Single-nucleosome imaging unveils that condensins and nucleosome-nucleosome interactions differentially constrain chromatin to organize mitotic chromosomes.
Kayo Hibino, Yuji Sakai, Sachiko Tamura, Masatoshi Takagi, Katsuhiko Minami, Masa A. Shimazoe, Toyoaki Natsume, Masato T. Kanemaki, Naoko Imamoto, Kazuhiro Maeshima*
*責任著者
Nature Communications (2024) 15, 7152 DOI:10.1038/s41467-024-51454-y
細胞が分裂するためには、複製された長いゲノムDNAが分裂期染色体として凝縮し、それが2つの娘細胞に正確に分配される必要があります。これにはコンデンシンというタンパク質が重要な役割を果たすと考えられていますが、コンデンシンがどのようにしてゲノムDNAに働き、染色体を凝縮させるのかは不明でした。このたび、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 日比野佳代 助教、田村佐知子 テクニカルスタッフ、南克彦 大学院生、島添將誠 大学院生、前島一博 教授のグループ、夏目豊彰 助教、鐘巻将人 教授のグループは、横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科 境祐二 特任准教授、理化学研究所 高木昌俊 専任研究員、今本尚子 主任研究員のグループと共同で、分裂するヒト細胞の染色体内をナノメートルレベルで可視化できる超解像蛍光顕微鏡を用い、ゲノムDNAの動きを観察・解析しました。
その結果、高度に凝縮した分裂期染色体においても、ゲノムDNAが揺らいでいることを発見しました。そして染色体が凝縮する過程で、DNAの揺らぎが次第に抑えられ、コンデンシンが「クリップ」のようにDNA同士を結びつけ、DNAの揺らぎを抑えていることが分かりました。また、DNAがヒストンというタンパク質に巻きついた構造であるヌクレオソーム同士の相互作用も、染色体全体を凝縮させる役割を果たすことが明らかとなりました。これらの実験結果は、計算機シミュレーションで作られたモデル染色体でも再現できました。今回の発見は、細胞が分裂する際、長いゲノムDNAから染色体がどのように作られるかを解明するものです。細胞分裂の異常に関連する「がん」などの疾患の理解・治療につながることが期待されます。
本研究成果は、国立遺伝学研究所・ゲノムダイナミクス研究室の日比野佳代 助教(JST さきがけ研究 員)、田村佐知子 テクニカルスタッフ、南克彦 総研大大学院生(元 SOKENDAI 特別研究員、現 学振特別研 究員 DC2)、島添將誠 総研大大学院生(学振特別研究員 DC1)、前島一博 教授 、分子細胞工学研究室・夏 目豊彰 助教(現 東京都医学総合研究所 研究員)、鐘巻将人 教授、横浜市立大 境祐二 特任准教授、 理化学研究所・の高木昌俊 専任研究員、今本尚子 主任研究員(現 滋慶医療科学大学大学院教授)との 共同研究成果です。
本研究は、日本学術振興会(JSPS) 科研費(JP20K06482, JP21H02453, JP23K17398, JP24H00061, JP23KJ0998, JP20K06594, JP21H0419, JP23H04925)、学術変革領域 A「ゲノムモダリティ」 (JP20H05936)、科学技術振興機構(JST) PRESTO (JPMJPR21ED)、CREST (JPMJCR21E6)、 JST 次世 代研究者挑戦的研究プログラム(JPMJSP2104)、武田科学振興財団の支援を受けました。
本研究は、2024年8月21日に「Nature Communications」にオープンアクセスとしてオンライン掲載されました。