2021/10/27

MESP1とMESP2の量が中胚葉形成を決める

相賀研究室・発生工学研究室

Formal proof of the requirement of MESP1 and MESP2 in mesoderm specification and their transcriptional control via specific enhancers in mice

Rieko Ajima, Yuko Sakakibara, Noriko Sakurai-Yamatani, Masafumi Muraoka and Yumiko Saga

Development (2021) 148, dev194613 DOI:10.1242/dev.194613

哺乳類の初期発生過程において、中胚葉形成は非常に重要なステップで、原腸陥入によって外胚葉と内胚葉の間に形成されます(図A)。中胚葉からは心臓・腎臓・四肢・筋肉・骨格などが作られます。Mesp1/2遺伝子は同一染色体上に隣り合ってあり、マウス原腸胚の中胚葉細胞(図B)と体節形成期の新規体節形成境界(図C)に発現するという共通した発現パターンを示し、両遺伝子の欠損は中胚葉形成異常を引き起こします。一方Mesp1 KOマウスが心臓形態異常、Mesp2 KOマウスが体節形成異常と異なる表現型を示すことから、MESP1/2は異なる標的を制御すると考えられていました。

発生工学研究室の安島理恵子助教と相賀裕美子教授が、ゲノム変異マウス開発支援部門の協力のもと行った本研究(図D)では、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いMesp1/2遺伝子変異マウスを作製・解析したところ、中胚葉細胞においてMESP1/2はお互いの発現を相補し、かつ共通した標的遺伝子を制御していることを示しました。さらに、以前作成されたMesp1 KOマウスで見られた心臓形態の異常はMesp1 locusに挿入されたPGK-neoが隣接するMesp2の相補的な発現上昇を阻害したことが原因であったこと、Mesp1/2遺伝子に共通したエンハンサーを欠損させるとMesp1/2遺伝子が共に発現低下し、心臓形態異常を示すことから、MESP1/2両タンパク質を合わせた量が初期中胚葉の分化誘導に重要であることを明らかにしました。

本研究成果は、国際科学紙Developmentに10月22日付けのオンライン版で掲載されました。

Figure1
図:(A) 原腸胚における中胚葉形成。 (B,C) 原腸胚と体節形成期のMesp1/2の発現パターン。 (D) 各遺伝子変異マウスにおけるMesp1/2の発現と表現型。○は共通エンハンサーを示す。

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