2024/11/20

共存か、絶滅か? カギを握るのは「タイミング」
〜生態系の新しい理解に向けた理論研究〜

Character displacement or priority effects: immigration timing can affect community assembly with rapid evolution

Keiichi Morita, Masato Yamamichi

Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences (2024) 291: 20242145. DOI:10.1098/rspb.2024.2145

プレスリリース資料

私たちの身の回りには実に様々な生き物が共存しています。例えば、森の中には似たような餌を食べる鳥が複数種生息しています。ここで、もし新しい種が環境に加わるとすると、なぜある時は平和に共存し、またある時は、一方が絶滅してしまうのでしょうか?

国立遺伝学研究所 新分野創造センター 理論生態進化研究室の山道真人准教授と東京大学修士課程大学院生 森田慶一(当時、現・総合研究大学院大学博士課程 大学院生)は、生物種の「共存」と「絶滅」を決定づける重要な要因を解明しました。その鍵を握るのは、生物が新しい環境に到達する「タイミング」だということが明らかになりました。

従来の研究では、生き物の集団には、形質置換による共存と、進化的先住効果による絶滅という2つのプロセスが起こることが知られていました。本研究では、2種が競争する数理モデルを用いて、2つのプロセスを統合する理論的枠組みを構築しました。その結果、2つの種が比較的近い時期に入ってきた場合、形質置換が起こって、後から移入してきた種が定着し共存しますが、2つの種の入ってくる時期に大きな差がある場合、進化的先住効果によって、後から移入してきた種が定着せず絶滅することがわかりました。

今後、本研究の理論的枠組みを拡張していくことで、より複雑な野外の生物群集の理解を深め、外来種対策や絶滅危惧種の保全、自然資源管理などへ貢献することが期待されます。

本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金(課題番号:19K16223、20KK0169、21H02560、22H02688、22H04983)、科学技術振興機構CREST (課題番号:JPMJCR23N5)、稲盛研究助成、オーストラリア研究評議会Discovery Project(課題番号:DP220102040)、理化学研究所数理創造プログラム(iTHEMS)の研究助成を受けて実施されました。

本研究は、2024年11月20日にProceedings of the Royal Society B: Biological Sciencesに掲載されました。

図: (a) 形質置換が起こると、資源(ニッチ)分割により2種間の競争が弱まり、共存が起こります。 (b) 進化的先住効果が起こる場合、先に移入した種1(赤い丸)が局所適応してニッチを独占することで、後から移入した種(青い三角)が定着せずに絶滅します。ここでは、色が濃いほど、生息地に局所適応していることを示しています。


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