専攻長のメッセージ

科学者を目指す大学生・高校生の皆さんへ、専攻長からのメッセージ

KATSURA, Isao

遺伝研の大学院(総合研究大学院大学遺伝学専攻)では、本物の科学者を育てたいと思っています。そこで、科学に興味をもつ皆さんに、科学者とは何か、科学者を育成する大学院教育とはどんなものかを説明したいと思います。

科学者とは、自然界の謎を解いて人類の知性を豊かにする人です。もともと科学は自然哲学と呼ばれ、自然に対する好奇心から生まれました。その後、科学の成果が人間生活を豊かにすることがわかり、科学者は社会の中で研究と教育という役割を与えられました。

科学者を志す動機は、物事の原因を知りたい、自然の素晴らしさに感動した、科学の本が好き、先生に勧められたなど、様々です。志望のきっかけは素朴な興味でも、大学院に入ると科学への理解が深まって科学がますます好きになり、研究での失敗や成功の体験を通して一人前の科学者になって行きます。

科学者の仕事は楽しいとも、苦しいとも言えます。苦しさは科学の最先端を創る苦悩、楽しさは研究に集中する時の静かな幸福や、多くの失敗を越えて成功した時の喜びによるものです。

女子学生の皆さんも科学者になることを考えてみてはいかがでしょうか。女性科学者はまだ少数派ですが、科学者としての総合能力に男女差はありません。女性が科学者を志すことで、科学が大きく進歩することが期待できます。

科学者の主な就職先は、現在は大学、研究所、企業の研究部門です。しかし、世界には数多くの困難や問題があり、その解決に科学者が必要とされています。そのためには、従来の就職先に加えて、新しい仕事場を開拓することが必要かもしれません。社会との関係は、科学者が生き甲斐をもち幸福な人生を送るために重要な要素の一つです。

大学の学部の教育では既存の知識や理論を学びますが、大学院では自分の研究テーマを持って実際に研究を行い、新しい発見をして論文を書くことにより、一人前の科学者としての能力を身につけます。大学院での教員の主な仕事は、個人指導や演習などを通して学生の能力を引き出し、研究のやり方を身に付けさせることです。

また、大学院教育で重要なのは、学生が育つ環境を作ることです。落ち着いてじっくりと研究に取り組めるだけでなく、周囲に優秀な研究者がいて刺激を受ける環境が重要です。これに対し、大学院生は積極的に学会や研究会に参加し、自分の考えを育てて研究を進めることが求められます。

以上、科学者とその教育について、大学生・高校生向けに説明をしましたが、皆さんの助けになったでしょうか。遺伝学専攻の具体的な教育方針とデータについては、ホームページに説明があるので、興味のある方は御覧になって下さい。 遺伝学・生命科学の面白さについては、各研究室のホームページや、次の本などを参考にして下さい。

国立遺伝学研究所・編 「遺伝子が語る生命38億年の謎 — なぜ、ゾウはネズミより長生きか?」 悠書館 2014年


総合研究大学大学院生命科学研究科遺伝学専攻 専攻長 桂 勲