Press release
A virtual reality system to analyze neural activity and behavior in adult zebrafish
Kuo-Hua Huang, Peter Rupprecht, Thomas Frank, Koichi Kawakami, Tewis Bouwmeester and Rainer W. Friedrich
Nature methods 02 March 2020 DOI:10.1038/s41592-020-0759-2
ゼブラフィッシュは脊椎動物の行動と脳の働きの関係を調べるのに適したモデル動物です。この特長を生かして、生きているゼブラフィッシュの稚魚を用いて脳の働きを調べる研究が、これまでさかんに行われてきました。一方、ゼブラフィッシュの「成魚」は稚魚よりもはるかに複雑な行動をしますが、成魚で行動と脳の働きの関係を調べることはできませんでした。
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所とフリードリッヒミーシャ生物医学研究所(スイス)の共同研究グループは、ゼブラフィッシュの成魚にビデオを見せて、バーチャルリアリティ(仮想現実)世界を「泳がせる」ことで、行動と脳の働きの関係を調べる研究を実現しました。仮想現実空間を「遊泳中」のゼブラフィッシュ成魚の脳の活動をカルシウムイメージング法により解析することに成功したのです。この解析システムを用いて、ゼブラフィッシュに遊泳行動の方向と逆方向に動く映像のビデオを見せることで、「撹乱(予想外の出来事)」に反応する神経細胞を突き止めました。
本成果は、記憶・学習などの複雑な行動や自閉症および認知症などの脳機能に関係する脳神経回路のはたらきを研究する基盤となることが期待できます。
本研究は、国立遺伝学研究所とフリードリッヒミーシャ生物医学研究所(スイス)の共同研究として行われました。またこの研究は部分的にNBRPおよびNBRP基盤技術整備プログラムに支援されています。
本研究成果は、英国科学雑誌「Nature methods」に2020年3月3日午前1時(日本時間)に掲載されました。
図: ゼブラフィッシュのバーチャルリアリティ(仮想現実)システム
A: ゼブラフィッシュの頭蓋骨を固定する様子
B: 仮想現実をビデオ投影する装置
C: 投影したビデオ画像
D: ゼブラフィッシュに見えている仮想現実世界
(二つのトンネルのある風景)