DNA複製を担保するための新たなメカニズムを発見

MCMBP promotes the assembly of the MCM2–7 hetero-hexamer to ensure robust DNA replication in human cells

Yuichiro Saito, Venny Santosa, Kei-ichiro Ishiguro and Masato T. Kanemaki.

eLife (2022) 11, e77393 DOI:10.7554/eLife.77393

細胞増殖には遺伝情報物質であるDNAの複製が必ず伴います。MCM2–7六量体は、MCM2からMCM7の六つのサブユニットからなるリング状複合体であり、DNA複製において二本鎖DNAを開裂するヘリカーゼとして機能しています。S期において効率よくDNAを複製するためには、細胞内に多量のMCM2–7六量体が存在することが必要であることが知られていますが、MCM2–7六量体がどのように複合体として組み上がるのか、これまで分かっていませんでした。

本論文では、MCM結合タンパク質であるMCMBP(MCM-binding protein)がMCM2–7を構成するサブユニットと結合し、MCM3およびMCM5を六量体に組み込むのに重要な機能を担うことを明らかにしました(図1)。我々が開発した標的タンパク質分解技術であるオーキシンデグロン2(AID2)法によりMCMBPを分解すると、新たに発現したMCM3が六量体に組み込まれず、細胞分裂毎にMCM2–7六量体の量が減少しました。

Figure1

図1:MCMBPはMCM2–7六量体の構成に機能し、MCMBPを分解除去すると新たに合成されたMCM3とMCM5が六量体に取り込まれず不安定化する。


興味深いことに、MCM2–7六量体の量が減少すると、がん抑制遺伝子p53を発現するヒト細胞は、細胞周期をG1期に一時的に停止してゲノム恒常性を維持しました(図2)。一方、p53を欠いた細胞は、六量体が少ない状態でS期に入り不完全なDNA複製をすることで、細胞死を誘発しました。これらの結果、MCMBPを不活化することで、p53に変異を持つがん細胞を特異的に除去できる可能性を示唆しています。

Figure1

図2:MCMBPの分解除去は癌抑制遺伝子p53の有無により異なった影響を与える。p53欠損細胞では、ゲノムが不安定化することで細胞死が誘発される。


本研究は国立遺伝学研究所・鐘巻研究室が中心となり、熊本大学・石黒啓一郎教授らとの共同研究として行われました。


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