プレスリリース
Development of a genome-wide marker design workflow for onions and its application in target amplicon sequencing-based genotyping
D. Sekine, S. Oku, T. Nunome, H. Hirakawa, M. Tsujimura, T. Terachi, A. Toyoda, M. Shigyo, S. Sato, H. Tsukazaki
DNA Research (2022) 29, dsac020 DOI:10.1093/dnares/dsac020
これまで、病気に強い、収量が高いなどの望ましい形質をもつ野菜を選び出すには、たくさんの個体の栽培、形質の調査、有望な個体の選抜を繰り返すことが必要であり、新しい品種の育成には多くの労力と長い時間を費やしてきました。品種育成の効率化には、DNA型の違い(DNA多型)を検出するDNAマーカーを開発し、活用することが有効です。特に、特定の形質と関連したDNAマーカー(選抜マーカー)は、DNA多型によって特定の形質が優れた個体を苗の段階で判別できるため、様々な形質について開発が望まれています。選抜マーカーの開発には、まず染色体全体のDNA多型を調べ、それらと形質データを照らし合わせて、目的の形質と関連するDNA多型の位置を特定する必要があります。近年は次世代シーケンサーの登場により、大量のDNA情報を安価に解読できるようになったため、染色体全体でのDNA多型の効率的な分析が可能になり、多くの野菜品目において選抜マーカーの開発が飛躍的に進んでいます。
しかし、タマネギでは染色体全体でのDNA多型の分析は容易ではありません。生物によって染色体全体のDNA情報であるゲノムサイズは、大きく異なります。タマネギのゲノムサイズは野菜の中でも最大級であり、その大きさはトマトの16倍もあります。そのため、トマトなど他の品目で使われてきた手法を用いて、タマネギの染色体全体でのDNA分析を行う場合、解析に要する費用や時間が大幅に増加することが予想されます。この手法でのタマネギのDNA分析は困難であり、タマネギでは染色体全体でのDNA分析法が確立していないため、選抜マーカーの開発や育種利用が遅れていました。
農研機構をはじめとする共同研究グループは、タマネギにおいて、染色体全体のDNA多型を効率的に分析する方法の開発を目指しました。まず、タマネギにある8本の染色体について、各々に圴一に配置され、染色体全体をカバーしたDNAマーカーセットを作成しました。次に、次世代シーケンサーを利用し、これらのマーカーセットの全てのDNA多型を一度にまとめて分析する手法を試みました。その結果、染色体全体のDNA多型を効率的に分析することに成功しました。この分析手法で得られた個体間のDNA多型と形質を照らし合わせれば、DNAマーカーセットの中から目的の形質と関連したDNAマーカーを特定でき、選抜マーカーとして利用できるようになります。この技術は、タマネギでの選抜マーカーの開発を飛躍的に進め、育種の効率化および新品種の早期育成に貢献することが期待できます。
本研究は、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP):スマートバイオ産業・農業基盤技術「データ駆動型育種」推進基盤技術の開発とその活用による新価値農作物品種の開発 2. 農林水産省「戦略的国際共同研究推進委託事業」、JSPS科研費JP26292020、文部科学省 科学研究費助成事業新学術領域研究「学術研究支援基盤形成」先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム(16H06279 (PAGS))の支援を受けて行われました。
ゲノムダイナミクス研究室の飯田史織さん(総研大遺伝学専攻D3)が、2022年8月30日〜9月2日に岐阜で開催された、第62回生物物理若手の会・夏の学校でポスター発表をおこない、現代化学賞を受賞しました。
現代化学賞は、株式会社東京化学同人が出版する化学月刊誌『現代化学』の編集者による審査によって決定しました。副賞として、『現代化学』1年分、および、受賞内容に関する記事の『現代化学』への掲載権が与えられます。
▶ 学会HP:第62回生物物理若手の会・夏の学校
▶ 受賞ポスタータイトル:
ヒト生細胞の局所クロマチン動態は細胞周期を通して一定である
共生細胞進化研究室の山下翔大さん(遺伝研博士研究員)が2022年度の日本植物形態学会奨励賞を受賞し、2022年9月16日の日本植物形態学会第34回大会にて表彰されました。受賞内容は前所属先での博士課程の研究テーマ「ボルボックス系列緑藻アストレフォメネの発生学的解析とゲノム解読を用いた多細胞形質の平行進化に関する研究」です。山下さんは、ボルボックスとは独立に球状群体や細胞分化を獲得したアストレフォメネという藻類について、新規培養株や新たな実験手法の確立から研究を始め、細胞レベルの形態観察・発生解析からゲノム解読に至るまで幅広いスケールでの進化学的研究を行ない、その独創性や積極性が高く評価されました。
山下翔大研究員より受賞のコメントが届いておりますのでご紹介します。
この度は日本植物形態学会奨励賞を受賞し、大変光栄に思います。これまでご指導、ご鞭撻を賜りました先生方や多くの方々のサポートがあって、伸び伸びと研究をさせていただいた成果が受賞につながりました。支えていただいた皆様に厚く御礼申し上げます。さらに面白い研究へと発展させていけるよう、今後ともより一層精進してまいります。
日時: 2022年10月20日(木)12:40~17:20 (予定)
会場:ハイブリッド開催(Onsite & Online Hybrid) Zoom使用
現地会場:国立遺伝学研究所(DDBJ)静岡県三島市谷田1111
想定スキルレベル: 情報解析初級者(UNIX初心者)
募集人員: 現地会場:若手研究者 20 名程度
・応募者多数の場合は、先進ゲノム支援における支援依頼者を優先します。さらに多数の場合は抽選等で参加者を決定いたします。
・各自のPCを持参ください(Windows、Macいずれも可)
・講習内容をご自身のPCで行うには遺伝研スパコンのログインユーザアカウントが必要となります。お持ちでない方で現地参加の方、およびオンライン参加でご希望の方は当選確定後直ちに取得していただく必要があります。
・抽選に外れた方およびオンラインでの参加希望者にはweb配信でご参加頂けます(講習内容についてのオンライン参加者からの質問には対応致しかねます)。
参加費用: 無料(旅費は参加者でご負担ください。)
申込締切: 2022年9月26日(月)
2022年9月1日~2日、大阪の国立循環器病研究センターにて行われた 第28回 小型魚類研究会に於いてシステム神経科学研究室 松田光司 研究員が口頭発表賞を、大学院生のChung Han Wangさんがポスター賞をそれぞれ受賞しました。
▶ 松田光司研究員 発表のタイトル
Molecular signature of optic flow responsive neurons identified by a technique combining functional labeling and single cell RNA-seq
▶ 大学院生 Chung Han Wangさん 受賞ポスタータイトル
Intersectional genetics for investigating putative pretectal hub neurons in the optic flow processing circuit
▶ 授賞日:2022年9月2日
生態遺伝学研究室の奥出絃太さん(日本学術振興会特別研究員PD)が、2022年度の成茂動物科学振興賞を受賞し、2022年9月9日の動物学会にて表彰されました。受賞内容は前所属先での博士課程の研究テーマ「トンボの変態を制御する分子機構の解明」です。
成茂動物科学振興賞は、「動物学の全分野でユニークな研究を展開する研究者」に授与される賞です。
生態遺伝学研究室に遺伝研博士研究員として所属していた後藤寛貴さん(現・静岡大学理学部・助教)が、2022年度の日本動物学会奨励賞を受賞し、2022年9月9日の動物学会にて表彰されました。受賞内容は「甲虫類における極端な性的二型発現の分子発生学的研究」です。
日本動物学会奨励賞は、動物学会員で活発な研究活動を行い、将来の進歩、発展を強く期待される若手研究者に贈られる賞です。