A Single-Chain Antibody-Based AID2 System for Conditional Degradation of GFP-Tagged and Untagged Proteins
Moutushi Islam, Takefumi Negishi, Naomi Kitamoto, Yuki Hatoyama, Kanae Gamo, Ken-ichiro Hayashi, and Masato T. Kanemaki*
*corresponding author
Journal of Cell Science (2025) jcs.263961 DOI:10.1242/jcs.263961
生細胞内において、標的とするタンパク質を短時間で分解除去することにより、そのタンパク質機能の欠損が引き起こす影響を観察することができます。鐘巻研究室が開発したオーキシンデグロン(auxin-inducible degron, AID)技術は、これまで様々なタンパク質の機能解析研究において広く利用されてきました。最新の改良版AID2は、高精度な標的タンパク質の分解制御を可能にします。しかし、ゲノム編集を利用して分解タグを標的タンパク質に付加する必要があり、これまでAID2法を非モデル生物や臨床応用へ展開することを困難にしていました。この問題を克服するため、鐘巻研究室は単鎖抗体を利用することで、標的タンパク質に分解タグを付加しなくても分解誘導できる、単鎖抗体AID2(single-chain antibody AID2, scAb-AID2)法の開発に成功しました。
まず実証実験として、GFPを認識する単鎖抗体であるGFPナノボディを用いました。GFPナノボディと分解タグを融合したアダプターと分解に必要なユビキチンリガーゼOsTIR1(F74G)を、様々なGFP融合タンパク質を発現するヒト培養細胞および線虫に導入し、分解誘導リガンド5-Ph-IAAの添加により、これらGFP融合タンパク質がに分解されることを確認しました。
さらに、がん抑制因子p53および増殖誘導因子H/K-RASに対する単鎖抗体を用いて分解タグと融合したアダプターを設計し、アダプターとOsTIR1(F74G)をヒト培養細胞に導入しました。これら細胞を分解誘導リガンド5-Ph-IAAで処理したところ、p53およびH/K-RASの分解が確認されました。さらに、p53を分解した際には複製ストレス誘導剤に感受性が増し、H/K-RASを分解した細胞で作成した腫瘍では、その腫瘍形成が抑制されました。
この単鎖抗体AID2システムは、従来のAID2 におけるタグ付加の必要性を克服し、標的タンパク質分解を利用した生命科学研究および医療応用への道を拓くものです。
本論文に関連して、筆頭著者の総研大生Moutushi Islamさんが、Journal of Cell Science誌のFirst Personとして取り上げられました。また、本論文が同誌のResearch Highlightとして取り上げられました。
本研究は科研費(23K05836, 21H04719, 23H04925, 25H00979)およびJST CREST(MJCR21E6)のサポートによりおこなわれました。
図:単鎖抗体AID2法により、分解タグを付加していないタンパク質が認識されて、5-Ph-IAA存在下で分解される。