プレスリリース
野々村研究室・植物細胞遺伝研究室
技術課 / 細胞建築研究室
Heat-shock inducible clonal analysis reveals the stepwise establishment of cell fates in the rice stem
Katsutoshi Tsuda, Akiteru Maeno, and Ken-Ichi Nonomura
Plant Cell 2023 Sep 27 DOI:10.1093/plcell/koad241
節と節間からなる「茎」は、種子植物一般に見られる地上部の軸構造で、隣接する葉と腋芽と共に茎頂分裂組織から生み出されます。茎は育種において草丈調節の最重要ターゲットになっているにもかかわらず、茎の発生過程の理解は、葉・根・花などの他の主要器官と比べて大きく遅れていました。
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の津田勝利 助教、前野哲輝 技術専門職員、野々村賢一 准教授らは、多角的な解析手法を用いてイネの茎の構造と発生過程を詳細に調べました。さらに、遺伝子工学の手法を用いて、葉・茎・腋芽を一単位とするファイトマーを構成する細胞の各器官への運命決定がどのように起こるのかを解析しました。その結果、「発生に先立つファイトマーの確立」→「節になる細胞の出現とそれに伴う葉と茎の運命分岐」→「腋芽の運命確立」→「最後に節間への運命決定がごく少数の細胞で起こる」という、段階的なステップを経て茎の発生が進むことがわかりました。
本研究は、長らく不明であった茎の発生において鍵となるイベントとその時系列を明らかにしました。今後、本成果が茎の発生を分子レベルで理解するための基盤となり、将来的には理想的な草型設計に向けた茎形質の改良につながることが期待されます。
この研究は、新学術領域研究「植物多能性幹細胞」(18H04845・20H04891)、学術変革領域(A)「挑戦的両性花原理」(23H04754)、および科研費(22H02319・21H04729)の支援を受けておこなわれました。
本研究成果は、国際科学雑誌「Plant Cell」に2023年9月28日(日本時間)に掲載されました。