2019/03/05

遺伝子が転写される際のDNAの「動き」を生きた細胞の中で捉えた!

Press Release

Single nucleosome imaging reveals loose genome chromatin networks via active RNA polymerase II

Ryosuke Nagashima, Kayo Hibino, S. S. Ashwin, Michael Babokhov, Shin Fujishiro, Ryosuke Imai, Tadasu Nozaki, Sachiko Tamura, Tomomi Tani, Hiroshi Kimura, Michael Shribak, Masato T.Kanemaki, Masaki Sasai, and Kazuhiro Maeshima

Journal of Cell Biology Published March 1, 2019 DOI:10.1083/jcb.201811090

プレスリリース資料

JCBからもプレスリリースされました

JCBの注目論文として解説論文Spotlightが掲載されました

私たちの体は約40兆個の細胞からできています。そして、それぞれの細胞には全長約2メートルにも及ぶ生命の設計図ヒトゲノムDNAが収納されています。DNAの収納構造については、近年、多くのことが分かってきた一方で、生きた細胞でのDNAのふるまい(動き)についてはほとんど分かっていませんでした。

このたび、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所・永島崚甫総研大大学院生・日比野佳代助教・前島一博教授らのグループは、名古屋大学大学院工学研究科・S.S. Ashwin特任助教、笹井理生教授と共同で、光学顕微鏡の分解能を超える超解像蛍光顕微鏡を駆使することで、生きた細胞内のDNAの動きを観察することに成功しました(図1、動画1)。一般に、ゲノムDNAの遺伝情報が読み出される転写が起きる際、DNAを含む高次構造であるヌクレオソームは緩くなり、よりダイナミックに動くと考えられてきました。しかし本研究で調べたところ、転写を阻害するとDNAの動きが逆に活発化することが明らかになりました(図1C、動画2)。さらに、転写の際にDNA上で働くRNAポリメラーゼIIや他の転写因子が塊(ハブ)を作ってDNAの動きを抑える様子が示されました(図2)。この結果は、ハブを作ることでゲノムDNAは連結されてネットワーク化し、DNAの動きを抑え、効率的に転写を行う可能性を示唆するものです。

研究体制と支援
本研究成果は、国立遺伝学研究所・ゲノムダイナミクス研究室(永島崚甫総研大大学院生、日比野佳代助教、Michael Babokhov研究員、田村佐知子テクニカルスタッフ、野崎慎学振特別研究員、今井亮輔元総研大生、前島一博教授)、名古屋大学大学院工学研究科(S.S. Ashwin特任助教、藤城新大学院生、笹井理生教授)、東京工業大学(木村宏教授)、国立遺伝学研究所・分子細胞工学研究室(鐘巻将人教授)、ウッズホール海洋生物学研究所(Michael Shribakチームリーダー、谷知己チームリーダー)の共同研究成果です。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST) (JPMJCR15G2)、日本学術振興会(JSPS) 科研費(16H04746)、武田科学振興財団、RIKEN Pioneering Project、NIG-JOINT(2016-A2 (6))、 総研大2017年度学生派遣事業の支援を受けました。

Figure1

図1:(A)少数の蛍光標識されたヌクレオソーム(赤)。詳しくは、「研究の背景」を参照。それらに注目することで個々のヌクレオソームの動きを調べることができる。(B)超解像蛍光顕微鏡による核内のヌクレオソーム画像。1個1個のドットが1個1個のヌクレオソームを示している。(C)転写を阻害するとヌクレオソームの動きが上昇する(赤線)。黒線が通常状態のヌクレオソームの動き。ヌクレオソームの動きは「平均二乗変位」という量で表されている。

Figure1

図2:細胞の核(左)の中で転写が起きる際、DNA上で働くRNAポリメラーゼII(赤)や他の転写因子(青)が塊(ハブ、ピンク色)を作ってクロマチンの動きを抑える(中央、右)。細胞核内のクロマチンは転写が起きる場所をハブとし、緩いネットワークを作っていると考えられる(右)。

動画1:超解像蛍光顕微鏡による核内のヌクレオソームの動きの動画。通常状態の細胞内のヌクレオソームの動き。1個1個のドットが1個1個のヌクレオソームを示している。1コマ50ミリ秒。

動画2:転写を阻害した際のヌクレオソームの動きの動画。通常の状態と比べて、ヌクレオソームの動きが活発化していることが分かる。1コマ50ミリ秒。


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