鐘巻 将人 准教授(かねまき まさと)

 分子機能研究室 鐘巻研究室
1974年生まれ
千葉大学大学院博士課程修了、Cancer Research UK(イギリス)、大阪大学大学院理学研究科生物科学研究科助教。2010年10月より現職。
趣味/ロードバイク

自ら開発した技術「AID法」で動物細胞を探る

鐘巻准教授が開発した「AID法」は、植物ホルモン「オーキシン」を利用し、細胞の中の特定のタンパク質だけをわずか15分~30分ほどの短時間で分解する技術だ。この画期的なAID法を活用して、これまでできなかった動物細胞の増殖機構の解析を行うことを計画している。AID法とはどんなものか?それによりどんなことが可能になるのか?鐘巻准教授に聞いた。

画期的なタンパク質分解技術「AID法」
高校の教科書にも出てくる「オーキシン」。1940年代に発見された、植物の胚発生や重力屈性、光屈性などに関わる植物ホルモンだ。しかしその詳細な分子機構が報告されたのは2005年と新しい。その知見をもとに「AID(オーキシン誘導デグロン)法」は発明された。鐘巻准教授は2009年12月に論文発表し、特許も取得した。
研究内容紹介「自ら開発した技術”AID法”で動物細胞を探る」
科学と技術は両輪の輪
「結局、サイエンスはテクノロジーが分野を作って、またテクノロジーにフィードバックされて進化してきたように僕は思うんです。顕微鏡がなかったら細胞は見えなかったように、顕微鏡もどんどん進化していくし、細胞の中のことがわかるにつれ、興味も広がってきました。科学と技術は両輪の輪なんです。」
鐘巻研究室では、テクノロジーと培養細胞の基礎研究と2本柱で研究を進めていこうとしている。まずテクノロジーについては、AID法の新しい使い道の開発を目指す。
「AID法は、目的のタンパク質を分解するのですが、オーキシンを入れるとAとBのタンパクがくっつくということですから、分解しないような工夫をしたら、AとBのタンパク質が出会うというアイデアも当然出てきます。細胞工学みたいなものですが、ある特別な条件になったときに、タンパク質が出会うとか、乖離するとかが人為的にできれば、実験の幅がもっともっと広がると思うので、そういう開発もしていきたい。」
培養細胞については、染色体の安定に関するテーマが複数ある。
「細胞にはDNA複製の時に起こるミスをちゃんと直すしくみがありますが、それはどうなっているのか?それがおかしくなると細胞がガンになったり、死んでしまったり、老化につながったりします。これをマウスやヒトの細胞でダイレクトに証明したい。AID法というテクノロジーを使ったからわかった、という宣伝にもなると思うので、サクセスフルな事例を自分たちで作りたいです。」
異分野の交流から生まれるもの
AIDのアイデアは、隣にあった植物の研究室での会話がヒントになったという。
「そこの教授が『植物にこんなオモロイ分解システムがあるんだよ!』っていう話をしてくれたのがヒントになっています。植物って面白いですよね!植物の研究者は植物しか考えてこなかったし、動物の研究者は動物しか考えてなかったんだけど、話し合ってみるとお互い面白いことが多くて。異文野交流は重要かなと思います。」
今、遺伝研の他の研究室から、共同研究のオファーが来ている。
「ご近所のラボでも使ってみたいという希望が来ていて、相談しながらやっていこうとしています。まだ始まったばかりですけどね。技術を作る側の喜びと言いますか、AID法は僕ら以外のラボ、異分野の人も使えて、みんなに喜んでもらえるのもいいですよね。そういうところにもコントリビューションできるのはありがたい話です。」
新しいコラボレーションで何が発見され、生まれるのか?共同研究の今後が楽しみだ。
(田村佳子 インタビュー/高橋健太 動画作成 2011年)

 パンフレットダウンロード(893KB)

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