生きた細胞でのクロマチンのふるまい:1分子ヌクレオソームイメージングから学ぶ

Chromatin behavior in living cells: lessons from single-nucleosome imaging and tracking

*Satoru Ide, Sachiko Tamura, *Kazuhiro Maeshima *責任著者

BioEssays 2022 June 03 DOI:10.1002/bies.202200043

真核細胞において、長いDNAは糸巻きとして働くヒストンに巻かれ、ヌクレオソーム(直径約11nm)を形成します。このヌクレオソームに様々なタンパク質、RNAが結合したものをクロマチンと呼びます。細胞内でクロマチンはどのように収納されているのでしょうか?近年多くの証拠によって、クロマチンは従来考えられていたような30-nm線維を含む規則正しい階層構造ではなく、不規則かつ流動的な塊として存在することがわかってきました。クロマチンはゲノムDNA上で起きる化学反応 (転写やDNA複製など)の場として機能することから、クロマチンの折りたたみやその動きの観察はゲノムの機能を理解する上で重要です。

この総説論文では、生きた細胞におけるクロマチンのふるまいを観察するために非常に有力な手法であるヌクレオソーム1分子イメージングについて議論しました。この技術によってヌクレオソーム分子の動きを直接見ることで、ヌクレオソームが構成する構造やその物性を知るためのさまざまな情報が得られます。このイメージングはヌクレオソームの代わりに別のタンパク質を同様に蛍光標識すれば、核小体のような核内構造体の解析にも有効です。今後の1分子ヌクレオソームイメージングの汎用化が期待されます。

本研究は、日本学術振興会(JSPS) 科研費(21H02535、20H05936、21H02453)、上原記念生命科学財団の支援を受けました。

Figure1

図:1分子ヌクレオソームイメージング。①まばらな分子(ヌクレオソーム)の蛍光標識と②励起光レーザーを斜めに当てること(斜光照明)で、可能な限り焦点面のみを励起し、焦点面以外由来のバックグラウンド蛍光を減少させることによって、生きた細胞で1個1個の分子を観察することができます。われわれが使用しているニコン社製ECLIPSE Ti TIRF蛍光倒立顕微鏡では、レーザー光の入射位置がレンズの中心部の場合、ビームは対物レンズから垂直に出ます(薄緑色の経路)。一方、レーザー光の入射位置をシフトさせると斜めのシート照明が得られます(濃緑色の経路)。


動画1: ニコン社製ECLIPSE Ti TIRF蛍光倒立顕微鏡による斜光照明。入射レーザー光の位置がレンズの中心部(最初のフレーム)からずれるにつれて、より屈折したビームが培地で満たしたガラス皿の中を通っていることがわかる。最後の2フレームは全反射が起こり、ガラス表面のみが照明されている。

動画2: 1分子イメージング法により観察された生きた細胞の核内におけるヌクレオソーム(クロマチンの最小ユニット)の動きの動画。1個1個のドットが1個1個のヌクレオソームを示す。 1コマ50ミリ秒。


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