プレスリリース
Chromosomal DNA sequences of the Pacific saury genome: versatile resources for fishery science and comparative biology
Mana Sato, Kazuya Fukuda, Mitsutaka Kadota, Hatsune Makino-Itou, Kaori Tatsumi, Shinya Yamauchi, Shigehiro Kuraku
DNA Research 2024 March 07 DOI:10.1093/dnares/dsae004
「秋の味覚」として日本人に古くから親しまれてきたサンマは、近年、漁獲量が減少し、価格が高騰したことで大きな話題となりました。これまで、サンマは漁獲量が比較的安定しており、魚価も安かったことから、養殖技術は確立されてきませんでした。このような背景から、身近な魚であるにもかかわらず、サンマの生物学的研究はあまりなされていませんでした。さらに、分子生物学研究の基本となる全ゲノム配列などDNA情報が整備されていなかったことも、サンマについての研究が進んでいない大きな要因です。
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所分子生命史研究室の工樂樹洋教授(理化学研究所生命機能科学研究センター客員研究員)、北里大学の福田和也助教、理化学研究所生命機能科学研究センターの門田満隆技師、アクアマリンふくしまの山内信弥上席技師らからなる研究チームは、サンマの全ゲノム情報を読み取り、多様な分子生物学研究のための情報基盤を整えました。
本研究では、世界で唯一サンマの継代飼育および展示を成功させた水族館であるアクアマリンふくしまにて陸上水槽内で人工ふ化し養成したサンマ成魚を用いました。まず、一分子リアルタイム(SMRT)塩基読み取り技術(1)による高精度な長鎖配列(ロングリード)解析により、このサンマのDNA断片情報を取得しました。そして、染色体立体配座捕捉法(Hi-C)(2)により、数千万塩基にもなる染色体のDNA配列を再構築しました。今後、他生物と配列を比較することで、サンマの分子生物学的特徴が明らかになると期待されます。
2022年5月に着手した本研究は、高い専門性をもつ技術者や研究者が、分野横断的に協力することで、短期間で成果を出すことができました。近年の漁獲量減少と価格高騰により大きな注目を浴びているサンマについて、その学術研究を速やかに推進するために、研究論文の発表に先立って、得られたゲノム情報はすでにインターネット上で広く公開しています。これに付随した論文は、日本で育まれてきた国際学術雑誌「DNA Research」に 2024 年3月7日(日本時間)に掲載されました。
本研究は、情報システム研究機構の「戦略的研究プロジェクト(日本を象徴する重要生物種の分子研究と保全を加速させる生命情報基盤の構築)」の支援を受けて行われました。