所長挨拶

DNAの二重らせん構造の発見は、遺伝学を物理学や化学も包含する自然科学全体の基礎となる学問にまで発展させました。さらには遺伝子組換え動植物の作成、DNAシーケンサー、そしてゲノム編集と急速な技術の発展・応用に伴い、遺伝学は人文・社会科学分野へも多大な影響を与える研究領域へと変貌を遂げつつあります。

国立遺伝学研究所は遺伝学に関する基礎的研究とその指導・促進を図ることを目的として1949年に文部省の研究所として発足しました。その歴史は生命科学の爆発的な発展と重なり、分子進化の中立説、mRNAのキャップ構造の発見、DNA複製起点の同定など、数々の優れた研究業績を挙げてきました。また1984年には大学共同利用機関として学術コミュニティー全体の研究を促進する役割を担いつつ、1988年には新たに設置された総合研究大学院大学(総研大)で生命科学研究科遺伝学専攻を担当し、独自の大学院教育を行うようになりました。2023年度からは総研大が組織改革を行いますが、これについては「コース長の挨拶」の項をご参照ください。2004年には大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構の一員として法人化され、国立情報学研究所、国立極地研究所、統計数理研究所とともに「情報」と「システム」という視点から、人類の将来的な課題にも取り組んでおります。

現在、遺伝研では約400人の様々な職種の人たちが遺伝学の先端的研究、遺伝資源の保存と利用、遺伝情報データベースの整備と利用、遺伝学を基盤とした高度な教育と人材育成などに日々励んでおります。研究に関しては、大腸菌からイネ、マウス、ヒトに至る様々な生物を対象に、遺伝学に関する独創的な研究を推進し、世界的にも高く評価されています。研究基盤整備では、DNAデータバンク(DDBJ)、実験生物系統の分与、先端ゲノミクス推進事業などによって学術コミュニティーに貢献しています。また教育・人材育成では学生数に対する教員数の多さを活かした大学院教育を行うとともに、有望な若手研究者に新しい分野を開拓させるための将来を見据えた体制を構築しております。

研究所の果たすべき役割は、当該研究分野を発展させ、その成果を世界中の人々と分かち合い、得られた知識の社会還元を目指して努力することにあります。生命科学には無数の謎が残されており、遺伝研は世界中の研究者たちと切磋琢磨し、あるいは協力しつつそれらの謎を解き、人類の幸福に貢献していきます。その一例が2019年以降、世界中で人類を苦しめている新型コロナウイルスを克服する戦いと言えるでしょう。皆さまの一層のご理解とご協力、そしてご支援をお願い申し上げます。

国立遺伝学研究所長 花岡 文雄 

国立遺伝学研究所長 花岡 文雄

DNAの二重らせん構造の発見は、遺伝学を物理学や化学も包含する自然科学全体の基礎となる学問にまで発展させました。さらには遺伝子組換え動植物の作成、DNAシーケンサー、そしてゲノム編集と急速な技術の発展・応用に伴い、遺伝学は人文・社会科学分野へも多大な影響を与える研究領域へと変貌を遂げつつあります。

国立遺伝学研究所は遺伝学に関する基礎的研究とその指導・促進を図ることを目的として1949年に文部省の研究所として発足しました。その歴史は生命科学の爆発的な発展と重なり、分子進化の中立説、mRNAのキャップ構造の発見、DNA複製起点の同定など、数々の優れた研究業績を挙げてきました。また1984年には大学共同利用機関として学術コミュニティー全体の研究を促進する役割を担いつつ、1988年には新たに設置された総合研究大学院大学(総研大)で生命科学研究科遺伝学専攻を担当し、独自の大学院教育を行うようになりました。2023年度からは総研大が組織改革を行いますが、これについては「コース長の挨拶」の項をご参照ください。2004年には大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構の一員として法人化され、国立情報学研究所、国立極地研究所、統計数理研究所とともに「情報」と「システム」という視点から、人類の将来的な課題にも取り組んでおります。

現在、遺伝研では約400人の様々な職種の人たちが遺伝学の先端的研究、遺伝資源の保存と利用、遺伝情報データベースの整備と利用、遺伝学を基盤とした高度な教育と人材育成などに日々励んでおります。研究に関しては、大腸菌からイネ、マウス、ヒトに至る様々な生物を対象に、遺伝学に関する独創的な研究を推進し、世界的にも高く評価されています。研究基盤整備では、DNAデータバンク(DDBJ)、実験生物系統の分与、先端ゲノミクス推進事業などによって学術コミュニティーに貢献しています。また教育・人材育成では学生数に対する教員数の多さを活かした大学院教育を行うとともに、有望な若手研究者に新しい分野を開拓させるための将来を見据えた体制を構築しております。

研究所の果たすべき役割は、当該研究分野を発展させ、その成果を世界中の人々と分かち合い、得られた知識の社会還元を目指して努力することにあります。生命科学には無数の謎が残されており、遺伝研は世界中の研究者たちと切磋琢磨し、あるいは協力しつつそれらの謎を解き、人類の幸福に貢献していきます。その一例が2019年以降、世界中で人類を苦しめている新型コロナウイルスを克服する戦いと言えるでしょう。皆さまの一層のご理解とご協力、そしてご支援をお願い申し上げます。

国立遺伝学研究所長 花岡 文雄


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