日本産マウスのゲノム解読からみえてきた実験用マウス系統の起源

Press Release

The ancestor of extant Japanese fancy mice contributed to the mosaic genomes of classical inbred strains

Takada, T., Ebata, T., Noguchi, H., Keane, K., Adams, D., Narita, T., Shin-I, T., Fujisawa, H., Toyoda, A., Abe, K., Obata, Y., Sakaki, Y., Moriwaki, K., Fujiyama, A., Kohara, Y. and Shiroishi, T.
Genome Research, 2013 Aug;23(8):1329-1338. DOI: 10.1101/gr.156497.113

プレスリリース資料

国立遺伝学研究所と理化学研究所からなる研究グループは、日本産マウス亜種(モロシヌス)由来の二つの系統、MSM/Ms(Mishima: MSM)及びJF1/Ms(Japan-Fancy 1: JF1)の全ゲノム解読を行い、 生物・医学研究分野で広く使われている標準的な実験用マウス系統のゲノム配列との比較解析を行いました。その結果、マウスゲノム多型情報が大幅に拡充されました。 さらに、この情報をもとに標準的な実験用マウス基準系統の成立史についての新知見が得られました。

MSM/Ms系統は静岡県三島市内で捕獲された日本産野生マウス亜種(モロシヌス)、また、JF1/Ms系統は25年ほど前にデンマークのペットショップで発見された日本産愛玩用マウスをもとにして、いずれも国立遺伝学研究所で樹立されました。 今回、これらのマウス系統の次世代シーケンサーによる全ゲノム解読を行い、C57BL/6 などの西ヨーロッパ産マウス亜種(ドメスティカス)由来である実験用マウスの基準系統の間で全ゲノム配列を比較解析しました。 この結果、両グループ間のゲノムの大半で1%程度のDNA配列上の違い(ゲノム多型)が見出されました。現在、多くの研究者がMSM/Ms、JF1/Msのゲノム多型性に起因する多様な形質の違い(表現型)の遺伝解析を進めています。 今回得られた日本産マウス亜種由来の両系統の全ゲノム配列情報や基準系統との間の多型情報は、マウス亜種間多型に基づくゲノム機能学を一層加速させるために重要な研究基盤となります。

さらに、実験用マウスの基準系統の比較ゲノム解析から、世界中で広く使用されている実験用マウス系統のゲノム中にJF1/Ms系統ときわめて類似度の高い配列が散在することを見出しました。 今回のゲノム解析の結果と日本やヨーロッパの古い文献の調査研究により、江戸末期に日本からヨーロッパに渡ったJF1/Msの祖先とヨーロッパ産愛玩用マウスの交配集団が、今日の実験用マウスの基準系統の起源となっていることがわかりました。 さらに、日本産マウスのゲノムが、実験用マウスの基準系統間の遺伝的多型に大きく貢献していることもわかりました。このように、本研究の成果によって、実験用マウス系統の成立に関する長い議論にも終止符を打つことができました。

Figure1

マウス亜種の世界的分布。実験用マウスの基準系統の成立に関与したとされる4つの亜種の分布域を地図上に色別してマップしました。 今回、日本産野生マウス由来のMSM/Ms系統および日本産愛玩用マウス由来のJF1/Ms系統をゲノム解読し、 それらの塩基配列を主に西ヨーロッパ産マウス亜種由来の実験用マウス系統であるC57BL/6Jの基準ゲノム配列と比較解析しました。


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