卵子の前駆体形成に必須なRNA制御因子の発見

ELAVL2-directed RNA regulatory network drives the formation of quiescent primordial follicles

Yuzuru Kato, Tokuko Iwamori, Yoichirou Ninomiya, Takashi Kohda, Jyunko Miyashita, Mikiko Sato, and Yumiko Saga

EMBO reports e48251, 2019 DOI:10.15252/embr.201948251

ヒトを含む哺乳動物の卵子は原始卵胞と呼ばれる最も未成熟な卵胞の発達により産生されます。原始卵胞は出生前後の卵巣で形成され、その未成熟性を維持しつつ逐次的に卵子に成長することで、長期に渡る女性の生殖可能期間を支えています。この分子機構の破綻は早発閉経など女性不妊とも密接に関わることから、医学的にも重要な研究課題の一つです。

国立遺伝学研究所の加藤譲助教らのグループは九州大学、山梨大学との共同研究により、原始卵胞の形成に必須な2つのRNA結合タンパク質を同定しました。グループはまず、原始卵胞の形成に関わる遺伝子の探索からRNA結合タンパク質ELAVL2をコードする遺伝子Elavl2を同定しました。卵巣においてELAVL2は卵母細胞特異的に発現します。遺伝子ノックアウトによりElavl2遺伝子を破壊したところ、卵母細胞が原始卵胞形成直前に死滅することが明らかとなりました。続いて、ELAVL2に結合するメッセンジャーRNAを解析したところ、ELAVL2がP-bodyと呼ばれるRNAとタンパク質複合体から成る細胞質顆粒因子のメッセンジャーRNAと結合することを見出しました。さらに、ELAVL2の標的RNAの一つであり、P-body形成に必須のRNAヘリカーゼであるDDX6をノックアウトしたところ、P-body様の顆粒および原始卵胞の形成が著しく阻害されることを見出しました。すなわち、ELAVL2に始まる一連のRNA制御機構が原始卵胞の形成に重要であることが示されました。これらの知見は原始卵胞形成の分子機構の理解と生殖医療の発展に貢献することが期待されます。

本研究は以下の支援を受けて行われました。 日本学術振興会[(No.17K07422加藤譲)、(No.26251025相賀裕美子) 文部科学省新学術領域[(No.26114512, 16H01259, 19H05246加藤譲)、(No.26114506岩森督子)]

Figure1

図:マウスにおいて原始卵胞(Primordial follicle)は出生直後に形成される。原始卵胞の形成に先立ち卵母細胞(黄色)の細胞質にはP-body様の細胞質顆粒が形成される。RNA結合タンパク質ELAVL2とDDX6はこの顆粒の形成および原始卵胞の形成に必須である。


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