2014/11/10

オーキシンデグロン(AID)法を応用した細胞自死システムの開発

分子機能研究室・鐘巻研究室

A cell suicide module: Auxin-induced rapid degradation of Inhibitor of Caspase Activated DNase (ICAD) induces apoptotic DNA fragmentation, caspase activation and cell death

Kumiko Samejima, Hiromi Ogawa, Alexander V. Ageichik, Kevin L. Peterson, Scott H. Kaufmann, Masato T. Kanemaki and William C. Earnshaw The Journal of Biological Chemistry, 298, 31617-31623, 2014.; DOI:10.1074/jbc.M114.583542

典型的アポトーシスではカスパーゼと総称される蛋白分解酵素がシグナル伝達およびその実行に中心的役割を果たします。そしてそのカスパーゼの基質のひとつであるインヒビター結合因子ICADの切断がCaspase-activated DNase (CAD)を活性化し、アポトーシスの特徴の一つであるゲノムDNAの断片化とゲノムの凝縮を誘導します。しかしながら、正常の細胞内で、アポトーシスの経路の中で下流に位置するICADの分解のみでCADを活性化できるのか、またアポトーシスが誘導できるかどうかは不明でした。この疑問に答えるため、オーキシン誘導デグロン(AID)法を利用して、DT40細胞内でICADの量を自在にコントロールできる細胞株を作製しました。オーキシン添加により細胞内のICADを急速に分解すると、実際にCAD及びカスパーゼが活性化され、アポトーシスが誘導されました。つまり、ICAD分解又はCADの活性化がフィードバックループによりアポトーシスを誘導するのに十分であることを示しました。また、細胞死は出芽酵母においても誘導することが可能でした。作製したICAD分解による人為的細胞死の誘導システムは、様々な真核細胞において機能することが期待され、将来の遺伝子改変生物の拡散を防ぐ手段として利用できる可能性があると考えられます。

本研究は英国エジンバラ大学の鮫島久美子博士、William Earnshaw教授/遺伝研客員教授との共同研究として行われました。

Figure1

オーキシン添加によるICAD分解により、細胞死を誘導した(a3)。その際にはゲノムDNAの断片化が起こっていることが確認された(b)。


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