神経細胞の誕生日タグづけ法を開発して新規嗅覚回路を発見

A Novel Birthdate-Labeling Method Reveals Segregated Parallel Projections of Mitral and External Tufted Cells in the Main Olfactory System

Tatsumi Hirata, Go Shioi, Takaya Abe, Hiroshi Kiyonari, Shigeki Kato, Kazuto Kobayashi, Kensaku Mori and Takahiko Kawasaki

eNeuro 31, ENEURO.0234-19.2019, 2019 DOI:10.1523/ENEURO.0234-19.2019

鼻で受容された匂いの情報は、脳の嗅球へと伝えられ、ここで二次元的に整理された匂い地図として表現されます。この情報は、その後ランダムに拡散的に入り混じりながら次の中枢へと伝えられてゆくと考えられてきました。我々は、神経細胞の発生タイミングの違いを利用してloxP遺伝子組換えを誘導するトランスジェニックマウス系統(誕生日タグづけ法)を開発し、嗅球から中枢への神経結合パターンを解析しました。その結果、嗅球の神経細胞のうち早生まれの僧帽細胞と遅生まれの房飾細胞は、同じ匂い情報の入力を受けながらも、異なる標的に出力する並列回路を作ることがわかりました。

並列処理は感覚情報処理の基本です。例えば視覚系は、眼で受け取られた視覚風景の中から「色」「線の傾き」「動き」といった異なる特徴を抽出して並列処理することで、エッジの効いた属性情報へと転換し、我々が「物をどう見るべきか」を一義的に決めています。本研究結果は、嗅覚並列回路も、同じように、同一セットの匂い情報の中から、何らかの特徴を抽出し、強調して、出力へとつなげていることを意味しています。嗅覚の鈍い私たち人間には嗅覚の属性情報を想像することは難しいですが、「誕生日タグづけ法」は、今後嗅覚の並列情報処理の機能的意味を知る上でも有効であると期待されます。

本研究は、日本学術振興会と文科省による科学研究費(16H04659、17H05776; 17H05587) および、ROIS未来投資型プロジェクト研究支援を受けて実施されました。

Figure1

図:誕生日タグづけ法による嗅球投射神経細胞の分類と軸索投射のパターン
タグづけ時期 (TM10.5~17.5) の違いにより、副嗅球(AOB)、僧帽細胞(MC)、房飾細胞(TC)を分類でき(円グラフ)、それらが異なる標的に軸索を投射することが明らかとなった(下模式図)。


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