2019/02/15

大腸菌in vivo DNAクローニング(iVEC)のメカニズム

Exonuclease III (XthA) Enforces In Vivo DNA Cloning of Escherichia coli To Create Cohesive Ends

Shingo Nozaki, Hironori Niki

Journal of Bacteriology 2018 Dec 10 PMID:30530516 DOI:10.1128/JB.00660-18

DNAクローニング技術では制限酵素処理をしたDNA断片同士をDNAリガーゼにより結合させる方法がかつては主流でした。しかし、最近では末端部分に15 – 40 bp程度の相同配列を持たせたDNA同士を試験管内で結合させる方法が取って代わるようになりました。いずれの方法も精製した酵素を必要とします。意外なことにこのような精製酵素による処理をせずとも、相同配列が付加されたDNA断片を大腸菌に導入するだけで目的の組換え体を得ることができます。大腸菌の組換え能力を利用したDNAクローニング(iVEC、in vivo E. coli cloning)法については、これまでも様々手順や条件が検討されてきましたが、そのメカニズムに関しては分かっていませんでした。

今回私たちはiVEC活性が、3’→5’エキソヌクレアーゼであるXthAに依存することを明らかにしました。細胞内に入った二本鎖DNAはXthAにより3’末端のみが削られて一本鎖の5’突出末端を生じます。この相補的な一本鎖の5’突出末端同士が二本鎖を形成し、DNA断片同士がつながるのです。この作用原理を理解した上で、私たちはiVEC活性を高めた大腸菌株を新たに作製しました。この株を使うと最大7つのDNA断片を同時にクローニングできます。さらにコンピテント大腸菌の作製からDNAの導入までの実験操作をマイクロテストチューブ一本で行える形質転換法も開発しました。この新型形質転換方法と改良版iVEC株を組み合わせることで、DNAクローニングや遺伝子変異導入法に要する時間やコストを大幅に削減することできます。改良版iVEC株はナショナルバイオリソース大腸菌から公開されており、オンラインで入手可能となっています。

本論文はJournal of Bacteriology誌でSpotligt論文、またF1000primeの2つ星に選出されました。

Figure1

図:
(A) 大腸菌におけるin vivo クローニングのメカニズムのモデル
(B) “One-tube”形質転換。一本のチューブでコンピテントセルの作製から大腸菌へのDNAの導入までが可能。


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