅いヌクレオソーム(クロマチン)があることがわかる。図は10個の細胞についての観測結果を重ねて描いたもの。

動画: 超解像蛍光顕微鏡による細胞核内 ヌクレオソーム 動き 動画。1 個 1 個のドットが 1 個 1 個 ヌクレオソームを示している。 1 コマ 50 ミリ秒。Nozaki et al. (2017) より転載。

2019/09/11

MCM8–9経路の相同組換えを制御する新規因子HROB

Control of homologous recombination by the HROB–MCM8–MCM9 pathway

Nicole Hustedt, Yuichiro Saito, Michal Zimmermann, Alejandro Álvarez-Quilón, Dheva Setiaputra, Salomé Adam, Andrea McEwan, Jing Yi Yuan, Michele Olivieri, Yichao Zhao, Masato T. Kanemaki, Andrea Jurisicova, and Daniel Durocher

Genes & Development online advanced publication DOI:10.1101/gad.329508.119

人を含む多くの生物は、両親からそれぞれ1つずつ受け継ぐことで、合計2コピーのゲノムを遺伝情報として持っています。相同組換えはこの2コピーのうち、一方を鋳型として、もう一方を上書きする反応です。相同組換えは配偶子(精子と卵子)形成時の減数分裂に関与するだけでなく、DNA複製中のDNAや放射線で損傷したDNAを修復することに寄与しており、これにより細胞死や発癌などが抑制されます。

相同組換えは主に二つのステップで構成されます。つまり、(1)長いゲノムの中から目的の情報がある部位を探索し、(2)その領域の情報をコピーすることで元の情報を鋳型の情報に上書きします。多くの研究から、情報を探索する反応については詳細がわかってきていますが、コピーする反応の詳細はよくわかっていませんでした。これまでに我々はこのコピー反応に重要な機能を持つMCM8-9の機能を解析してきましたが、今回カナダトロント大学のDaniel Durocher教授ら研究グループと共同でMCM8-9をコピーすべき部位に連れてくる新たな因子HROBを発見しました。MCM8-9と同様に、HROBを欠損した細胞はDNA複製時に機能するDNA修復に異常を持ち、HROBノックアウトマウスも不妊になることから、HROBがMCM8–9とともに正常に機能することがゲノム維持と減数分裂に重要であることが明らかとなりました。HROBとMCM8-9が関与する相同組換えメカニズムの理解が進むことで、癌治療や不妊治療などの応用につながる可能性が期待されます。

Figure1

図:相同組換えは(1)目的の情報を探索し、(2)情報をコピーすることで元の情報を鋳型の情報に上書きします。この反応に必須であるMCM8–9を必要な部位に集める新しい因子としてHROBタンパク質を同定しました。

2019/09/09

「寺deサイエンス」を開催:10月11日(金)

~新聞・テレビ・ラジオから学ぶサイエンス~

日 時: 10月11日(金)19:00~20:30(受付:18:30~)

場 所: 君澤山 蓮馨寺(三島市広小路町1-39)

内 容:『新聞・テレビ・ラジオから学ぶサイエンス』

 第1部:科学記事をどう読むか

  話し手:川内十郎氏(静岡新聞社文化生活部長・論説委員)
  聞き手:五條堀 孝 (遺伝学普及会 共同代表理事、
   サウジアラビア科学技術大学特別栄誉教授)

 第2部:NHKスペシャル制作者が語る、驚きカガク舞台裏

  話し手:結城仁夫氏 (NHK科学番組チーフ・ディレクター)
  聞き手:小林 武彦 (遺伝学普及会 共同代表理事、東京大学教授)

対 象: サイエンスに関心のある一般の方 

定 員: 70名(申込多数の場合は、遺伝学普及会維持会員優先の上、他抽選)

参加費: 1000円

申し込み: 公益財団法人遺伝学普及会 事務局まで 

  ①氏名 ②性別 ③住所 ④電話番号 を明記の上、メール・はがき・FAXでお申込みください。電子申請も可能です。


【問い合わせ・申し込み】
〒411-8540 三島市谷田1111
公益財団法人遺伝学普及会 事務局
TEL:055-981-6857、 FAX:055-981-6877
Email:genetics@nig.ac.jp
2019/09/05

魚で見つかったレム睡眠とノンレム睡眠

Neural signatures of sleep in zebrafish.

Louis C Leung, Gordon X Wang, Romain Madelaine, Gemini Skariah, Koichi Kawakami, Karl Deisseroth, Alexander E Urban, and Philippe Mourrain

Nature 571(7764) 198-204 (2019) DOI:10.1038/s41586-019-1336-7

徐波睡眠(ノンレム睡眠)と急速眼球運動睡眠(レム睡眠)は、哺乳類、鳥類、爬虫類で見つかっているが、このようなニューロンのシグネチャーが羊膜類以外の脊椎動物でも見られるかどうかは不明であった。今回我々は、ゼブラフィッシュにおける非侵襲性の蛍光睡眠ポリグラフィー検査(fPSG)を開発し、脳全体の不偏的な活動 記録と、眼球運動、筋肉運動および心拍の評価と組み合わせることで、ゼブラフィッシュには少なくとも2つの大きな睡眠シグネチャーがあることを示した。我々はこれらのシグネチャーを徐バースト型睡眠 (SBS)および伝搬波型睡眠(PWS)と命名した。これらは、それぞれ徐波睡眠(ノンレム睡眠)とレム睡眠に共通する性質を有している。さらに、哺乳類の睡眠に関連するメラニン凝集ホルモンシグナル伝達が、ゼブラフィッシュにおいてもPWSシグネチャーと全体的な睡眠量を調節していることを見いだした。これらの観察結果は、哺乳類と魚類で共通する睡眠の神経シグネチャーは、4億5000万年以上前の脊椎動物の脳で生じたであろうことを示唆している。

本研究は、国立遺伝学研究所と米国スタンフォード大の共同研究として行われました。

Figure1

図:(a,b)カルシウムイメージングに用いたトランスジェニックゼブラフィッシュ(c)睡眠非遮断フィッシュ(d)睡眠遮断フィッシュに見られる徐バースト型睡眠


▶この研究の基盤となった研究はこちらです。


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