2021/04/02

DSCR4 (ダウン症重要領域4) 遺伝子のもつ役割の可能性

Possible roles for the hominoid-specific DSCR4 gene in human cells

Morteza M. Saber, Marziyeh Karimiavargani, Takanori Uzawa, Nilmini Hettiarachchi, Michiaki Hamada,
Yoshihiro Ito and Naruya Saitou

Genes and Genetic Systems 2021 March 24 DOI:10.1266/ggs.20-00012

人間のダウン症は、21番染色体のトリソミーによって生じます。DSCR4 (ダウン症重要領域4)は、ヒトの21番染色体と類人猿の相同染色体だけに存在する、あらたに誕生したタンパク質コード遺伝子です。医学的に重要なゲノム領域に位置しており、その機能を示唆する多くの証拠があるにもかかわらず、人間の細胞におけるDSCR4遺伝子の役割は不明です。われわれはこの遺伝子の生物学的重要性と細胞内での役割を推定するためにバイオインフォマティクス解析を用いました。その結果、DSCR4遺伝子は、細胞移動、凝固、免疫系に関係する相互に結びついた生物学的パスウェイの制御におそらく関与していることがわかりました。またこれらの予想された生物学的機能は、ヒト胚における顔面形態をかたちづくる神経堤細胞 (NCC)と移動性の免疫系白血球でのDSCR4の組織特異的な発現と一致していることも示しました。免疫系とNCCはどちらもDSCR4の発現異常を生じるダウン症個体が影響を受けることが知られており、このことはさらにわれわれの発見を支持します。人間の細胞におけるDSCR4の重要な役割について、証拠を指摘したことにより、われわれの発見はダウン症の病因におけるDSCR4遺伝子の役割を確認するのに必要となる、さらなる実験研究の基礎付けとなりました。

Figure1

図:DSCR4遺伝子の過剰発現によって発現に差の生じた遺伝子の制御ネットワーク解析
左:DSCR4の過剰発現によって発現が抑制された遺伝子群は、細胞の移動、運動、改造過程の制御に関与する6種類の相互に結びついたパスウェイの増強を明らかにしました。右:発現が増加した遺伝子群は、頂端と基層部の細胞極性の維持における血液凝固と止血の制御に関与した3種類の相互に結びついたパスウェイを増強することを示しています。


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