クロマチンリモデリングによるゲノム安定化の仕組み

角谷研究室・エピゲノム研究室

The chromatin remodeler DDM1 prevents transposon mobility through deposition of histone variant H2A.W

Akihisa Osakabe, Bhagyshree Jamge, Elin Axelsson, Sean A. Montgomery, Svetlana Akimcheva, Annika Luisa Kuehn, Rahul Pisupati, Zdravko J. Lorković, Ramesh Yelagandula, Tetsuji Kakutani, and Frédéric Berger

Nature Cell Biology 23, 391-400 (2021) DOI:10.1038/s41556-021-00658-1

動物や植物のゲノムは、可動性で増殖する性質の配列(トランスポゾンと呼ばれる)を多量に含み、これがゲノムの不安定化や癌などの疾病の原因になります。このように潜在的に有害なトランスポゾンを鎮静化する機構として、DNAやヒストンのメチル化による抑制が知られています。これらの抑制目印を維持するために、クロマチンリモデリング因子Decrease in DNA methylation 1 (DDM1)が必要であることが、シロイヌナズナを用いた遺伝学的解析によって20年以上前に明らかにされました。DDM1機能を喪失した変異体植物では、さまざまなトランスポゾンの脱抑制や可動化、および隣接遺伝子の発現撹乱が観察されます。一般にクロマチンリモデリング因子は、ATP依存的に、ヌクレオソームの交換や移動などを行います。しかしながら、DDM1がどのようにしてトランスポゾンを鎮静化しているのか、その分子機構はながらく不明でした。また、このクロマチンリモデリングの直接の標的も不明でした。

本研究では、トランスポゾン上に特異的に蓄積することが知られているヒストンの亜種(バリアント)に着目し、DDM1の機能喪失植物を用いてゲノムワイドの解析を行いました。その結果、DDM1の機能喪失によって、凝集したクロマチンに分布するヒストンバリアントH2A.Wがトランスポゾンから失われることを見出しました。さらに、DDM1がこのH2A.Wと直接結合すること、その結合領域がDDM1によるトランスポゾンの鎮静化に重要であることがわかりました。DDM1やこのH2Aバリアントと似た構造のタンパク質が哺乳類でも似た働きを持つことがわかっており、本研究によって明らかになった新規経路は動植物に共通していることが示唆されます。

Figure1

図:DDM1によるトランスポゾンの抑制機構
野生型植物(左)においてDDM1タンパク質はトランスポゾンを含むゲノム領域へH2A.W(緑)を運び込み、トランスポゾンの発現が抑制されている。一方、ddm1変異体(右)ではH2A.Wがヘテロクロマチン領域から失われ、トランスポゾンが脱抑制される。


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