2018/02/20

ウンシュウミカンの全ゲノムを解読 -カンキツ品種改良の効率化に期待-

Press Release

Draft sequencing of the heterozygous diploid genome of Satsuma (Citrus unshiu Marc.) using a hybrid assembly approach

Tokurou Shimizu, Yasuhiro Tanizawa, Takako Mochizuki, Hideki Nagasaki, Terutaka Yoshioka, Atsushi Toyoda, Asao Fujiyama, Eli Kaminuma, Yasukazu Nakamura

Frontiers in Genetics 05 December 2017 DOI:10.3389/fgene.2017.00180

プレスリリース資料

1.農研機構は情報・システム研究機構国立遺伝学研究所と共同で、ウンシュウミカン「宮川(みやがわ)早生(わせ)」の全ゲノム配列を解読しました。ゲノムの大きさは約3億6000万塩基対でした。

2.ゲノム配列中に約2万9千個の遺伝子が存在すると推定し、その中からカンキツの着色に関わるカロテノイド生合成の遺伝子や、結実性に関わるジベレリンの生合成遺伝子91個を特定しました。

3.ウンシュウミカンの両親であるキシュウミカンとクネンボの塩基配列も解析して比較したところ、クネンボの片親がキシュウミカンであること、つまり、ウンシュウミカンはキシュウミカンの子供にさらにキシュウミカンが交配されて生まれたことがわかりました。

4.本成果で得られた全ゲノム配列を利用すれば、ゲノムワイド関連解析を利用した果実形質や栽培性に関わる重要遺伝子の機能推定が高速化され、カンキツの品種育成を効率化できると期待されます。

5.本成果は国際科学雑誌「Frontiers in Genetics」に12月5日に掲載されました。

遺伝研の貢献
国立遺伝学研究所 比較ゲノム解析研究室 豊田敦特任教授、同研究所先端ゲノミクス推進センター 藤山秋佐夫特任教授は宮川早生品種のDNA解読をおこない、断片状の塩基配列を生成しました。その断片塩基配列データをもちいて、大量遺伝情報研究室 谷澤靖洋特任研究員、望月孝子特任研究員、神沼英里助教、中村保一教授は、染色体配列を再構築するゲノムアセンブリ解析や遺伝子注釈解析を行いました。解析には遺伝研スーパーコンピュータを使用しました。

研究支援
本研究は、農林水産省委託プロジェクトゲノム情報を活用した農産物の次世代生産基盤技術の開発プロジェクト「多数の遺伝子が関与する形質を改良する新しい育種技術の開発」(NGB)、ROIS新領域融合プロジェクト「生命システム」サブテーマ 1 超大量ゲノム情報(代表:藤山秋佐夫)、科学研究費補助金の支援を受けて実施されました。

Figure1

図1.全配列解析から明らかとなったウンシュウミカンの成立経過
ウンシュウミカンの片親であるクネンボはキシュウミカンの子であることを全配列解析から確認しました。すなわち、ウンシュウミカンはキシュウミカンの子供に、さらにキシュウミカンが交配された結果生まれた品種であることがわかりました(クネンボのもう一方の片親は不明です)。

Figure1

図2:ウンシュウミカン、キシュウミカン、クネンボの果実

プレスリリース資料中でご紹介した成果「DNAの違いから、芽生え段階でカンキツの様々な果実特性を高精度に予測」についてこちらでお読みいただけます


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