ダウン症候群などの染色体(部分)重複や欠損を伴う染色体異常疾患は、新生児の約1%に発症すると言われています。これらの疾患に特徴的な形態異常や神経症状は、遺伝子コピー数の変化によるものと考えられていますが、多くのケースではその原因遺伝子は特定されていません。
今回、哺乳動物遺伝研究室の田村勝助教(現理研バイオリソースセンター)、城石俊彦教授らのグループは、突然変異マウスRim4 がヒト染色体異常疾患である4番染色体長腕部分重複症のモデル動物であること、また多くの表現型を本疾患の患者さんと共有することを見出しました。更にRim4 とKnockoutマウスの交配実験による遺伝学的解析により、本疾患にみられる心臓中隔欠損や四肢形態異常が、bHLH型転写因遺伝子Hand2 の量的効果が原因であることを明らかにしました。この結果は、Hand2 の遺伝子量の形態形成への関与の解明に加えて、4番染色体長腕部分重複症表現型の分子メカニズムの理解や患者さんのQOL向上に貢献するものと期待されます。
本研究成果は、国立病院機構新潟病院富沢修一院長らのグループとの共同研究によるものです。
マウス変異Rim4にみられる染色体異常と心室中隔欠損
(A)ヒト4番染色体長腕 (HSA4) 4q32.3-34.1とマウス8番染色体 (MMU8) 8qB2-B3.1は、遺伝子の並びが良く保存されている。(B) Rim4/+マウスの染色体FISH像。6番染色体 (Chr6: 緑色)、8番染色体(Chr8: 赤色)。(C) 野生型Chr6。(D) Rim4 Chr6 の拡大像。矢印は挿入された8qB2-B3.1断片 。(E, F) 胸部micro-CT像。野生型 (E) にはみられない心室中隔欠損(点線丸)(F) がRim4/ Rim4では観察される。