2023/12/14

ゼブラフィッシュ研究のプロトコール本「Zebrafish」(第3版)がSpringerから刊行されました

川上研究室・発生遺伝学研究室

Zebrafish: Methods and Protocols (Third edition)

James F. Amatruda, Corinne Houart, Koichi Kawakami, Kenneth D. Poss

Methods in Molecular Biology (2023) 2707

2021年はゼブラフィッシュ研究分野において2つの重要な節目でした。1つ目は、ドイツと米国で行われた、Driever博士、Nüsslein-Volhard博士、Fishman博士によって主導された最初の大規模ゼブラフィッシュ変異体スクリーニングの成果を記したDevelopment誌の特集号が1996年に出版されてから25年が経過したことです。2つ目は、Streisinger博士がゼブラフィッシュのクローンの作製を報告した先駆的な研究から40年が経過したことです。これらは、ゼブラフィッシュが脊椎動物の遺伝学における強力なツールであることを示したランドマークです。2021年には、このMethods in Molecular Biologyシリーズの前巻『Zebrafish: Methods and Protocols(第2版)』(Koichi Kawakami、E. Elizabeth Patton、Michael Orger編, 2016)が発表されてから5年が経過していました。2009年の初版(Graham J. Lieschke、Andrew C. Oates、Koichi Kawakami編)に続いた第2版は、ゼブラフィッシュ研究の拡大を反映して、「遺伝学とゲノミクス」、「疾患モデルとメカニズム」、「神経科学」という3つのセクションからなるものでした。その後もゼブラフィッシュ研究は発展を続け、世界中の研究グループが新しい技術を開発していく中で、我々は第3版を企画しました。

第3版は、ゼブラフィッシュ研究の最新の発展を反映して、4つのセクションに分かれています。第1部「疾患モデル」では、ゼブラフィッシュを使用してさまざまなヒト疾患をモデル化するための方法を記載しました。第2部「神経科学」では、脊椎動物の神経系の研究における魚類モデルの重要な役割を記載しました。第3部「再生」では、ヒトの健康にとってますます重要となっている幹細胞や再生生物学を研究するためのゼブラフィッシュを使ったツールやアプローチを紹介しました。第4部「遺伝学とゲノミクス」では、ゼブラフィッシュ研究にとって重要な遺伝学・ゲノム科学的方法論を記載しました。

川上研究室からは、以下のChapterを出版しました。 Capter11: Pradeep Lal, Hideyuki Tanabe, and Koichi Kawakami. Genetic identification of neural circuits essential for active avoidance fear conditioning in adult zebrafish. Chapter 17: Kazuhide Asakawa, Hiroshi Handa, and Koichi Kawakami. In vivo optogenic phase transition of an intrinsically disordered protein. Chapter 20: Tomoya Shiraki and Koichi Kawakami. Generation of transgenic fish harboring CRISPR/Cas9-mediated somatic mutations via a tRNA-based multiplex sgRNA expression

第3版の編集者たちが、2021年に編集を始めた時には、研究コミュニティは新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックの最中にありました。研究者らにとって、パンデミックは実験室や研究所の閉鎖、供給チェーンの問題による重大な研究の遅延、多くのセミナーや会議の中止や延期、そしてもちろんCovid関連の病気による個人や家族への人的影響など深刻な問題をもたらしました。第3版の各章は、そのような困難な状況下で研究分野を推進させる方法を見つけ出した研究者らの回復力、創造力、献身を示すものであり、ゼブラフィッシュを用いた基礎生物学研究および医学薬学研究の将来のさらなる発展が期待できます。


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