取り除けば働きがわかる!~特定のヒト細胞内タンパク質を素早く取り除いて機能を探る方法を開発~

Press Release

Rapid protein depletion in human cells by auxin-inducible degron tagging with short homology donors

Toyoaki Natsume, Tomomi Kiyomitsu, Yumiko Saga, and Masato T. Kanemaki

Cell Reports DOI:10.1016/j.celrep.2016.03.001

プレスリリース資料

国立遺伝学研究所 分子機能研究室の鐘巻将人准教授らのグループは、「ヒト培養細胞」で特定のタンパク質を素早く分解除去する方法を開発しました。これまでモデル生物でしかできなかった精緻な遺伝学研究が、ヒト細胞でもできるようになる画期的な手法です。

利用したのは、同グループが2009年に開発した「AID法」というタンパク質分解除去システムです。これは、動物細胞の特定のタンパク質を分解除去し、そのタンパク質を司る遺伝子の役割を解析できるシステムです。このシステムをヒト細胞にも導入できるよう、ゲノム編集技術を応用し、ヒト細胞内のタンパク質の分解除去を自在に操ることに成功しました。

今回開発した手法を使うと、これまで数日を要していたタンパク質の分解除去が、1時間程度で行えるようになり、細胞分裂や増殖などの、細胞の基本現象に与える影響を直接観察することが可能になります。また新技術では、分解除去のタイミングも任意に設定できるため、今までの技術では解明が難しかった、生存に不可欠な「必須遺伝子」の機能解析ができるようになります。本技術により今後がん細胞を含めた、ヒト細胞が増殖するための仕組みの解明が大いに進むことが期待されます。

本研究成果は、平成28年3月24日(米国東部時間)に米国科学誌Cell Reportsオンライン版に掲載されました。

本研究は、清光智美助教(名古屋大学)、相賀裕美子教授(遺伝研)との共同研究成果です。本研究の遂行にあたり、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業個人型研究(さきがけ)(鐘巻、清光)、遺伝研共同利用研究費(清光、2014-B, 2015-A1)および科研費による支援を受けました。本研究で作成した研究材料は全てナショナルバイオリソースから配布し、世界中の研究者が利用できます。

Figure1

(A)CRISPR/Casゲノム編集を利用したタグ付加とオーキシンデグロンの作用機序を示したモデル図。
(B)オーキシン添加前後の核に局在するコヒーシンタンパク質の発現を蛍光法により観察した結果、添加90分後の細胞では、コヒーシンタンパク質が消失した。