新分野創造センター・植物進化研究室の福島健児准教授が令和6年度文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞しました。
本賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者に授与されるものです。
▶授賞式日時: 令和6年4月17日
▶授賞式会場:文部科学省3階 講堂
▶受賞名:令和6年度文部科学大臣表彰 若手科学者賞
▶受賞テーマ:食虫植物をモデルとしたマクロ進化機構の研究
国立遺伝学研究所技術課・木曾誠班長が令和6年度文部科学大臣表彰 研究支援賞を受賞しました。
本賞は、高度で専門的な技術的貢献を通じて研究開発の推進に寄与する活動を行い、顕著な功績があった者に授与されるものです。
▶授賞式日時: 令和6年4月17日
▶授賞式会場:文部科学省3階 講堂
▶受賞名:令和6年度文部科学大臣表彰 研究支援賞
▶受賞テーマ:1世代遺伝学を可能にしたキメラマウス解析技術確立への貢献
技術課・木曾誠班長
プレスリリース
Evolutionary origins of bitter taste receptors in jawed vertebrates
Akihiro Itoigawa, Yasuka Toda, Shigehiro Kuraku and Yoshiro Ishimaru
Current Biology (2024) 34, 271-272 DOI:10.1016/j.cub.2024.02.024
明治大学 研究知財・戦略機構研究員(日本学術振興会特別研究員PD) 糸井川壮大、農学部特任講師 戸田安香、同教授 石丸喜朗、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所教授 工樂樹洋の研究グループは、従来、苦味を検知する受容体を持たないと考えられていた軟骨魚類のサメやエイが苦味受容体遺伝子を持つことを発見しました。この発見により、脊椎動物の苦味受容体の進化的起源が従来の説よりも古く、有顎類の共通の祖先まで遡れることを明らかにしました。
本研究は主に、日本学術振興会 科学研究費助成事業、公益財団法人ロッテ財団 ロッテ重光学術賞、明治大学科学技術研究所 重点研究Bのサポートを受けて実施されました。
研究成果は、2024年4月9日(火)0時(日本時間)にCurrent Biology(カレントバイオロジー)誌にオンライン掲載されました。
図: 苦味受容体T2Rの進化について、従来の説と本研究の説の比較
Non-canonical functions of UHRF1 maintain DNA methylation homeostasis in cancer cells
Kosuke Yamaguchi, Xiaoying Chen, Brianna Rodgers, Fumihito Miura, Pavel Bashtrykov, Frédéric Bonhomme, Catalina Salinas-Luypaert, Deis Haxholli, Nicole Gutekunst, Bihter Özdemir Aygenli, Laure Ferry, Olivier Kirsh, Marthe Laisné, Andrea Scelfo, Enes Ugur, Paola B. Arimondo, Heinrich Leonhardt, Masato T. Kanemaki, Till Bartke, Daniele Fachinetti, Albert Jeltsch, Takashi Ito & Pierre-Antoine Defossez
Nature Communications (2024) 15, 2960 DOI:10.1038/s41467-024-47314-4
細胞が増殖する際には遺伝情報物質であるゲノムDNAが複製されます。その際、DNAだけではなく、細胞の生存に必須なDNAの修飾情報であるDNAメチル化も親細胞から娘細胞に維持されていきます。このDNAメチル化を維持するには、DNAメチル化酵素であるDNMT1とその活性化因子であるUHRF1が重要であることが知られていました。しかし、UHRF1自体にはDNAメチル化酵素としての機能はなく、UHRF1はあくまでDNAメチル化酵素であるDNMT1の機能を補助する役割であると認識されていました。一方で、UHRF1はDNMT1と異なり癌原遺伝子としても認識されており、多くの癌細胞において過剰発現をしていることが知られていたため、DNMT1の制御以外の役割があることが示唆されていました。
本論文では、UHRF1とDNMT1の詳細な機能比較を行うため、鐘巻研究室が開発した標的タンパク質分解技術であるオーキシンデグロン(AID)法およびAID2法により、大腸癌におけるUHRF1およびDNMT1の即時分解を行いました。興味深いことにDNMT1を分解した時に比べ、UHRF1を分解した際により顕著なDNAメチル化の減少が確認され、UHRF1がDNMT1を制御する以外の役割を持つことが示唆されました。また、UHRF1およびDNMT1分解後の細胞の全ゲノムDNAメチル化解析および遺伝子ノックアウト・ノックダウン解析により、UHRF1がDNMT1だけでなくDNAメチル化酵素であるDNMT3A/ DNMT3Bと脱メチル化酵素であるTET2も制御することが明らかになりました。
鐘巻研究室の山口助教(当時、パリ・シテ大学、博士研究員)が筆頭著者・共責任著者として、Pierre-Antoine Defossez博士の研究室において本研究をおこないました。また、鐘巻将人教授も共同研究者として本研究に参画しました。
図:DNAメチル化維持機構におけるUHRF1の役割の新モデル。
ゲノム多様性研究室のJaeha Kimさん(総研大遺伝学コースD3)が、2024年3月12日-14日にかずさアカデミアホールで開催された第18回日本ゲノム微生物学会年会でポスター発表をおこない、優秀ポスター賞を受賞しました。
Jaeha Kimさん
国立遺伝学研究所の物理細胞生物学研究室では、研究をサポートしていただけるテクニカルスタッフの方を下記の内容にて募集いたします。
【募集人数】 | 1名 |
【職務内容】 | (雇入れ直後)生物学実験の補助(培地作成など)、研究に関わる事務作業(発注など) (変更の範囲)研究室の運営を補佐する業務全般 |
【勤務地】 | 国立遺伝学研究所キャンパス(静岡県三島市谷田1111) |
【応募資格】 | ・理系・医療系の専門学校、大学、もしくは大学院の卒業者。 ・協調性があり、積極的に業務に取り組む意欲がある方。 |
【採用時期】 | 2024年4月以降のできるだけ早い時期(相談に応じます) |
【契約期間】 | 期間の定めあり(採用日〜2025年3月31日) 契約の更新あり(年度更新;契約期間満了時の業務量、勤務成績により判断) 更新上限あり (通算契約期間の上限:3年(業務内容により5年または10年)) |
【勤務形態】 | 週5日勤務(月~金)9:00~16:00(休憩1時間)(時間は相談に応じます) 休日:土日、祝祭日、夏季休暇、年末年始 |
【給与・待遇】 | 研究所の給与規定に準じます(時給1,013 円~1,300円)。 健康保険、年金、雇用保険、労災保険に加入。条件に応じて通勤手当を支給。 |
【応募書類】 | 履歴書。これまでの経歴(就いていた職があればその期間・内容・役割など)と連絡先メールアドレスを必ず記載下さい。 |
【応募・連絡先】 | 物理細胞生物学研究室 島本勇太: |
【応募締切】 | 適任者が決まり次第。 |
【備考】 | ・この応募について質問がありましたら上の連絡先メールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。 ・未経験の業務については適切に指導させて頂きます。 ・書類選考の通過者を対象に面接を行い、採用を決定いたします。 ・応募書類は、情報・システム研究機構個人情報保護規定に則り厳重に管理し、採用審査の用途に限り使用いたします。これらの個人情報は正当な理由なく第三者への開示、譲渡及び貸与することはありません。 ・頂いた応募書類は、採用者の分を除き本募集の終了とともに責任を持って破棄させて頂きます。 |
プレスリリース
Establishment of a zebrafish inbred strain, M-AB, capable of regular breeding and genetic manipulation
Kenichiro Sadamitsu, Fabien Velilla, Minori Shinya, Makoto Kashima, Yukiko Imai, Toshihiro Kawasaki, Kenta Watai, Miho Hosaka, Hiromi Hirata and Noriyoshi Sakai.
Scientific Reports (2024) 14, 7455 DOI:10.1038/s41598-024-57699-3
ゼブラフィッシュは広く世界中で使われている脊椎動物のモデル生物ですが、子供の性比がオスメス1:1にならないことや近交弱勢の現象がみられることから、遺伝的に均質な近交系は開発されていませんでした。国立遺伝学研究所の酒井研究グループはこれまでに、野生型IND系統を16世代まで兄妹交配してIM系統を樹立し、ゼブラフィッシュで継続的な兄妹交配が可能なことを見出していました。しかしながら、この系統は子供が少なく寿命が短いため、研究に使いやすい近交系を樹立できるかが課題でした。
本研究では、IM系統を引き続いて兄妹交配を行い、20世代を超えて近交系として樹立するとともに、別の野生型*AB系統に着目し、その系統で兄妹交配を行い、あらたに近交系「Mishima-AB (M-AB) 」系統を樹立しました。
ゲノムシーケンスの結果、M-AB系統において相同塩基配列が異なっている率は 0.011%で、M-AB系統は十分に遺伝的に均質であることが分かりました。さらに、M-AB系統は多産で丈夫な卵を産み、受精卵への遺伝子改変操作ができることも分かりました。
M-AB系統を用いることで、行動や薬物反応等の多数の遺伝子がかかわる形質について高い精度の解析が可能となりました。
本成果は情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の酒井研究グループと青山学院大学の平田研究グループの共同研究によって行われました。
近交系の樹立は遺伝研の基盤研究費と研究プロジェクト支援、科研費 (19700372, 21KK0129, 21K06159) の支援を受けて遺伝研酒井研究グループで行い、ゲノム解析は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)(21ek0109484s1102, 22ek0109484h0003, 22mk0101223h0601, 23mk0101223h0602)、科研費(19H03329)、日本化学工業協会、内藤記念科学振興財団、武田科学振興財団の支援を受けて青山学院大平田研究グループで行いました。
本研究成果は、国際科学雑誌「Scientific Reports」に2024年3月30日(日本時間)に掲載されました。
図: M-AB系統の兄妹交配の系図
2024年4月1日付けで浅川和秀准教授が神経システム病態研究室を開設しました。
浅川 和秀 准教授
2024年4月1日付けで後藤恭宏 准教授が先端ゲノミクス推進センターに着任しました。
▶ 後藤 恭宏 准教授:先端ゲノミクス推進センター シーケンシング部門
後藤 恭宏 准教授
2024年4月1日付けで遺伝研に助教が着任しました。
2024年4月1日付けで新分野創造センターに福島健児准教授が着任しました。
新分野創造センター(Center for Frontier Research)は,「あたらしい人材」と「あたらしい分野」を同時に育成するためのインキュベーションセンターです。 若手の優れた研究者が研究室主催者(テニュアトラック准教授)として研究室を運営し、 遺伝研の卓越した研究環境や様々なサポートを活用して遺伝学とその周辺領域に新しい分野を開拓する研究を行っています。
脳機能研究室に所属する西村瑠佳さんが総合研究大学院大学(総研大)の第12回「SOKENDAI賞」を受賞しました。
SOKENDAI 賞は、特段に顕彰するに相応しい研究活動を行い、その成果を優れた学位論文にまとめて課程を修了し、学位を取得した学生を表彰するものとして、2018年度に創設されました。授賞式は2024年3月22日に学位記授与式の中で行われ、 山本副学長から賞状とトロフィーが贈られました。西村さんは、SOKENDAI賞以外にも遺伝学コースの「森島奨励賞」を受賞しています。
▶ 学位論文タイトル:
Ancient Viral Discovery and Characterization Using Ancient DNA Sequencing Data
西村さんより受賞のコメントが届いておりますのでご紹介します。
この度は栄誉ある賞を頂戴し、大変光栄に存じます。
2019年の春に入学した時は研究者としてのスタートラインに立てていなかった私が、無事学位取得できただけでなく、修了に際して賞をいただくことができたのは、5年間に渡って研究生活、そして大学院生活をサポートしてくださった皆様のお陰だと感じております。
遺伝研では研究室内外の先生や研究員の方に指導していただく機会がたくさんあり、議論などを通じて、研究手法そのものだけでなく研究への向き合い方といった研究者として必要不可欠な素養も身につけることができました。
5年間の大学院生活で学んだことを糧に、世界で活躍することを目指して頑張ります。
最後に、指導教員の井ノ上先生、平田先生をはじめとする先生方や職員の皆様、学生の仲間に改めて感謝申し上げます。
総合研究大学院大学 遺伝学コースが独自に行っている「森島奨励賞」の選考が、2023年度後期の学位出願者に対して行われ、脳機能研究室に所属する西村瑠佳さんが受賞しました。
・西村瑠佳(脳機能研究室 平田研究室)
「Ancient Viral Discovery and Characterization Using Ancient DNA Sequencing Data」
授与式が2024年3月12日に行われ、花岡所長から賞状と研究奨励金が贈られました。
▶ 森島奨励賞とは
総研大遺伝学専攻で優秀な研究成果を発表して学位を取得した学生に、その研究内容を称えるとともに今後のさらなる発展を促す目的で贈られます。
▶ 遺伝学の先達
プレスリリース
Effect of mowing on population maintenance of the endangered silver-studded blue butterfly, Plebejus subsolanus (Lepidoptera: Lycaenidae), throughout its life cycle in Japan
Masato Hayamizu, Naoyuki Nakahama, Atsushi Ohwaki, Gohta Kinoshita, Yoko Uchida, Nobuyoshi Koyama, Kazutaka Kida
Journal of Insect Conservation 2024 March 27 DOI:10.1007/s10841-024-00552-9
速水将人(北海道立総合研究機構)、中濵直之 (兵庫県立大学 兼 兵庫県立人と自然の博物館)、大脇淳(桜美林大学)、木下豪太(国立遺伝学研究所)、内田葉子 (北海道立総合研究機構)、小山信芳(丸瀬布昆虫生態館)、喜田和孝(丸瀬布昆虫生態館)らの研究グループは、草原性絶滅危惧チョウ類で国内希少野生動植物指定種のアサマシジミ北海道亜種の保全に効果的な生息地管理方法を解明しました。本研究では、アサマシジミ北海道亜種の保全地がある陸上自衛隊遠軽駐屯地演習場において、本種の生活サイクル(卵・幼虫・さなぎ・成虫)の中でもエサを食べない段階(卵期・さなぎ期)に草刈りを実施しました(図1)。その結果、同保全地に生息するチョウの種数・個体数および開花植物の種数・花数にマイナスの影響を与えることなく、アサマシジミ北海道亜種の幼虫や成虫の個体数、および本種のエサ植物ナンテンハギの被度(単位面積あたりに占める割合)と花数を増加させる効果があることを明らかにしました(図2)。
本研究は、現在絶滅が危ぶまれているアサマシジミ北海道亜種や、その他の草原性生物の生息環境の維持・保全に貢献する重要な成果と言えます。また、自衛隊演習場が貴重な絶滅危惧種の生息場所として機能していることを示しています。本種は、遠軽町以外では防風林にも生息が確認されていますが、筆者らのこれまでの研究で、下草刈りが行われる若い林や林縁が、本種のエサ植物ナンテンハギにとって好適な環境であることがわかっています。そのため、本種の遠軽町以外の生息地や、その周辺の防風林、未知の生息地がある可能性の高い地域でも、今回の研究成果を応用した管理計画を立案することによって、本種の生息環境を保全しつつ、その他の草原性生物の生息環境を拡大・創出する効果が期待できます。
本研究の一連の調査は、NPO法人丸瀬布昆虫同好会・遠軽町教育委員会丸瀬布教育センター・陸上自衛隊遠軽駐屯地の協力を得て実施されました。
本研究は、北海道立総合研究機構、日本学術振興会科学研究費補助金(課題番号21H02221)、環境省・(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進(JPMEERF20224M02)、プロ・ナトゥーラ・ファンド第31期および第33期の助成を受けました。
本研究成果は、2024年3月28日(日本時間0時)に、国際科学誌「Journal of Insect Conservation」の電子版に掲載されました。
図1: 研究概要(アサマシジミ北海道亜種の生活サイクルを踏まえた草刈り時期と方法)
図2: 草刈りがアサマシジミ幼虫とエサ植物ナンテンハギの被度に与える効果(5月:左)、草刈りがアサマシジミ成虫・ナンテンハギ花数に与える効果(7月:右)。グラフ上のシンボルは統計的な有意差があることを示す(*:p < 0.05)
本州初記録のナンヨウテナガエビ(甲殻亜門:十脚目:テナガエビ科)の報告
皆川優作・福家悠介
水生動物 (2024) 2024, .AA2024-7 DOI:10.34394/aquaticanimals.2024.0_AA2024-7
ナンヨウテナガエビMacrobrachium ustulatumは西部太平洋に分布する淡水性の甲殻類です。日本において、本種は琉球列島の沖縄島から1個体が報告されているのみで、その分布や生息環境は謎に包まれています。今回、伊豆半島の小河川から本種の成体が得られました。この標本は典型的なナンヨウテナガエビの形態を示しませんでしたが、DNAバーコーディングによって本種であることが示されました。本報告は、ナンヨウテナガエビの北限記録であると同時に、標本に基づく日本からの2例目の記録であり、また本州における初記録でした。
図:今回得られたナンヨウテナガエビ。本種の雄個体は日本からは初めての発見となった。
プレスリリース
Genome assembly of Genji firefly (Nipponoluciola cruciata) reveals novel luciferase-like luminescent proteins without peroxisome targeting signal
Kentaro Fukuta, Dai-ichiro Kato, Juri Maeda, Atsuhiro Tsuruta, Hirobumi Suzuki, Yukio Nagano, Hisao Tsukamoto, Kazuki Niwa, Makoto Terauchi, Atsushi Toyoda, Asao Fujiyama and Hideki Noguchi
DNA Research (2024) 31, dsae006 DOI:10.1093/dnares/dsae006
日本固有種のゲンジボタルは生息地域によって発光周期が異なります。発光周期の違いの要因を明らかにするには、ゲンジホタルの発光に関連する遺伝子の情報が必要になります。しかしながら、ゲンジボタルの全ゲノム配列は解読されておらず、発光関連遺伝子の構造や特徴はわかっていませんでした。
鹿児島大学大学院理工学研究科の加藤太一郎准教授と情報・システム研究機構データサイエンス共同利用基盤施設の野口英樹特任教授の研究グループは、情報システム研究機構国立遺伝学研究所の藤山秋佐夫特命教授および豊田敦特任教授、東京ホタル会議の鈴木浩文博士、佐賀大学総合分析実験センターの永野幸生准教授、神戸大学大学院理学研究科の塚本寿夫准教授、産業技術総合研究所の丹羽一樹主任研究員らとの共同研究において、世界で初めてゲンジボタルの全ゲノム解読を達成し解析を行いました。
今回の解析で、ゲンジボタル体内には既知の発光酵素「ルシフェラーゼ」の他にも、微弱ながら発光活性を示し、ルシフェラーゼと構造の似た「ルシフェラーゼ様タンパク質」が複数存在していることを突き止めました。また、その他の発光関連遺伝子のゲノム構造やその遺伝的背景の一端も明らかにすることができました。
本成果によって、ホタルの発光周期制御の仕組みおよびゲンジボタルを含めたホタルの起源にも迫る事が期待できます。
本研究は、JSPS科学研究費基盤研究C (18K05320、26410185)、新学術領域研究ゲノム支援(221S0002)、およびデータサイエンス共同利用基盤施設公募型共同研究ROIS-DS-JOINT(001RP2019、008RP2021)によって支援されました。
本研究成果は、国際科学雑誌「DNA Research」に2024年3月18日(日本時間)に掲載されました。
図: 今回の研究で新たに見出した、発光器にて遺伝子が発現し、かつ既知のルシフェラーゼと相同性を示すルシフェラーゼ様タンパク質(LLp1〜4、LLa1〜3)と、既存のルシフェラーゼとの系統関係を示した図。既知のルシフェラーゼ (LUC1, LUC2)は緑文字で、新たに微弱ながら発光活性を示すことが分かったルシフェラーゼ様タンパク質(LLa2, LLp1, LLp2, LLp3)を赤文字で示している。緑枠と赤枠で囲まれたタンパク質は別々のクレード(2)に分類される。発光器での遺伝子発現量を模式的に表したものがTPMであり、それぞれのタンパク質がホタルルシフェラーゼ様モチーフ(Motif)やPTS1配列を持っている場合に黒丸を付けている。発光活性を示したLLa2はホタルルシフェラーゼ様モチーフを持ちながら、既知ルシフェラーゼと別のクレードに分類され、かつPTS1配列を持っていない新しいタイプの発光タンパク質であることが明らかとなった。
募集要項:PDF
職 種 | 管理部常勤職員(事務) |
募集人数 | 1~2名 |
採 用 日 | 令和6年7月1日(採用日は応相談) |
勤 務 地 | 静岡県三島市谷田1111 国立遺伝学研究所 |
職務内容 | 管理部職員として、以下の業務を行う。 ・研究所の管理部門にかかる業務(一般事務・労務管理・研究支援業務・会計業務など) |
応募条件 | ・Windowsパソコンの基本操作及び、Microsoft Officeの各アプリケーション(主にワード、エクセル)を用いた文書や資料作成のできる方。 ・協調性があり、積極的に業務に取り組む意欲があること。 ・大学や官公庁、企業等において同等の業務経験がある方を優遇。 |
就 業 日 | 週5日勤務(月曜日~金曜日) 土、日、祝祭日、年末年始(12月29日~1月3日)は休日 時間外勤務、土・日、祝祭日に勤務を命ずる場合があります。 |
就業時間 | フレックスタイム制 (一日の所定労働時間は7時間45分) |
賃金形態 | 月給制 例:大卒の場合 196,200円~ (学歴・経験によって増減あり) 賞与(年2回)、住居・通勤・扶養・退職 各手当は条件付き 文部科学省共済組合、労災保険及び雇用保険に加入 |
就業規則 | 勤務条件の詳細については、「情報・システム研究機構職員就業規則」を参照してください。 |
応募方法 | 1.履歴書(写真貼付) 2.職務経歴書及び自己アピール等(書式自由、A4判1~2枚) ・パソコン使用経験と運用能力に関する説明 (使用できるアプリケーションおよび習熟度について) ・その他職務経歴書等から見た自己アピールなど 以上の書類を、封筒に「事務職員応募」と朱書きの上、下記宛に郵送下さい。 |
応募期限 | 令和6年4月22日まで ただし、候補者が決定した時点で締め切ります。 |
選考方法 | 第一次選考 書類選考 第二次選考 面接試験 最 終 選 考 面接試験(機構本部(神谷町)にて実施) ※面接の際の交通費は自己負担となります。 |
そ の 他 | ・車通勤可 ・提出いただいた書類は、本公募の採用審査及び採用後の雇用管理のためのみ使用し、正当 な理由無く第三者に開示、譲渡及び貸与することはありません。選考終了後は、採用された 方の情報を除き、すべての個人情報は責任を持って破棄します。 なお、応募書類は返却いたしかねますので、ご了承ください。 ・受動喫煙防止対策:屋内禁煙(屋外喫煙場所あり) ・東京都、静岡県内で異動の可能性があります。 |
雇 用 者 | 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 機構長 喜連川 優 |
連 絡 先 郵 送 先 | 〒411-8540 三島市谷田1111 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 管理部 総務企画課 人事・労務係 TEL 055-981-6716 FAX 055-981-6715 |
プレスリリース
Academic publishing requires linguistically inclusive policies
Henry Arenas-Castro, Violeta Berdejo-Espinola, Shawan Chowdhury, Argelia Rodríguez-Contreras, Aubrie R. M. James, Nussaïbah B. Raja, Emma M. Dunne, Sandro Bertolino, Nayara Braga Emidio, Chantelle M. Derez, Szymon M. Drobniak, Graham R. Fulton, L. Francisco Henao-Diaz, Avneet Kaur, Catherine J. S. Kim, Malgorzata Lagisz, Iliana Medina, Peter Mikula, Vikram P. Narayan, Christopher J. O’Bryan, Rachel Rui Ying Oh, Ekaterina Ovsyanikova, Katharina-Victoria Pérez-Hämmerle, Patrice Pottier, Jennifer Sarah Powers, Astrid J. Rodriguez-Acevedo, Andes Hamuraby Rozak, Pedro H. A. Sena, Nicola J. Sockhill, Anazélia M. Tedesco, Francisco Tiapa-Blanco, Jo-Szu Tsai, Jaramar Villarreal-Rosas, Susana M. Wadgymar, Masato Yamamichi, Tatsuya Amano
Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences (2024)291, 20232840 DOI:10.1098/rspb.2023.2840
科学研究はさまざまな言語で行われている一方で、その研究の成果は主に英語の論文として学術誌に出版されます。このように英語で論文を出版する慣習は、さまざまな言語的背景を持つ人々の間で知識を伝える際の「言語障壁」を作り出すことになります。この言語障壁を克服して科学的知識を共有することは、人類社会が地球規模の課題に対処する上での大きな課題です。
そこで本研究では、生物学の736の学術誌の言語に関する慣習と方針を調べることで、言語障壁を克服する取り組みを評価し、取り組みと相関する要素を特定しました。その結果、ほとんどの学術誌が言語障壁を克服するために最小限の努力しか行なっていないという厳しい状況が明らかになりました。学術誌のインパクトファクターが高いほど言語障壁を克服することにあまり熱心ではありませんでした。一方で、学会が発行している学術誌では言語障壁を克服することに熱心でした。また、予想に反して、学術誌の編集者の言語の多様性とオープンアクセス論文の割合は、言語障壁を克服する取り組みと大きな関連がありませんでした。
これらの結果を踏まえて、論文出版において言語障壁を克服し、英語能力が限られている研究者やコミュニティを支援するための一連の提案を行いました。
本研究は、豪州クイーンズランド大学の研究者を中心とした国際的な研究体制で行われました。
本研究成果は、国際科学雑誌「Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences」に2024年3月13日(日本時間)に掲載されました。
図: 著者ガイドライン(円の上側)と編集長への調査(円の下側)によって明らかになった言語についての学術誌の方針と、それらと正の相関(上向き矢印)または負の相関(下向き矢印)を示す要因。論文の図1より改変。
プレスリリース
Chromosomal DNA sequences of the Pacific saury genome: versatile resources for fishery science and comparative biology
Mana Sato, Kazuya Fukuda, Mitsutaka Kadota, Hatsune Makino-Itou, Kaori Tatsumi, Shinya Yamauchi, Shigehiro Kuraku
DNA Research 2024 March 07 DOI:10.1093/dnares/dsae004
「秋の味覚」として日本人に古くから親しまれてきたサンマは、近年、漁獲量が減少し、価格が高騰したことで大きな話題となりました。これまで、サンマは漁獲量が比較的安定しており、魚価も安かったことから、養殖技術は確立されてきませんでした。このような背景から、身近な魚であるにもかかわらず、サンマの生物学的研究はあまりなされていませんでした。さらに、分子生物学研究の基本となる全ゲノム配列などDNA情報が整備されていなかったことも、サンマについての研究が進んでいない大きな要因です。
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所分子生命史研究室の工樂樹洋教授(理化学研究所生命機能科学研究センター客員研究員)、北里大学の福田和也助教、理化学研究所生命機能科学研究センターの門田満隆技師、アクアマリンふくしまの山内信弥上席技師らからなる研究チームは、サンマの全ゲノム情報を読み取り、多様な分子生物学研究のための情報基盤を整えました。
本研究では、世界で唯一サンマの継代飼育および展示を成功させた水族館であるアクアマリンふくしまにて陸上水槽内で人工ふ化し養成したサンマ成魚を用いました。まず、一分子リアルタイム(SMRT)塩基読み取り技術(1)による高精度な長鎖配列(ロングリード)解析により、このサンマのDNA断片情報を取得しました。そして、染色体立体配座捕捉法(Hi-C)(2)により、数千万塩基にもなる染色体のDNA配列を再構築しました。今後、他生物と配列を比較することで、サンマの分子生物学的特徴が明らかになると期待されます。
2022年5月に着手した本研究は、高い専門性をもつ技術者や研究者が、分野横断的に協力することで、短期間で成果を出すことができました。近年の漁獲量減少と価格高騰により大きな注目を浴びているサンマについて、その学術研究を速やかに推進するために、研究論文の発表に先立って、得られたゲノム情報はすでにインターネット上で広く公開しています。これに付随した論文は、日本で育まれてきた国際学術雑誌「DNA Research」に 2024 年3月7日(日本時間)に掲載されました。
本研究は、情報システム研究機構の「戦略的研究プロジェクト(日本を象徴する重要生物種の分子研究と保全を加速させる生命情報基盤の構築)」の支援を受けて行われました。
図: 公開されているサンマの全ゲノム情報
A. サンマの遺伝子配列検索用ウェブサイト。国立遺伝学研究所分子生命史研究室において運営している。
B. サンマの第1番染色体の中ほどの領域。NCBIにおいて近年整備されたビューワーGenome Data Viewerを通して、ゲノム配列上の遺伝子構造やGC含量や反復配列の構成、そして転写産物の組織ごとの量などを総覧することが可能である。
【業務内容】 | マウス飼育施設作業員 [マウス飼育器材洗浄、滅菌作業等] |
【応募資格】 | 防疫の為ウサギ、ネズミ、ハムスターをペットにされている方はご遠慮下さい。 |
【給与】 | 時給 1,013円~1,300円(経歴による) |
【勤務時間】 | (月~金) 9:00~12:00 ※1日3時間程度 |
【休日】 | 土・日・祝日 |
【待遇】 | 通勤手当(条件による) |
【応募】 | まずは、履歴書(写真貼付)を郵送してください。 順次、書類選考の上、追って面接日をご連絡します。 |
【応募締め切り】 | 採用者が決まり次第応募を締め切ります。 |
【その他】 | 採用人数:1名 勤務開始:令和6年4月~ 未経験者歓迎します。男性活躍中です。 |
【問合先・提出先】〒411-8540 静岡県三島市谷田1111
国立遺伝学研究所 動物飼育実験施設(事務担当/室伏)