2021/06/28

マリモ巨大化の謎に迫る
―阿寒湖のマリモを育む微生物たちー

Internal microbial zonation during the massive growth of marimo, a lake ball of Aegagropila linnaei in Lake Akan
R. Nakai, I. Wakana, H. Niki
iScience 2021 June 12 DOI:10.1016/j.isci.2021.102720

プレスリリース資料

球状の集合体を作る緑藻の一種、マリモ(毬藻)は北半球に広く分布するものの、30センチを超える巨大なマリモは世界でも阿寒湖でしか見られません。なぜ阿寒湖のマリモは巨大化できるのでしょうか?

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の中井亮佑研究員(研究当時。現所属は産業技術総合研究所 研究員)、仁木宏典教授、釧路国際ウェットランドセンター 阿寒湖沼群・マリモ研究室の若菜勇博士らは、大きさの異なるマリモの内部に生息しているバクテリアの種類を比較研究することで、その謎に迫りました。

マリモは、直径が10センチを超えると中心部に空洞が形成されるため、大きくなるほど壊れやすくなってしまいます。ところが大きく成長したマリモでは、球体を形づくっているマリモ藻体に共生するバクテリアの層状構造が作られ、それらのバクテリア群集が藻体を相互に密着させて構造を強化していることを見出しました。さらに、バクテリアは藻体の成長に必要な栄養を供給していると考えられます。成長してさらに巨大化したマリモは、やがて波によって壊されてしまいますが、生じた破片は内部のバクテリアを受け継ぎ、巨大なマリモへと再生してゆくのです。

今年は、阿寒湖のマリモが1921年に天然記念物に指定されてから100年を迎えます。本研究成果は今後のマリモの保護や生息域の回復に役立つ手掛かりとなることが期待できます。

本研究は情報・システム研究機構の新領域融合プロジェクト「地球生命システム学」 の支援を受けておこなわれました。また一部は、科学研究費補助金(JP15H05620)の支援を受けておこなわれました。

本研究成果は、米国科学雑誌「iScience」に2021年6月13日(日本時間)に掲載されました。

Figure1

図: マリモの切断面
湖底の砂礫を含み茶色味を帯びたバクテリア層が認められる。左の表はそれぞれのバクテリア層から見出されたバクテリア分類群。色の濃淡でバクテリアの量を示し、赤くなるほど増え、青くなるほど減っている。


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