2023/03/13

メダカにおける隠蔽的な性連鎖遺伝子座の同定

A cryptic sex-linked locus revealed by the elimination of a master sex-determining locus in medaka fish.

Kitano, J., Ansai, S., Fujimoto, S., Kakioka, R., Sato, M., Mandagi, I. F., Sumarto, B. K. A., and Yamahira, K.

The American Naturalist 2023 March 12 DOI:10.1086/724840

魚類などの分類群では、性染色体が転換するターンオーバー現象が広く知られています。このような性染色体のターンオーバーは、新しい性決定遺伝子がまず出現し、一過的に複数の性染色体が多型で存在する状態を経て、新しい性決定遺伝子が固定化されることで完成すると考えられています。しかし、複数の性染色体が多型で存在する状態が、野外集団においてどの程度普遍的なのかは不明です。

本研究では、メダカ北日本集団(キタノメダカ)を用いてこの謎に迫りました。メダカは、メスがXX、オスがXYの性染色体を持ちます。Y染色体上のDMY遺伝子がオス化を誘導します。しかし、胚発生の段階で高温刺激を加えると、XX個体が高頻度でオスに性転換します。この特性を利用して、生態遺伝学研究室の北野教授らは、琉球大学の山平研究室との共同研究として、オス性決定遺伝子DMYを持たないメダカ系統を作出しました。4世代にわたって実験室で維持したあと、ゲノム解析をすると、元の集団では常染色体であったある染色体上に、性染色体に特徴的な性質を持つゲノム領域を発見しました。

本成果は、性決定機能をもつ遺伝子座がなくなると、隠れていた性決定遺伝子座が出現し、それが性染色体ターンオーバーの元になる可能性があることを示唆します。すなわち、単純なXY性染色体を持つように見える野外集団にも、性決定機能を持つ別の染色体領域が存在する可能性を示唆しています。主働性決定遺伝子座を実験的に除去することは、性染色体の原型となりうる遺伝子座を見つけるための有力な方法となり得ると考えられます。

本成果は、アメリカン・ナチュラリスト協会発行のThe American Naturalistに掲載されました。科研費やJST CRESTの支援のもと実施されました。

Figure1
図:第18染色体上に、雌雄でアリル頻度が異なり(上)、オスでヘテロ接合になっている座位が多数見つかった(下)。従来の性染色体は、第1染色体である。

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