プレスリリース
Transcription near arrested DNA replication forks triggers ribosomal DNA copy number changes
Mariko Sasaki *¶ and Takehiko Kobayashi *
*: 責任著者 ¶: 代表著者
Nucleic Acids Research (2025) 53, gkaf014, DOI:10.1093/nar/gkaf014
国立遺伝学研究所の佐々木真理子准教授と東京大学の小林武彦教授の研究グループは、細胞内で染色体から切り離された「染色体外環状DNA」が形成されるメカニズムを解明しました。環状DNAは、がん細胞においてがんの発症や進行に関与することが知られていますが、その形成メカニズムは長年の謎でした。
研究グループは、この謎を解明するため、ヒトのモデル生物である出芽酵母のサーチュインタンパク質Sir2に着目し、このタンパク質が欠損した際の反応メカニズムを解析しました。その結果、DNAの設計図を読み取る「転写」と、DNAをコピーする「複製」という2つの重要な細胞内プロセスが衝突してしまい、遺伝子を含んだ環状DNAが生まれることを発見しました。つまり、Sir2タンパク質が転写と複製の衝突を防ぐことで、環状DNAの生成を抑制していることを明らかにしました。この発見は、がん細胞で見られる環状DNAの生成メカニズムの理解につながる重要な成果です。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(JPMJFR214P)、同 戦略的創造研究推進事業CREST(JPMJCR19S3)、日本学術振興会(JSPS) 科研費(21H04761、20H05382、18H04709、17H01443)、日本医療研究開発機構AMED (JP21gm1110010)、上原記念生命科学財団、内藤記念科学振興財団、武田科学振興財団により支援されました。
本研究成果は、国際科学雑誌「Nucleic Acids Research」に2025年1月29日(日本時間)に掲載されました。
図: (左)野生型では、リボソームRNA遺伝子領域の転写をSir2タンパク質が抑えているため、複製装置と転写装置の衝突が起こりません。よって、DNA二本鎖切断損傷が起きても正確に直され、DNAの構造は維持されます。
(右)Sir2タンパク質が欠損した細胞では、転写が活発に起こるようになり、転写装置と複製装置が衝突し、DNA二本鎖切断損傷が相同組換え経路によって修復されます。この衝突がリボソームRNA遺伝子などの繰り返し配列で起きると、相同組換えによって環状DNAが作られることがわかりました。
植物細胞遺伝研究室に在籍し、2023年9月に総研大遺伝学専攻で博士号を取得した、Harsha Somasheker さんの博士論文が、植物の国際学術雑誌 Plants が主催する Best PhD Thesis Award 2024を受賞しました。
・受賞博士論文タイトル: GLUCAN SYNTHASE-LIKE5 Promotes Anther Callose Deposition to Maintain Timely Initiation and Progression of Meiosis in Rice (Oryza sativa L.)
賞状
ゲノムダイナミクス研究室の島添將誠さん(総研大遺伝学コースD3)が、2025年1月16日-17日に山梨で開催された2024年度生命科学リトリートでポスター発表をおこない、ポスター賞を受賞しました。
・受賞発表タイトル: Linker histone H1 functions as a liquid-like glue to organize chromatin in living human cells
島添將誠さん
分子生命史研究室では研究補佐員を若干名募集します。
【採用時期】 | 適任者が見つかれば随時 |
【職務内容】 | 脊椎動物の培養細胞を用いた分子生物学実験・クローニングなどの基本的な分子生物学実験の補助、試薬調製や実験器具の洗浄などの補佐、解析補佐など |
【募集人数】 | 若干名 |
【勤務地】 | 静岡県三島市谷田1111 国立遺伝学研究所 分子生命史研究室(変更の予定なし) |
【応募資格】 | 分子生物学実験技術に習熟、あるいは短時間で習得できる人。分子生物学・生化学などの実験経験あるいはインフォマティクス解析のいずれかの経験があることが望ましい。 |
【給与・待遇】 | 遺伝研の規定に準ずる。 詳細については、「情報・システム研究機構 短時間雇用職員就業規則」をご参照ください。 |
【勤務時間】 | 週2~4日(応相談)(昼休憩1時間、週24時間以内)を基本とし、個々人の事情なども考慮した上で応相談 |
【休日】 | 土・日・祝日、夏季休暇、年末年始 |
【雇用期間】 | 試用期間有り(採用開始後1ヶ月間)、年度契約、様々な状況や評価に基づき2027年3月まで更新可 |
【応募方法】 | 履歴書 (メールアドレス明記) 及び、これまでの職務経験 (実験経験・業務内容等) を下記へメールで送付してください。メールの件名に「技術補佐員応募」と明記してください。書類選考通過者のみ面談を行い、採用を決定いたします。面談日程についてはメールでご連絡いたします。 |
【応募期間】 | 随時。適任者が見つかり次第締め切ります。 |
【備考】 | 提出いただきました応募書類は、情報・システム研究機構個人情報保護規定に則り厳重に管理され、選考および採用の目的にのみ使用されます。また、応募書類は返却いたしませんので、ご了承ください。 |
【問合先・提出先】 | 国立遺伝学研究所 分子生命史研究室(工樂研) 川口 茜 Eメール: |
近藤滋所長が、現象数理学三村賞 を受賞し、2025年1月11日に明治大学中野キャンパスにて行われた授賞式・記念講演会において講演をいたしました。
「分子生物学と実験・シミュレーションを駆使して生物の形づくりの原理を解明するのみならず、これまでにない発想で新たな数理モデルを創出し数理科学を専門とする研究者との多くのシナジーを生み出していること」を高く評価されたものです。
・受賞講演タイトル: 生き物の形を作る波
・現象数理学三村賞ページ
記念講演をする近藤所長
■日 時:2025年2月6日(木)~7日(金)
■会 場:Zoomウェビナー ※現地開催はございません。
■想定スキルレベル:情報解析中級者
■定員:200名
■参加費用:無料
■申し込み〆切:2025年1月31日(金)
申込方法・スケジュール等、詳細につきましては以下のURLをご覧ください。
https://www.genome-sci.jp/bioinformatic#1