2023/11/14

植物の「水の通り道」の形を制御するタンパク質を発見
~細胞壁形成のしくみ解明へ大きな前進~

Confined-microtubule assembly shapes three-dimensional cell wall structures in xylem

Takema Sasaki, Kei Saito, Daisuke Inoue, Henrik Serk, Yuki Sugiyama, Edouard Pesquet, Yuta Shimamoto, Yoshihisa Oda

Nature Communications (2023) 14, 6987 DOI:10.1038/s41467-023-42487-w

プレスリリース資料

国立大学法人 東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科の佐々木 武馬 助教、杉山 友希 特任助教、小田 祥久 教授の研究グループは、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 遺伝メカニズム研究系の斎藤 慧 助教、島本 勇太 准教授、国立大学法人 九州大学 大学院芸術工学研究院の井上 大介 助教、ストックホルム大学(スウェーデン王国)のヘンリック サーク 博士、エドワール ペスケ 教授との共同研究により陸上植物の水の通り道を形づくるタンパク質を発見しました。本研究グループは、道管における細胞壁の微小な孔(壁孔)に存在するMAP70-5タンパク質に着目し、このタンパク質が微小管と呼ばれる細胞内の繊維を曲がりやすくすることにより、道管における壁孔の立体構造を決定していることを明らかにしました。

植物の細胞を覆う細胞壁は、細胞の形の維持に加え、水分・養分などの輸送も担います。壁孔を含め、植物の細胞壁の立体構造を決定する仕組みはほとんど明らかになっていません。本研究は植物の細胞壁の立体構造が、微小管の物理的な性質を制御することにより決定されることを世界ではじめて明らかにしました。これは植物の細胞壁の形成機構を理解する上で数少ない重要な知見です。また、本研究から得られた知見を利用して植物の細胞壁構造を改変することにより、将来的な植物細胞の形態や機能、さらには植物個体の性質や形態を人為的に制御する技術、利用しやすい木質バイオマスの生産技術にも繋がる可能性が考えられます。

本研究は、文部科学省の科学研究費補助金『19H05670』、『19H05677』、日本学術振興会の科学研究費補助金『21H02514』、『20K21435』、『23K18126』、『JP20K15141』、『JP21H05886』、『21K15128』、『22H02590』、公益財団法人三菱財団自然科学研究助成の支援のもとで行われたものです。

本研究成果は2023年11月13日午後7時(日本時間)付イギリス科学誌「Nature Communications」誌でオンライン公開されました。

遺伝研の貢献
物理細胞生物学研究室が持つ高解像の蛍光イメージング技術を使って微小管の曲げ剛性や束化能を細胞外で解析できる系を構築し、MAP70の分子特性を決定しました。

図1: 壁孔周辺の微小管とMAP70-5の局在

図2: MAP70-5の壁孔形成の制御と微小管に対する効果


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