2019/01/23

フェロモンに多様性が生まれるしくみを発見 〜「厳密」と「柔軟」のあいだでフェロモンが愛を囁く〜

Press Release

Asymmetric diversification of mating pheromones in fission yeast

Taisuke Seike, Chikashi Shimoda, Hironori Niki

PLoS Biology published 22 Jan 2019 DOI:10.1371/journal.pbio.3000101

プレスリリース資料

地球上の多くの生物は、異性に存在を知らせるのに「性フェロモン」を使います。フェロモンの反応は通常、「同種」の異性に対して起こるため、種の維持に貢献しています。しかし、フェロモン分子の構造が変化すると、これら変化した集団は元々の種と交配ができなくなるため、結果として集団から隔離されます。こうして、隔離された集団は独立して、別の種として確立することにつながると考えられます。

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の清家泰介 日本学術振興会特別研究員(PD) (現 理化学研究所 基礎科学特別研究員)と仁木宏典 教授、および大阪市立大学の下田親 特任教授らの研究チームは、世界中に棲息する野生の分裂酵母(図1)を対象に、フェロモンとその受容体の遺伝子を解析しました。その結果、分裂酵母は、雌雄の片方のフェロモンの構造が柔軟に変化しうることを明らかにしました(図2)。この成果は、フェロモンの多様性が生まれる仕組みや進化の原動力の理解につながることが期待されます。

Figure1

図1:分裂酵母の交配
分裂酵母には二つの性 (Minus型とPlus型)が存在する。
M型とP型の細胞が発するそれぞれのフェロモンに反応して、相手の方に伸び、やがて「*」のところで接触し、融合(交配)する。

Figure1

図2:酵母の「厳密」かつ「柔軟」なフェロモン認識システム
M型フェロモンの認識は「厳密」であるが、それに比べてP型フェロモンの認識は「柔軟」であることが示唆された。この「厳密と柔軟」なフェロモン認識システムは、酵母が種を維持しつつ、多様性を生み出すのに貢献していると考えられる。


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