Multilateral benefit-sharing from digital sequence information will support both science and biodiversity conservation
Amber Hartman Scholz, Jens Freitag, Christopher H. C. Lyal, Rodrigo Sara, Martha Lucia Cepeda, Ibon Cancio, Scarlett Sett, Andrew Lee Hufton, Yemisrach Abebaw, Kailash Bansal, Halima Benbouza, Hamadi Iddi Boga, Sylvain Brisse, Michael W. Bruford, Hayley Clissold, Guy Cochrane, Jonathan A. Coddington, Anne-Caroline Deletoille, Felipe García-Cardona, Michelle Hamer, Raquel Hurtado-Ortiz, Douglas W. Miano, David Nicholson, Guilherme Oliveira, Carlos Ospina Bravo, Fabian Rohden, Ole Seberg, Gernot Segelbacher, Yogesh Shouche, Alejandra Sierra, Ilene Karsch-Mizrachi, Jessica da Silva, Desiree M. Hautea, Manuela da Silva, Mutsuaki Suzuki, Kassahun Tesfaye, Christian Keambou Tiambo, Krystal A. Tolley, Rajeev Varshney, María Mercedes Zambrano & Jörg Overmann
Nature Communications (2022) 13, 1086 DOI:10.1038/s41467-022-28594-0
地球上の生物多様性の破壊を食い止めるためには、緊急の国際行動が必要であり、国連の生物多様性条約(CBD)は、そのような行動を調整できる最も重要な国際文書の1つです。生物多様性条約の締約国は現在、2020年以降の生物多様性条約の枠組みについて交渉中です。この枠組みは、今後数十年間、地球を守るための野心を定め、国や関係者の行動を形作っていくものです。しかし、「デジタル配列情報」(DSI)と呼ばれる遺伝資源に由来するデータをどのように扱うか(規制するか)については、CBD締約国間で意見の相違が生じています。この問題は、生物多様性フレームワークの合意に至る前に解決されなければなりません。
科学者たちは、ウェブ上の公開データベースでDSIをオープンに共有してきた長い歴史があります。この共有の文化は、現代の生物学と生物多様性研究の中心であり、医療、食糧安全保障、グリーンエネルギー生産など多様な分野での技術的進歩を後押ししてきました。公開オンラインデータベースには、現在、何十万もの生物の配列情報が登録されており、日々その数は増えています。これらのデータベースは、科学的な再現性、透明性、そして進歩を支えています。それにもかかわらず、この研究から生まれる恩恵は、世界中に不平等に分布していることが明らかです。
Nature Communicationsに掲載された論文の中で、著者らは、研究コミュニティが大切にしている共有文化を損なうことなく、CBDの目的をサポートする方法で、DSIの利益を公平に配分することができ、またそうしなければならないと主張しています。
科学的なデータ共有を妨げることなく、利益を共有し、生物多様性研究にインセンティブを与えるポジティブフィードバックループが生まれるでしょう。また、政策立案者に対し、DSIに依存する自国の研究者と協力し、いかなる政策的解決も重要な生物多様性研究の妨げにならないようにすることを呼びかけています。
この論文の著者たちは、DSIの議論において収束的な視点を共有し、この重要な問題に対する賢明な政策解決策を主張するために声を合わせている、異なる国や経済環境の科学者のグループであるDSI科学ネットワークのメンバーです。
著者の一人、国立遺伝学研究所の産学・知的財産室長 鈴木睦昭はNBRP情報整備プログラムの中でABS学術対策チームとして、生物多様性条約および名古屋議定書に関係する遺伝資源のアクセスと利益配分(Access and Benefit-Sharing、ABS)の学術分野の対応を行っています。また、生物多様性条約締約国会議に日本政府団とし参加、10年以上の活動を行っています。