はじまりは卵の形だった~初期胚における細胞の配置パターンの決定機構~

Press Release

An asymmetric attraction model for the diversity and robustness of cell arrangement in nematodes

Kazunori Yamamoto, Akatsuki Kimura

Development 2017 144: 4437-4449; DOI:10.1242/dev.154609

プレスリリース資料

私たち多細胞生物は、たった一つの細胞(受精卵)が細胞分裂で数を増やすことによって形成されます。この個体形成の過程では、細胞同士の配置関係(細胞の配置パターン(1))が重要です。細胞の配置パターンは種によって多様で、一般にそれぞれ固有のパターンを持っていますが、細胞の配置パターンを決めるしくみはわかっていませんでした。

本研究では、特定の種の線虫(2)(C. elegans)の「卵の形」を変えると細胞の配置パターンが「他種の線虫のパターン」に変化することを発見しました。つまり、細胞の“容器”の役割を果たす卵の形が細胞の配置パターンに重要だったのです。また、卵の形の変化と細胞配置パターンの変化を再現する数理モデル(3)を世界で初めて構築しました。本研究で提唱する細胞の配置パターン決定のしくみは、ヒトをはじめとする様々な生物に共通すると考えられます。

本研究は、山本一徳博士(今春まで総合研究大学院大学(総研大)・大学院生/日本学術振興会特別研究員DC2、現・同特別研究員PD)によって、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 細胞建築研究室の木村暁教授のもとでおこなわれました。山本博士は本研究の成果によって総研大遺伝学専攻の森島奨励賞を受賞しました。

本成果は、国際学術誌Developmentにおいて、定量的発生生物学に大きな影響を与えたダーシー・トムソン博士の著作「On Growth and Form」の刊行100周年を記念した特別号に掲載されます。

本研究は、科学研究費補助金(JP15H04372、JP15KT0083、JP16J09469)及び内藤記念科学奨励金、住友財団基礎科学研究助成、総合研究大学院大学学融合推進センター研究論文掲載費等助成の支援を受けておこなわれました。

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図1:細胞配置パターンの制御については、分裂方向の違い(A)によるものはよく研究されていたが、力による制御(B)についてはほとんどわかっていなかった。

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図2:本研究では、異なる線虫種の細胞配置パターン(A)を、ある種の線虫(C. elegans)の卵殻の形状を変えるだけで再現することに成功し(B)、さらに、このパターンの形状依存の変化を再現する数理モデルの構築にも成功した(C)。(A)でピラミッド型を示す種はEnoplus brevis (写真の出典は Schulze and Shierenberg, 2011)、T字型はCephalobus sp. (Goldstein, 2001)、直線型はBelonolaimus sp. (Goldstein, 2001)。