ハゼの分類と形態分化の遺伝基盤にゲノムで迫る

Genetic basis for variation in the number of cephalic pores in a hybrid zone between closely related species of goby, Gymnogobius breunigii and Gymnogobius castaneu 

Kakioka, R., Kume, M., Ishikawa, A., Ansai, S., Hosoki, T. K., Yamasaki, Y. Y., Nagano, A. J., Toyoda, A., and Kitano, J.

Biological Journal of the Linnean Society 2021 March 25 DOI:10.1093/biolinnean/blab033

ハゼ類は、魚類の中でもとりわけ表現型に多様性のある分類群であり、毎年新種が報告されるなど、その分類体系はいまだ完成されていません。現在形態に基づくハゼ類の分類と種同定法では頭部感覚孔の数と位置が鍵とされており、これは上皇陛下らによって整理・体系化されました。頭部感覚孔は、水流などを感知する側線器官の一種であり、生息域の物理環境に適応して進化すると考えられています。しかし、頭部感覚孔とゲノムDNAに基づく遺伝的分化の関係性や、雑種における頭部感覚孔の表現型などはわかっていませんでした。

そこで、生態遺伝学研究室の柿岡諒研究員(遺伝研博士研究員/現・琉球大研究員)と北野潤教授を中心とするグループは、ジュズカケハゼとビリンゴを対象にこの課題に取り組みました。形態に基づく分類によると、ジュズカケハゼは頭部感覚孔を欠き、ビリンゴは左右合わせて6個の頭部感覚孔を持ちます。北海道東部の別寒辺牛川に生息する両種の表現型とゲノムを解析したところ、これら形態に基づいて分類される2種は遺伝的にも分化しているものの、その交雑帯が発見できたことから、2種は交雑していることを見出しました。雑種では、頭部感覚孔の数が2種の中間を示すものから、頭部感覚孔に奇形(左右非対称など)を示す個体が観察されました。また、交雑帯を用いたゲノムワイド関連解析(GWAS)によって、頭部感覚孔の数と相関する遺伝領域も同定できました。

本研究は、未知な部分が多いハゼ類の分類学に大きく貢献するのみならず、頭部感覚孔の遺伝基盤に貴重な知見を与えるものであり、その成果は英国リンネ協会生物学誌に掲載されました。なお、リンネ協会生物学誌の前身のリンネ協会紀要は、世界最古の生物学雑誌(1791年刊行)として知られています。

本研究は、科研費(17KT0028, 19H01003)、先進ゲノム支援(16H06279)の支援を受けました。

Figure1

図:A. ジュズカケハゼでは体表にむき出しになった感覚器官が並んでいるのが光って見える一方で頭部感覚孔は持たないのに対し、ビリンゴは頭部感覚孔を3対持ち(Aの点線で囲った円)、感覚器官は感覚孔から体内に伸びるトンネル状の頭部感覚管の中にあるため見えない。
B. 雑種は大きく開いた溝のような頭部感覚孔を持っていたり、感覚孔が左右非対称だったりするほか、感覚器官が感覚孔からのぞいて見えたり、感覚孔が変形している(ピンクの点線で囲った楕円)。


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