2024/02/21

社会性が動物家畜化を生み出す

小出研究室・マウス開発研究室

Association of tameness and sociability but no sign of domestication syndrome in mice selectively bred for active tameness

Bharathi Venkatachalam, Bhim B. Biswa, Hiromichi Nagayama, Tsuyoshi Koide*
*責任著者

Genes, Brain and Behavior (2024) 23, e12887 DOI:10.1111/gbb.12887

家畜動物は人類の生活に不可欠でとても重要な役割を果たしています。しかし、野生動物がどのような変化を受けて家畜化されていくのかまだ不明の点が多くあります。

情報・システム研究機構国立遺伝学研究所マウス開発研究室および総合研究大学院大学遺伝学コースの大学院生Bharathi Venkatachalam、Bhim B. Biswaと小出 剛准教授らは、マウスを用いて家畜化過程における形質変化の解明に取り組みました。

選択交配という方法により人になつく性質が高くなったマウス集団を用いてさまざまな行動を解析したところ、これらのマウスでは対照群と比較して同種個体間の社会的親和性が高くなっていることが分かりました。一方、社会性行動の中でも攻撃行動にはまったく違いがなく、他の行動にも違いはみられませんでした。これらの結果から、人になつく性質は社会的親和性が高くなることで生じると考えられました。

同種と他種を区別して社会性行動をすることは、動物が野生で生存していく上では生死に関わる重要なことです。一方で、家畜動物はその区別があいまいになって人になつく性質を示すことで繫栄してきた特殊な動物群であったと言えます。

実は、ヒトも社会性が高いという特徴がありますが、ペット動物を家族の一員のように扱ったりそれが死んだ際にはペットロスになったりします。私たちヒトもこのような家畜動物と共通した性質を持っているとも言えます。

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費(19KK0177, 19H03270)、文部科学省、JST SPRING(JPMJSP2104)の支援を受けて行われました。

本研究成果は、2024 年 2 月 19 日付で、国際科学雑誌「Genes, Brain and Behavior」にオンライン掲載されました。

図:研究の概略と結果:人になつくマウスは高い社会性を示す一方で、家畜化症候群の兆候とされる形態変化は生じていない


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