2024/04/04

遺伝的に均質なゼブラフィッシュ近交系の樹立
~遺伝研発の新しいゼブラフィッシュバイオリソース~

※M-AB系統28代目の成魚の写真

Establishment of a zebrafish inbred strain, M-AB, capable of regular breeding and genetic manipulation

Kenichiro Sadamitsu, Fabien Velilla, Minori Shinya, Makoto Kashima, Yukiko Imai, Toshihiro Kawasaki, Kenta Watai, Miho Hosaka, Hiromi Hirata and Noriyoshi Sakai.

Scientific Reports (2024) 14, 7455 DOI:10.1038/s41598-024-57699-3

プレスリリース資料

ゼブラフィッシュは広く世界中で使われている脊椎動物のモデル生物ですが、子供の性比がオスメス1:1にならないことや近交弱勢の現象がみられることから、遺伝的に均質な近交系は開発されていませんでした。国立遺伝学研究所の酒井研究グループはこれまでに、野生型IND系統を16世代まで兄妹交配してIM系統を樹立し、ゼブラフィッシュで継続的な兄妹交配が可能なことを見出していました。しかしながら、この系統は子供が少なく寿命が短いため、研究に使いやすい近交系を樹立できるかが課題でした。

本研究では、IM系統を引き続いて兄妹交配を行い、20世代を超えて近交系として樹立するとともに、別の野生型*AB系統に着目し、その系統で兄妹交配を行い、あらたに近交系「Mishima-AB (M-AB) 」系統を樹立しました。

ゲノムシーケンスの結果、M-AB系統において相同塩基配列が異なっている率は 0.011%で、M-AB系統は十分に遺伝的に均質であることが分かりました。さらに、M-AB系統は多産で丈夫な卵を産み、受精卵への遺伝子改変操作ができることも分かりました。

M-AB系統を用いることで、行動や薬物反応等の多数の遺伝子がかかわる形質について高い精度の解析が可能となりました。

本成果は情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の酒井研究グループと青山学院大学の平田研究グループの共同研究によって行われました。

近交系の樹立は遺伝研の基盤研究費と研究プロジェクト支援、科研費 (19700372, 21KK0129, 21K06159) の支援を受けて遺伝研酒井研究グループで行い、ゲノム解析は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)(21ek0109484s1102, 22ek0109484h0003, 22mk0101223h0601, 23mk0101223h0602)、科研費(19H03329)、日本化学工業協会、内藤記念科学振興財団、武田科学振興財団の支援を受けて青山学院大平田研究グループで行いました。

本研究成果は、国際科学雑誌「Scientific Reports」に2024年3月30日(日本時間)に掲載されました。

図: M-AB系統の兄妹交配の系図


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