2025/03/12

海や汽水域に生息するトゲウオは、個体発生の過程で形態の発生軌跡を変化させる

北野研究室・生態遺伝学研究室

Divergent developmental trajectories of body depth and head length among stickleback populations

Kanbe, H., Mori, S., and Kitano

Ichthyological Research (2025) DOI:10.1007/s10228-025-01021-2

魚類は非常に多様な体形を示し、このような多様性は、さまざまな生息地や生活史への適応として進化することがあります。トゲウオ科のイトヨ属の魚においても、集団間で顕著な形態的多様性を示すことが知られています。しかし、先行研究の多くは、成魚段階での形態変異を調査したものであり、成長過程での形態変化についてはあまり多くが知られていませんでした。

このたび、生態遺伝学研究室の総研大生・神部飛雄さんと北野潤教授らの研究チームは、日本に生息するイトヨの様々な集団と、その近縁種であるニホンイトヨにおける体高と頭長の発達過程について比較調査し、その成果をIchthyological Research誌に発表しました。

その結果、汽水域から海水域に生息するイトヨ属では、標準体長に対する体高と頭長の成長率が個体発生の過程で変化することがわかりました。その一方で、淡水域のみを利用する集団では、個体発生の過程におけるアロメトリックな変化が少ないことがわかりました。これらの結果は、集団間の発生パターンが生活史と関連している可能性があること、近縁種や種内の集団間であっても、形態アロメトリーにおける発生パターンが異なる可能性があることを示しています。

本成果は科研費・基盤SやJST・CRESTの支援を受けて実施されました。

図:海や汽水域に生息するトゲウオは、個体発生の過程で形態の発生軌跡を変化させるが(左)、そのような軌跡の変化は淡水集団では観察されない(右)ことを示す模式図


リストに戻る
  • X
  • facebook
  • youtube