2022/05/24

モデル生物「ハリサンショウウニ」の全ゲノムを解読しデータベースを公開

TrBase: a genome and transcriptome database of Temnopleurus reevesii

S. Kinjo, M. Kiyomoto, H. Suzuki, T. Yamamoto, K. Ikeo, S. Yaguchi.

Development Growth & Differentiation 2022 May 19 DOI:10.1111/dgd.12780

プレスリリース資料

ウニは古くから発生生物学や細胞生物学の教育・研究材料として世界中で利用されています。日本においては、バフンウニ(Hemientrotus pulcherrimus)が主に用いられており、本研究グループでは、2018年にバフンウニの全ゲノム解読を行い、公的に利用できる遺伝子のデータベースHpBaseを作成し発表しています。一方で、バフンウニは受精卵から成長した個体が次の世代を生み出すまでの性成熟サイクルが1〜2年と長く、世代を超えて伝わる遺伝形質を解析するための対象としては不向きでした。そこで、新たなモデルとなるウニの確立を目指し、さまざまなウニの発生や成長を調べたところ、ハリサンショウウニ(Temnopleurus reevesii)の性成熟サイクルが約半年と非常に短いことを発見し、ノックアウト系統を作成することなどによって、その有用性を示してきました。

本研究では、ハリサンショウウニの全ゲノム情報を解読するとともに、公的に利用できる遺伝子のデータベースTrBaseを作成し公開しました。これにより、ハリサンショウウニが、ゲノム情報の整備されたモデル生物として、より多くの研究者や教育者に利用可能となり、ウニの発生や成長を司る遺伝子機能の解析などの基礎研究のみならず、水産などの応用研究や教育分野での活用などに貢献することが期待されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) が助成する戦略的創造研究推進事業 さきがけ「多細胞システムにおける細胞間相互作用とそのダイナミクス」研究領域(JPMJPR194C;2019-2022年度)および研究成果最適展開支援プログラムA-STEP「産学共同 (本格型)」(JPMJTR204E;2020-2025年度)、日本学術振興会が助成する科学研究費基盤(B)(26290070; 2014-2016年度)、科学研究費基盤(C)(JP19K06736; 2019-2021年度)、ゲノム支援(221S0002)によって実施されました。

次世代シーケンサー解析プラットフォーム「Maser」が本研究の基盤の一つになっています。

Figure1
図: TrBaseのトップページ

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