2013/02/01

脳に写される視覚世界をカルシウムセンサーGCaMPでリアルタイム可視化

Press Release

Real-Time Visualization of Neuronal Activity during Perception

Akira Muto, Masamichi Ohkura, Gembu Abe, Junichi Nakai and Koichi Kawakami
Current Biology, 23(4), Feb 18, 2013. DOI: 10.1016/j.cub.2012.12.040

プレスリリース資料

私たちの目に見える世界は、網膜に映った後さらに脳へとその情報が伝えられます。視覚を司る脳の領域では、視野全体に対応するように神経細胞が並んでおり、これは「視覚地図」と呼ばれます。このような脳の構築様式はヒトや魚など視覚を持つ全ての動物に共通する特徴です。しかしながら、視野全体が脳の視野地図へと写されている様子を、神経活動としてリアルタイムに自然な条件下で捉えた例はこれまでありませんでした。私たちは、改良を加えて非常に高感度にしたカルシウムセンサーGCaMPを用いることにより、ゼブラフィッシュ稚魚の餌となるゾウリムシが、稚魚の視界の中で泳ぎ回るときの視覚地図上の神経活動を画像可視化することに成功しました。今回の研究は、視覚から入る情報に基づいて動物が行動するとき、脳内の認知プロセスでどのような神経活動が生じているのかを明らかにしていくための端緒になります。

本研究成果は、埼玉大学中井淳一教授らのグループと遺伝学研究所川上浩一教授らのグループとの共同研究によるものです。

Figure1

ゼブラフィッシュ稚魚の周囲を餌であるゾウリムシ(太矢印)が泳ぎまわると、その動きは眼球の網膜上に投影され、さらに視神経の興奮を経て脳内に伝達され、脳(中脳視蓋)の神経細胞を興奮させます。その様子が、カルシウム蛍光指示薬GCaMPを用いたイメージングによりリアルタイムで蛍光シグナルとして観察されました。スケールバーは100ミクロン。


▶本技術は以下の研究成果の基盤の一つになっています。
仮想現実世界を「遊泳する」ゼブラフィッシュ
満腹と空腹が食欲をコントロールするメカニズム
魚で見つかったレム睡眠とノンレム睡眠
ゼブラフィッシュ研究からわかった「てんかん発作」の新しい仕組み ―てんかん発作へのグリア細胞ネットワークの関与―
見たらつい食べたくなるのは本能だった~視覚情報を摂食行動に結びつける神経回路の発見~


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